2018年07月23日

欧州保険会社が2017年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-

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(2)Allianzの例
Allianzは、内部モデルと経営でのリスク管理プロセス等との関係について、以下のように記述しており、「Allianzの配当政策の中心的要素は、内部モデルに基づくソルベンシーIIの資本化と関連している。これにより、我々はソルベンシーIIの枠組みに基づくリスクステアリングや資本化に関する整合的な考え方が可能になる。」として、「内部モデルはAllianzのビジネスステアリングに完全に統合されており、その適用はソルベンシーIIの下でのいわゆる「使用テスト(Use Test)」を満たしている。」と述べている。

B.3.4 リスク管理プロセス
B.3.4.1.リスクベースのステアリング及びリスク管理

(略)

さらに、Allianzの配当政策の中心的要素は、内部モデルに基づくソルベンシーIIの資本化と関連している。これにより、我々はソルベンシーIIの枠組みに基づくリスクステアリングや資本化に関する整合的な考え方が可能になる。

Allianzはそのポートフォリオをシナリオ分析を含む内部モデルに基づいたリスクとリターンの包括的な考え方を使用してステアリングしている。リスクと集中は我々のモデルに基づく限度によって積極的に制限され、全ての事業活動に対するリスク資本リターン(RoRC)の包括的な分析を行っている。RoRCは、商品の全期間にわたる資本コミットメントを反映して、持続可能なベースで収益性のある事業や商品を特定することを可能にし、資本配分決定の重要な指標である。

結果として、内部モデルはAllianzのビジネスステアリングに完全に統合されており、その適用はソルベンシーIIの下でのいわゆる「使用テスト(Use Test)」を満たしている。

リスク・エクスポージャー
以下のセクションで我々のリスク管理プロセスを構成する3つの大きく定義された要素に関するさらなる詳細を提供しているが、これらは我々がさらされている重要な全てのリスクカテゴリを統合的に取り扱っている。

リスク管理プロセスの重要な要素とAllianzグループがさらされているリスクカテゴリとの関係

|内部モデルで使用されたデータ
内部モデルで使用されたデータについては、各社とも説明を行っているが、ここでは、この項目に関しての記述内容が相対的に充実しているGeneraliとAvivaの説明を報告する。

(1)Generaliの例
Generaliは、「PIM(部分内部モデル)で使用されたデータの品質は、『グループデータ品質ポリシー』で定義されたプロセスに基づいて認められる。」として、「この方針の中で、グループは比例性および重要性の原則に基づいて範囲内のデータを定義し、正確性、完全性及び妥当性を検証することを目的とした統制を通じてデータの品質を評価する。」と述べている。

E.4.3.内部モデルで使用された方法
PIMで使用されたデータ
SCR計算の目的で、PIMは、市場の証拠とビジネスドライバーの両方を共同で検討するために、市場のデータ(主に資産の特徴に関係するもの)、会計データ、統計ポートフォリオのデータに依存している。この情報は、グループの自己資本のPIM確率モデルの包括的なデータセットを提供する。

PIMで使用されたデータの品質は、「グループデータ品質ポリシー」で定義されたプロセスに基づいて認められる。この方針の中で、グループは比例性および重要性の原則に基づいて範囲内のデータを定義し、正確性、完全性及び妥当性を検証することを目的とした統制を通じてデータの品質を評価する。

PIMのSCR計算は、グループ内部モデル検証ポリシーで定義された原則に基づいて、独立した検証プロセスの対象となる(セクションBも参照)。

(2)Avivaの例
Avivaは、内部モデルで使用されたデータについて、他社に比べて詳しく説明しており、「会計データ」、「契約データ」、「オペレーショナルリスク・データ」、「金融市場データ」、「内部資産データ」といったデータの種類毎に説明を行っている。

さらに、「AvivaのソルベンシーIIデータガバナンスビジネス基準は、SCR計算に使用する前に、適切性、完全性、正確性及び一貫性の観点から、データの質を評価するために使用される管理環境及び基準を設定している。」と述べている。

E.4.3.2内部モデルで使用されたデータ
グループの内部モデルで使用された重要なデータは次の通り。

・会計データ(IFRS)-資産と負債のソルベンシーII評価は、IFRS測定が非経済的なベースであることを除けば、IFRSと整合的であることが求められる。ソルベンシーII貸借対照表においては、殆どの金融投資や一定の非技術的負債はIFRSベースで計上される。

・契約データ - これには、既契約や過去の契約の請求を含む。

・オペレーショナルリスク・データ- 当社は、内部の損失経験データと、ORIC(オペレーショナルリスク保険コンソーシアム)によって提供される業界のオペレーショナルリスクの損失に関する外部データベースで保有されるデータの組み合わせを使用する。

・金融市場データ - 市場リスクと信用リスクの較正プロセスは、外部金融市場資産データ(FTSEインデックスリターン等)をしばしば使用する。

・内部資産データ - 基礎となるソルベンシーII貸借対照表の資産は、資産の時価評価及び一定の非取引資産のモデル評価に依存している。使用されるデータは会計処理から取られるため、殆どのデータは「会計データ」の要素の下に含まれる。

・その他のデータ - 上記の5つのカテゴリに該当しないデータ。これには、ソルベンシーII制度の下での必要経済資本の計算に使用される全てのデータ(資産データを含む)と、数値を含む技術的準備金、国勢調査又は分類情報を含むが質的情報は含まない、が含まれる可能性がある。

AvivaのソルベンシーIIデータガバナンスビジネス基準は、SCR計算に使用する前に、適切性、完全性、正確性及び一貫性の観点から、データの質を評価するために使用される管理環境及び基準を設定している。

 

4―まとめ

4―まとめ

今回のレポートでは、欧州大手保険グループ各社のSFCR(含むQRTs(定量的報告テンプレート))から、内部モデルの使用状況及び使用された内部モデルの説明について報告した。

各社とも2016年のSFCRにおける記述に比べて、内容についての見直しを行い、一部充実を図っている。

次回のレポートでは、標準式と使用された内部モデルの差異の説明等の内容について報告する。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2018年07月23日「保険・年金フォーカス」)

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レポート紹介

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