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■introduction
わが国の企業会計制度は、今まさに変革プロセスにある。昨今の損失飛ばし、粉飾決算といった一連の企業不祥事などによって、「財務諸表は本当に企業の経営実態を反映しているのか」という声に代表されるように、投資家の不信感は著しく高まっている。そうした不信感を払拭し、さらにIAS(国際会計基準)と調和した企業会計制度
を再構築すべく、連結財務諸表制度の改正、連結キャッシュ・フロー計算書の導入、金融商品及び退職給付会計における時価主義の導入、税効果会計の強制適用など、一連の変革が急ピッチで進められている(図表-1)。
わが国の企業会計制度の背後にある、商法、証券取引法、法人税法の主な目的は、それぞれ債権者保護(配当可能利益の計算)、投資家保護(投資判断に有用な情報を提供)、税の徴収(課税所得の計算)である。これらは密接に相互関連していることから、「トライアングル体制」と表現されることもあった。
商法にもとづき設立される企業の財務諸表は、商法の規定に準拠する必要がある。また、法人税申告のための財務諸表は、確定決算主義(商法の規定による株主総会の承認が要件)により、商法上の財務諸表が基礎となる。一方、証券取引法上の財務諸表は、株主総会で承認された商法上の財務諸表にもとづいて作成されている。つまり、わが国の企業会計制度は、これまで商法を中心に機能していた(ただし、実務上は、税務の会計処理に準じるケースが多い)と言える。
ところが、わが国経済が成熟化し、金融システムが間接金融(銀行借入)から直接金融(株式・社債市場からの調達)に徐々にシフトするにしたがって、投資家保護の必要性が表舞台に踊り出た。
また、企業がグローバルに事業活動を展開し、国際資本市場において株式・社債で資金調達する機会が増加する中、諸外国の投資家は、財務諸表の比較可能性を一層望むようになった。こうした状況の下、IASが脚光を浴びるようになったのである。IASは、「企業のリスク資本の提供者であって、最も情報要求の高い投資家が経済的意思決定を行う上で、企業の財政状態、経営成績及び財政状態の変動に関する有用な情報を提供すること」を目的とする、投資家志向の会計基準である。
したがって、わが国金融システムの現状、及びIASとの調和を視野に入れた企業会計制度の変革は、「投資判断に有用な情報を提供する機能の強化」が主眼であることを、まず理解しておく必要があるだろう。
(1999年06月25日「基礎研マンスリー」)
佐々木 進
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