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2016年度 生命保険会社決算の概要
保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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逆ざや、利差益について、さらに詳しく分析してみた。(図表-7 、8)
2008年度を底として、2012年度まで逆ざやであったものが、2013年度から利差益に回復し、2015年度には4,607億円の利差益となったが、2016年度は4,035億円へと減少に転じた(なお、個々にみると、一部の会社はまだ逆ざやである。)「平均予定利率」は、保有している保険契約の負債コストを表すことになるが、過去に契約した高予定利率の契約が減少していくことにより、毎年約▲0.1%の緩やかな低下を続けており、現在の新規契約の予定利率が1%程度であることから、今後もしばらく低下傾向は続くだろう。
一方、「基礎利回り」は、▲0.12ポイント低下した。主要な構成要素である利息配当金収入合計は多くの会社で減少した。運用資産の中でも中心となる国内債券に関しては、超低水準の金利が続いているので、保有債券の年限などにもよるが、利回りは低下傾向にあると思われる。今後も利息収入にじわじわと悪影響をもたらすことになるだろう。そうした状況に対し、外貨建債券などへのシフトもすすんでおり、利息減少を緩和していると思われる。
しかし、次年度の利差益ひいては基礎利益については、何社かは今後減少傾向にあると予想しているようであり、逆ざやが復活する事態をも懸念している。
次に当期利益の動きである。基礎利益、当期利益ともに減少した。以下、当期利益を構成する、基礎利益、キャピタル損益、特別損益の状況を概観し、その後、当期利益の使途を見る。(図表-9)
さてこうした利益の使途であるが、ここ数年は価格変動準備金を中心に増加している(内部留保の増加(B))。これに、前年度ほどではないとはいえ、先に述べた追加的責任準備金繰入を加算した実質的な内部留保の増加額(B’)も12,340億円と、前年度並みの積み増しとなった。
一方、配当であるが、5,712億円が還元(株式会社の契約者配当を含む)されることとなった。
このような見方をすれば、2016年度は「実質的な利益」の68%が内部留保に、残り32%が配当にまわっているとみることができ、引き続き内部留保の充実により重点がおかれている。
配当還元の金額は、対前年▲573億円減少している。9社中3社が、危険差益関係で増配する一方で、2社が利差関係の配当を減配する予定となっている。
ストックベースの健全性指標であるソルベンシー・マージン比率(9社合計ベース)をみたものが図表-10である。ソルベンシー・マージン総額と保有リスクとの関係を見るため、形式的に9社計で算出した比率は前年度の916.8%から903.4%へと若干低下したが引き続き高水準にある。
(2017年07月11日「基礎研レポート」)
03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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