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欧州保険会社が2024年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SCRの算出(内部モデルの使用状況と分散効果の状況等)-
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GeneraliのSCRの構成は、以下の図表の通りとなっている。
Generaliは分散効果等反映後の全体SCR 23,396百万ユーロの内訳を開示しているが、それによると、内部モデルによるものが16,066百万ユーロ(構成比は68.4%、以下同様)、標準式によるものが6,066百万ユーロ(25.9%)、その他が1,324百万ユーロ(5.7%)(2023年の構成比は、それぞれ68.8%、25.1%、6.1%、2022年の構成比は、それぞれ67.3%、26.0%、6.7%)となっている。
内部モデルは、イタリア、ドイツ、フランス、オーストリア、チェコ、スイス、スペインの主要保険会社に対して適用されている。スイスとスペインの会社は、グループSCRの算出のためだけに内部モデルの使用が承認され、ローカルではそれぞれSST(Swiss Solvency Test)及び標準式による資本要件に従っている。
他の残りの保険会社は標準式でグループSCRに貢献している。特に2019年末からGenerali Chinaは保有割合を考慮して、グループSCRに比例アプローチで統合されている。他の金融機関(銀行、年金基金等)は、ローカルのセクター資本要件でグループSCRに反映されている。
内部モデルは、グループがその事業において重要だと認識した全ての定量化可能なリスクを含むリスクマップに基づいて構造化されており、単一リスクレベルとさらに高い集約レベルでSCRの算出を可能にしている。内部モデルの範囲は、グループが最も関連している会社に関しての、金融リスク、信用リスク、生命保険引受リスク及び損害保険引受リスクに加えて、2020年末からはオペレーショナルリスクを含んでいる。
なお、各リスク・モジュール内の分散効果控除前のSCRのうちの76.5%が内部モデルを使用して算出されている。
また、最終的な集計におけるグループ全体の分散効果は、5,639,401千ユーロで、これによるSCR(分散効果控除前)の27,709,939千ユーロに対する控除率は20.4%となっている。
「E.4.3.内部モデルで使用される手法 分散効果」
相関行列と関連する周辺分布の前提によって生成される潜在的な分散効果については、次のようにして発生する。
・異なる市場指数(例えば、株式市場はセクター別と地域別の指数の間である程度の分散化を保持している)
・異なるセグメント(分散化は、中長期的なキャッシュフロー及び金融市場の実現と保険契約者の行動との間の関連する相互作用を伴う生命保険契約ならびに短期的なエクスポージャー及び一般的には金利の動きからは反対の効果を有する損害保険契約との共同存在から発生する)
・異なる地域(伝播や相互作用の影響が限定された、異なる地域で販売されている損害保険契約及び生命保険契約)
・異なるビジネスモデル(例えば、保険契約者との利益分配の水準及びポートフォリオの関連する経営行動)
・異なるリスク(例:異なるリスクの発生確率は同じではなく、その結果、共同イベントは100%未満の相関を持つ。例として、自然大災害イベントは金融市場イベントから独立しているが、その逆は当てはまらない)。
これら全ての要素は、関連する分散効果を生み出す一貫した方法でグループSCRに貢献している。
最後に、グループ部分内部モデルは、内部モデルの範囲と標準式の範囲との間の相互作用を評価するために、「2つの世界(two world)」のアプローチを利用する。規則で定義されているように、このアプローチでは、「2つの世界」の間で保守性を重視した分散化のメリットを享受できない(例えば、金利SCRが、標準式と比較した内部モデルに続く異なる経済シナリオにリンクしている場合)。
定量的な結果に関しては、セクションE.2で提供された情報に基づいて、地理、セグメント、ビジネスモデル、及び詳細なリスク・モジュールの間の分散が既にSCRリスクカテゴリに組み込まれていることを考慮して、主要なリスクカテゴリ間で生じる分散効果を(上記で示した)図表にまとめている。
