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- トラック運賃の上昇が貨物輸送量に及ぼす影響
2018年06月05日
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1――はじめに
深刻なドライバー不足の影響を受けて、トラック輸送費は上昇している。日本銀行「企業向けサービス価格指数」によれば、企業物流の中心である「貸切貨物」と「積合せ2貨物」の輸送指数は、2017年後半以降上昇している。直近(2018年4月)の指数は、2010年平均を100として、「貸切貨物」が109.3、「積合せ貨物」が108.1となり、過去最高水準に達した(図表-2)。スポット輸送の運賃を表す「求荷求車情報ネットワーク(WebKIT)成約運賃指数」(公益財団法人日本トラック協会)も、2017年後半以降大きく上昇している(図表-3)。
また、日通総合研究所「企業物流短期動向調査」によれば、輸送運賃・料金の増減を示すDIである「運賃・料金動向指数」(2018年第2四半期・見通し)は、「一般トラック」がプラス32、「特別積合せトラック」がプラス29と過去最高水準付近に達しており、トラック運賃の上昇圧力が一段と高まっている状況が確認できる(図表-4)。
また、日通総合研究所「企業物流短期動向調査」によれば、輸送運賃・料金の増減を示すDIである「運賃・料金動向指数」(2018年第2四半期・見通し)は、「一般トラック」がプラス32、「特別積合せトラック」がプラス29と過去最高水準付近に達しており、トラック運賃の上昇圧力が一段と高まっている状況が確認できる(図表-4)。
総務省「労働力調査」によれば、道路貨物運送業の就業者(トラックドライバー)において若手の20~30歳代の占める割合は減少傾向にあり、2017年時点では約3割に留まっている。今後は高齢ドライバーの退職等が加わり、トラックドライバーの不足はさらに深刻化・長期化する可能性が高い。そのため、トラック運賃が下がりにくい状況は今後も継続する3と見込まれる。
そこで、本稿では、貨物輸送量(トラック貨物輸送量)の決定要因に関する計量分析に基づき、トラック運賃の上昇が貨物輸送量に及ぼす影響について考察したい。
1 指標は、回答結果に対し、「労働力不足」+2、「やや労働力不足」+1、「横ばい」0、「やや労働力過剰」-1、「労働力過剰」+2の点数を与え、算出。
2 一台の車両に複数の荷主の貨物を積合せて輸送すること。
3 吉田資『人手不足に起因する物流コスト上昇が喚起する物流施設への需要(1)』ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2018年3月2日
そこで、本稿では、貨物輸送量(トラック貨物輸送量)の決定要因に関する計量分析に基づき、トラック運賃の上昇が貨物輸送量に及ぼす影響について考察したい。
1 指標は、回答結果に対し、「労働力不足」+2、「やや労働力不足」+1、「横ばい」0、「やや労働力過剰」-1、「労働力過剰」+2の点数を与え、算出。
2 一台の車両に複数の荷主の貨物を積合せて輸送すること。
3 吉田資『人手不足に起因する物流コスト上昇が喚起する物流施設への需要(1)』ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2018年3月2日
2――トラック運賃の上昇が貨物輸送量に与える影響
1|分析対象
本章では、貨物輸送量の決定要因に関する計量分析を行い、トラック運賃の上昇が貨物輸送量に与える影響を明らかにする。
「貨物輸送量」のデータとして、国土交通省「全国貨物純流動調査[調査時点2015年](以下、「物流センサス」)」の「貨物流動量4」(営業用トラックによる貨物輸送)を採用する。また、貨物輸送量の動向は、貨物の種類(例;工業製品と日用品)により異なる。そこで、「総量」のほかに、「化学工業品5」、「金属機械工業品6」、「軽工業品7」に限定した貨物流動量も分析対象とする。
2015年の貨物流動量(総量)は、1,303万トンであった(図表5)。その内、「化学工業品」は総量の30%(393万トン)、「金属機械工業品」は総量の21%(278万トン)、「軽工業品」は総量の14%(182万トン)を占めている。
図表6は、貨物流動量の推移を示したものである。「総量」は、2010年まで同水準で推移していたが、直近の2015年には約9%(対2010年比)減少した。品類別にみても、「金属機械工業品」は約14%減少、「化学工業品」は約2%減少、「軽工業品」は約9%減少している。
本章では、貨物輸送量の決定要因に関する計量分析を行い、トラック運賃の上昇が貨物輸送量に与える影響を明らかにする。
「貨物輸送量」のデータとして、国土交通省「全国貨物純流動調査[調査時点2015年](以下、「物流センサス」)」の「貨物流動量4」(営業用トラックによる貨物輸送)を採用する。また、貨物輸送量の動向は、貨物の種類(例;工業製品と日用品)により異なる。そこで、「総量」のほかに、「化学工業品5」、「金属機械工業品6」、「軽工業品7」に限定した貨物流動量も分析対象とする。
2015年の貨物流動量(総量)は、1,303万トンであった(図表5)。その内、「化学工業品」は総量の30%(393万トン)、「金属機械工業品」は総量の21%(278万トン)、「軽工業品」は総量の14%(182万トン)を占めている。
図表6は、貨物流動量の推移を示したものである。「総量」は、2010年まで同水準で推移していたが、直近の2015年には約9%(対2010年比)減少した。品類別にみても、「金属機械工業品」は約14%減少、「化学工業品」は約2%減少、「軽工業品」は約9%減少している。
本稿では、産業規模を表す指標として「県内生産額」(品類別)[内閣府「県民経済計算」]、輸送抵抗を表す指標として「物流センサス」で調査された「都道府県間輸送単価」(品類別)を採用した。また、輸送に係る費用とともに、輸送に係る時間も貨物輸送量に大きな影響を及ぼしていると考えられる。そこで、輸送抵抗を表す指標として、「物流センサス」で調査された「都道府県間輸送時間」を採用した分析も併せて行う。
「貨物輸送量」に対して「出発地および到着地の県内生産額」はプラスの影響、「輸送単価(費用)」と「輸送時間」はマイナスの影響を及ぼすと想定される。
「貨物輸送量」に対して「出発地および到着地の県内生産額」はプラスの影響、「輸送単価(費用)」と「輸送時間」はマイナスの影響を及ぼすと想定される。
(2018年06月05日「基礎研レポート」)
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03-3512-1861
経歴
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
吉田 資のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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