2018年07月23日

欧州保険会社が2017年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-

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(5)Aviva
AvivaのSCRの構成は、次ページの図表の通りとなっており、内部モデルによるものが、全体のSCRの65.5%を占めている。Avivaの内部モデルは、英国及びアイルランドの生命・損害保険会社及びカナダの損害保険会社等、以下の会社で使用されている。

UK & Ireland Life、France Life、UK & Ireland General Insurance、Canada General Insurance

Aviva International Insurance、Aviva Group Centre
一方で、その他のイタリア、スペイン、フランス、ポーランド等の欧州保険会社等では、標準式を適用している。

Avivaは、分散効果による控除率がAllianzと同様に38.4%と相対的に高い水準となっている。
AvivaのSCR(ソルベンシー資本要件)
(6)Aegon
AegonのSCRの構成は、以下の図表の通りとなっており、内部モデルによるものが、全体のSCRの73.6%を占めている。内部モデルを適用している会社は、以下の通りである。

Aegon N.V、Aegon Levensverzekering N.V.(Aegonの一部、オランダ)、OPTAS Pensioenen N.V.(オランダのAegonの一部)、Spaarkas N.V.(Aegonの一部、オランダ)、スコットランドのEquitable plc(英国Aegonの一部)
AegonのSCR(ソルベンシー資本要件)
ソルベンシーIIのSCR計算の対象となるAegon内のその他全ての会社は、標準式を使用している。Aegonは、分散効果による控除率が52.9%と、6グループの中では最も高い水準となっている。
 

3―使用された内部モデルについての説明

3―使用された内部モデルについての説明

|使用された内部モデルについての説明項目
SFCRにおいては、「E.資本管理(Capital Management)」の中の「E.4 Differences between the standard formula and any internal model used(標準式と使用された内部モデルの差異)」等において、内部モデルについての説明が求められる。

具体的には、各社によっても若干異なる部分もあるが、概ね以下の内容が説明されている。

「E.4.1.内部モデルの使用・目的」
「E.4.2.内部モデルの範囲」
「E.4.3.内部モデルの計算」
「E.4.4.標準式と内部モデルの差異」
「E.4.5.内部モデルで使用されたデータ」

これらの項目についての説明に費やされているページ数については、欧州大手保険グループ6社について、以下の図表の通りとなっている。

なお、会社によっては、「E.2.ソルベンシー資本要件(SCR)と最低資本要件(MCR)」の中で、内部モデルの範囲等について説明しているケースもあるので、「E.4標準式と使用された内部モデルの差異」の分量だけでは、内部モデルに関する記述量を必ずしも比較できないことには注意が必要である。

さらには、各ページの記述方式や記述量も異なっており、図表等を使用しているケースもあるので、ページ数はあくまでも参考数値である。

いずれにしても、記述量に若干の差異はあるものの、各社ほぼ同じような内容をカバーしている。
内部モデルに関する記述量
上記の項目のうち、「E.4.2.内部モデルの範囲」と「E.4.3.内部モデルの計算」については、「2―内部モデルの使用状況」及び前回のレポートの「3―SCRMCRの計算方法」の中で報告している。また、「E.4.4.標準式と内部モデルの差異」については、次回のレポートで報告する。以下では、「E.4.1.内部モデルの使用・目的」と「E.4.5.内部モデルで使用されたデータ」について報告する。
|内部モデルの使用・目的
ここでは、この項目に関しての記述内容が相対的に充実しているAvivaとAllianzの説明を報告する。

(1)Avivaの例
Avivaは、Avivaの事業における内部モデルの使用に関して、以下のように記述しており、「内部モデルのアウトプットは、Aviva全体の日々のリスク管理及びビジネス上の意思決定に使用される。」とし「上級管理職、取締役会、株主及び格付機関へのリスクベースの業績報告、リスクと財務力の報告において、内部及び外部で使用される。」と述べている。

E.4.1 Avivaの事業における内部モデルの使用
内部モデルは、グループ全体及び法人レベルで、多くの重要なビジネスプロセス及び活動へのインプットを提供する。したがって、内部モデルのアウトプットは、Aviva全体の日々のリスク管理及びビジネス上の意思決定に使用される。

「使用」とは、モデルが直接的にビジネスを実行するために使用されることを意味するのではなく、その限界を認識し、リスク管理フレームワークの他の要素とバランスをとりつつ、内部モデルの出力とモデル自体が意思決定を支援するために使用されることを意味している。

内部モデルの主な目的は、内部モデル法人及びグループ全体のソルベンシーIIに基づく規制報告に必要な資本メトリクスを計算することにある。内部モデルのアウトプットは、上級管理職、取締役会、株主及び格付機関へのリスクベースの業績報告、リスクと財務力の報告において、内部及び外部で使用される。

内部モデルによって生成された詳細なメトリックは、グループ全体の戦略を設定し、以下を含む一連のその他の活動をサポートするためにも使用される。

・戦略と事業計画:法人間で資本を配分し、リスク調整後収益を測定し、リスク選好度を事業計画サイクルの一部に設定する。

・価格設定:内部モデルで計算された様々なタイプの商品をサポートするために必要な資本水準を評価することによって、価格設定と商品設計を改善する。

・取引:余剰資本への影響による潜在的買収や事業投資の妥当性の評価

・再保険:潜在的に不利なシナリオをモデル化することにより、望ましくないリスク・エクスポージャーを緩和するための目標とされる再保険契約の必要性を特定する。

・資産及び負債管理:投資戦略を推進するための市場変動の資産及び負債への影響の測定

内部モデルがAvivaのリスク管理システムに完全に統合されている方法の詳細は、B.3.3項に記載されている。

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中村 亮一

研究・専門分野

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