一般論として、金融イベントとクレジットイベントは互いに強く相関しており、限られた分散化を提供する(すなわち、金融とクレジットのストレスイベントが同時に発生する可能性が高い)ことは明らかである。生命保険及び健康保険の引受リスクは、主にバイオメトリックイベントによって引き起こされることを考えると、他のリスクカテゴリとの相関は弱い。 損害保険引受リスクは、金融イベント(イールドカーブの変動、インフレ、取引相手の信用力等)と大きく相関しており、これが示されている分散効果を説明している。最後に、オペレーショナルリスクは、他のどのリスク分類とも十分に分散化している。
AvivaのSCRの構成は、以下の図表の通りとなっている。
Avivaは、グループ、UKLAP、AIIL、及びAILのSCRの算出に部分内部モデルを使用することを規制当局から承認を得ている。次ページの図表が、これらの部分内部モデルの適用範囲に含まれる事業部門と単体法人、及びそれらに内部モデルや標準式が使用されているかどうかを示している。このように、Avivaの内部モデルは、IWR(保険・資産・退職)、英国及びアイルランド損害保険、カナダ損害保険、AII(Aviva International Insurance)等のビジネスユニットで使用されている。一方で、これらのビジネスユニットの一部等においては標準式が使用されている。
さらに、Avivaは、部分内部モデルに含まれる標準式事業体に係る通貨リスク(為替換算リスクと通貨ミスマッチリスクの両方を含む)を内部モデルに組み込んでいる。
Avivaは、グループ全体で部分内部モデルを導入し、内部モデルと標準式の計算結果を統合する手法を選択しているが、この手法では、内部モデルブロック全体と各標準式リスク・モジュール/サブモジュールとの間の相関の上限と下限を指定する必要があり、これらの上限と下限の間の相関を用いて、基本SCRを最大化する相関行列を構築している。
なお、分散効果控除前のSCRのうちの81.8%が内部モデルを使用して算出されている。
また、(リスク・モジュール間の)分散効果は6,573百万ポンドで、これによる控除率が42.1%となっている。さらに、Avivaは各リスク・モジュール内の分散効果についても開示している。これによると、各リスク・モジュール内の分散効果は、これらの分散効果反映前の39.7%となっている。
E.2.1.ソルベンシー資本要件(SCR)(未監査)
(ii)分散効果
グループ及び単体法人は、リスク別及び事業部門別(グループのみ)の分散化のメリットの分析を実施し、構造、リスクの組み合わせ、及び基礎となるリスクの調整と相関関係を考慮して、適用される分散化のレベルが妥当であることを保証している。
2024年12月31日時点のグループの分散化のメリットは65億7,300万ポンドで、これにはリスクコンポーネント間の分散化とPIMの分散化が含まれるが、各リスクコンポーネント内の分散化は含まれない。単体法人の分散化のメリットは、UKLAPで30億500万ポンド、AILで7億7,800万ポンド、AIILで17億600万ポンドに相当している。
リスク間の分散効果は、主に相対的なリスクの規模とそれらの間の相関関係によってもたらされる。例えば、2つのリスクが同じ規模である場合、2つのリスクはより分散化し、相関性が高いほど、分散するリスクは少なくなる。分散化はまたリスク分布の形状によっても影響を受け、極端なイベントが発生する可能性が高いリスクは分散化の傾向が高い。
Avivaの事業間分散は、各市場のSCRの合計がグループのSCRより高いことから生じるSCR分散となる。株主の視点からは、グループの分散利益は、2024年12月31日時点で25億ポンド(2023年:22億ポンド)である。
当グループ内の会社間で発生する分散効果の規模は、主にそれらの会社のリスクプロファイルによって左右される。リングフェンス型ファンド及び非保険会社は分散効果に貢献していない。つまり、IWR有配当ファンドからは分散効果は発生しない。内部モデル会社の中では、IWR事業体が当グループの大部分を占めているため、当グループのリスクプロファイルに強く影響を与える。損害保険事業は、他のグループとは異なるリスクプロファイルを持っているため、良好な分散効果を有している。
分散化のメリットの最後の源泉は、PIMの分散化である。これは、内部モデル会社と標準式会社を別々にモデル化し、相関行列を使用してそれらを結合する。PIM 分散化のメリットは、内部モデルブロックと標準式リスク・モジュール間の想定される相関関係から生じる。
(2025年06月13日「保険・年金フォーカス」)
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