2013年09月06日

経済予測の上方修正からアベノミクスの効果を探る

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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アベノミクスの効果を定量的に捉えることは難しいが、エコノミストの経済予測が安倍政権発足前後でどれだけ変化したかを見ることにより、その効果を探ってみた。

ESPフォーキャスト調査を用いて、政権交代前と直近の予測値(平均)を比較すると、実質GDP成長率は2013年度が1.45%(1.37%→2.82%)、2014年度が0.33%(0.23%→0.56%)の上方修正、消費者物価上昇率は2013年度が0.35%(0.08%→0.43%)、2014年度が0.39%(0.34%→0.73%)の上方修正となっている。

実質GDPの上方修正を需要項目別にみると、民間消費、公的固定資本形成、外需の上振れが大きい。また、当研究所のマクロモデルによる試算では、実質GDPの上方修正は円安、株高、公共投資増額でほとんど説明できる。

このことは、これ以上の円安、株高がなければ成長率のさらなる高まりが期待しにくいことを意味している。実際、一本調子の円安、株高が止まったことを受けて、7月、8月のESPフォーキャスト調査では、予測値の上振れが一服する動きが見られた。

円安、株高が止まった後も、成長率、物価見通しの上方修正が続くようであれば、エコノミストはアベノミクスを本物と見ていることになる。アベノミクスの真価が問われるのはこれからだ。

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(2013年09月06日「基礎研マンスリー」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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