2016年05月06日

最近の人民元と今後の展開(2016年5月号)

経済研究部 上席研究員   三尾 幸吉郎

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  • 4月の人民元相場(対米国ドル)は基準値・市場実勢ともにほぼ横ばい推移となった。また、日本円が米国ドルに対して大幅上昇したため、その影響で人民元は日本円に対して5%超の大幅下落となった。
     
  • 人民元と他通貨が変化方向の面で同調する傾向は4月も続いた。中国人民銀行は、バスケット構成通貨に対する安定を重視しており、米国ドルに次ぐシェアを持つ欧州ユーロの対米国ドルレートを参考にした調整を継続、2月までとは値動きに明らかな相違が見られる。
     
  • 5月の人民元(市場実勢)は1米国ドル=6.4~6.6元のレンジで横ばいを予想している。

[ 4月の動き ]

4月の人民元相場(対米国ドル)は基準値・市場実勢ともにほぼ横ばい推移となった。市場実勢(スポット・オファー、中国外貨取引センター)は、当月高値が1米国ドル=6.4610元(4/11)、当月安値が同6.5050元(4/27)で、4月末は前月末比0.3%元安・ドル高となる同6.4790元で取引を終えた。一方、基準値は市場実勢とほぼ連動して推移、当月高値が同6.4579元(4/20)、当月安値が同6.5120元(4/25)で、4月末は前月末とほぼ同水準で終えた(図表-1)。なお、日本円に対しては人民元が大幅に下落、4月末は前月末比5.2%元安・円高の100日本円=6.0389元で取引を終えた(図表-2)。
前回レポートでは「4月の市場実勢は1米国ドル=6.4元台で戻りを試す」と予想、実際に数次に渡りトライしたものの3月高値(同6.4575元)を突破することはできず取引を終えた。また、取引レンジは「同6.4~6.6元」と予想したが、その範囲内のやや元高水準での値動きとなった。
(図表-1)最近の人民元レート(対米国ドル)/(図表-2)最近の人民元レート(対日本円)
一方、世界通貨の動きを見ると、米国で利上げが遠退いたことを受けたドル高修正の動きが前月に続き主流となった。日本円が米国ドルに対して前月末比5.0%上昇したほか、ロシア(ルーブル)が同3.4%上昇、ブラジル(レアル)が同2.7%上昇するなど堅調な通貨が多かった。こうした通貨環境下で、人民元は同0.3%下落、日本円などに対する相対的な下落幅が大きくなった(図表-3)。
また、人民元と他通貨が変化方向の面で同調する傾向は4月も続いた。中国人民銀行は、バスケット構成通貨に対する安定を重視しており、構成通貨の中で米国ドルに次ぐシェアを持つ欧州ユーロの対米国ドルレートを参考にした為替レート調整を継続している。米国ドルに対する人民元レートは、図表-4に示したように変動性(ボラティリティ)こそ欧州ユーロより小さいものの、変化の方向性は欧州ユーロとほぼ一致、2月までとそれ以降では値動きに明らかな相違が見られる。
(図表-3)4月の主要新興国通貨の変化率(対米国ドル、前月末比、WM/Reuters)/(図表-4)人民元と他通貨(対米国ドル)

[ 今後の展開 ]

(図表-5)製造業と非製造業のPMI さて、5月の人民元(市場実勢)は1米国ドル=6.4~6.6元のレンジで横ばいを予想している。
まず、中国で5/1に発表された製造業PMIは50.1%と2ヵ月連続で拡張収縮の境界となる50%を上回り、非製造業PMI(商務活動指数)も高水準を維持したことから、景気下振れリスクは後退した(図表-5)。人民元をショートしていた投機筋(ヘッジファンドなど)がポジションを整理する動きに出れば思わぬ急伸もありうるだろう。但し、中国はまだ構造改革の渦中にあり、改善が一時的なものとなる可能性が高いことから、同6.3元台をトライするのは難しいと見ている。
一方、米国では利上げ時期に対する見方が割れており、景気指標の結果次第では早期利上げの可能性が高まるかもしれない。6月利上げとの見方に市場が傾けば、投機筋が再び人民元をショートする可能性が高まるが、中国政府は下落を阻止する姿勢を鮮明にしており、外貨準備も十分なことから、同6.6元台に下落する可能性は低いと見ている。

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経済研究部   上席研究員

三尾 幸吉郎 (みお こうきちろう)

研究・専門分野
中国経済

(2016年05月06日「経済・金融フラッシュ」)

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