2014年12月05日

日本企業の今後の収益性を占う

金融研究部 研究員   前山 裕亮

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日本企業の収益性が大幅に改善
   アベノミクスや日銀の異次元緩和による円安効果もあって、2013年度は輸出企業を中心に多くの日本企業の業績が回復しました。法人企業統計(財務省)によると、企業の収益力を表す指標である自己資本経常利益率が、2012年度8.4%から2013年度10.8%と2%以上上昇し、2008年のリーマンショック以降で最も高くなったことからもそのことがよく分かります。

より詳しく日本企業の収益性の変化を見るため、「(1)自己資本利益率」を「(2)売上高利益率」、「(3)総資本回転率」、「(4)財務レバレッジ」の3つの指標に分けて見てみましょう<グラフ>。

3つの指標による分解はデュポンシステムと呼ばれているものです。下式のように自己資本利益率は3指標の掛け算で表すことができます。右辺の3指標どれかが上昇(低下)すると、左辺の自己資本利益率も上昇(低下)します。




利益マージンの拡大のみの改善だった
   3指標の変動を見ると、「(2)売上高利益率」が2012年度の4.9%から2013年度6.2%と1%以上改善し、それに伴う収益性の向上であったことが分かります<左グラフ>。円安が進行したことなどによって、輸出企業を中心に利益マージン拡大といった収益環境の好転が、業績回復の要因の一つといえるでしょう。

その一方で、「(3)総資本回転率」については2009年度以降大きく変化せず、横ばいでした<右グラフ>。分母の総資本は年度ごとに大きく変動しにくいことを踏まえると、分子の売上高は業績回復が顕著であった2013年度でも、それほど増加していなかったことを意味しています。輸出に目を向けると、2013年度は2012年度比べて増加したものの、前年比11%程度の増加にとどまっており、円安による売上高の押し上げは限定的であったといえるでしょう。

また、「(4)財務レバレッジ」についても大きく変動しておらず、むしろやや低下傾向にありました<右グラフ>。財務レバレッジは高いほど事業に投下している総資本に占める自己資本の割合が低くなるため、自己資本の効率性が高まります。その一方で、総資本に占める負債の割合が高くなるため、信用リスクも高くなってしまいます。一概に高ければ高いほどよいという指標ではありませんが、2013年度でもリーマンショック直後の2009、2010年度と同じ低水準にあったということは、統計上では企業のリスク・テイクがあまり進んでいなかったといえるでしょう。


回転率の向上、財務レバレッジの活用も必要
   株式市場では今年度(2014年度)も更なる収益性の改善や、それに伴う株価の上昇が期待されています。一部ではサブプライムショック前の2007年前半の株価水準まで回復する声まで出てきています。そのような期待のより所の一つとして、円安進行による利益マージン拡大による「(2)売上高利益率」の更なる上昇があげられます。しかし、「(2)売上高利益率」の短期的な改善には限界があり、力強さを欠いた一過性の業績回復で終わってしまう可能性があります。ショック前の水準まで企業の収益性や株価が回復し定着するためには、「(2)売上高利益率」と合わせて、ショック前と比べて低水準にある「(3)総資本回転率」や「(4)財務レバレッジ」の上昇を伴った稼ぐ力の底上げが必要なのではないでしょうか。

今後の日本企業の業績回復とともに、売上高利益率、回転率、財務レバレッジの3つ指標の変化に注目しましょう。

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金融研究部   研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
運用手法開発(国内株式)

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