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コロナショック後の金融市場動向-リーマンショック後とどう違う?
基礎研REPORT(冊子版)8月号[vol.281]
経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志
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1―コロナショック後の市場動向
まず、日経平均株価の動きを振り返ると、コロナショック発生後は4週間にわたって急落し、一時は16552円とショック直前(23386円)からの下落率が約3割に達した。しかし、その後は上昇に転じ、持ち直しが続いた結果、足元ではショック直前の水準の9割超にまで回復している。
一方、リーマンショックの後は7週目に下落率が4割に達し、その後やや持ち直したものの、再び下落して2番底を付ける展開となった。株価が本格的な持ち直しに転じたのは、ショック発生から26週目にあたる2009年3月のことであった。
従って、コロナショック後の日経平均株価は、リーマンショック後よりも早期に底入れし、以降の回復ペースの速さも鮮明になっている。
なお、世界の中心的な株価であるダウ平均株価もコロナショック後はほぼ同様の展開を辿っている。日経平均株価ほどではないものの、急落後の回復ペースはリーマン後を上回り、V字に近い回復軌道を描いている。
こうした主要国による大規模な財政出動と金融緩和が比較的迅速に行われたことが景気回復期待や市場への資金流入期待を高め、内外株価の持ち直しに繋がったと考えられる。
ちなみに、日本株については、日銀によるETF買入れの影響も無視できない。日銀はコロナショックが発生した今年2月から5月までの4カ月間で3.8兆円ものETFを買入れており、海外投資家による多額の売り(3.4兆円)を吸収した。ETF買入れはリーマンショック後の株価下落時には行われておらず、この差も株価回復ペースの差に繋がっている。
1)長期金利(10年国債利回り)
一方、コロナショック後の本邦長期金利は膠着しており、0.0%前後での推移が続いている。もともとマイナス金利政策が長期化していたことで、その副作用、とりわけ金融機関への悪影響が危惧される状況にあったため、日銀は今回、マイナス金利の深堀りを回避し、金利の低下が抑制された。また、日本政府による大規模な財政出動に伴う国債の増発も金利低下を妨げた。一方、国債の増発を踏まえて日銀が国債買入れを積極化する方針を示したことで、金利の上昇も抑制されている。
リーマンショック後には、日銀の利下げ(0.50%→0.10%)に伴って金利が低下していた。
なお、米長期金利はコロナショック後にFRBの緊急利下げ(実質ゼロ金利政策導入)によって1%程度低下したが、リーマンショック後の低下幅に比べると、限定的に留まっている。今回はショック前の金利水準が低かったうえ、既に1%を大きく割り込んでおり、金利の低下余地が限られているためだ。
2―まとめと今後のポイント
日本や米国などの先進国では新型コロナの新規感染者数が4月から5月にかけて一旦減少したものの、6月以降は経済活動の段階的な再開を追う形で再び増加している。特効薬やワクチンが存在しない以上、感染拡大が続いて医療体制が逼迫する事態に追い込まれれば、再び大規模な移動・外出制限といった経済活動への制限措置を余儀なくされる恐れがある。
新型コロナによる需要押し下げ圧力は極めて大きいため、主要国による大規模な財政出動と金融緩和でも、景気の落ち込みを全て穴埋めすることはできない。実体経済の回復が遅れ、先行して持ち直してきた株価との乖離がさらに鮮明になれば、株価は修正を余儀なくされるだろう。
今後、感染拡大に伴って内外で経済活動への制限が強まったり、そうでなくとも景気の回復が市場の期待通り進まなかったりすれば、内外株価は2番底に向かう可能性が高い。
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(2020年08月06日「基礎研マンスリー」)
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