2012年10月30日

日銀決定会合・展望レポート(10/30):基金増額11兆円、2カ月連続の緩和実施

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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■見出し

・9年半ぶりの2ヶ月連続の追加緩和実施。物価目標とどかず、足元景気後退懸念
・2012-13年度とも成長率、物価は下方修正、2014年でも物価目標の1%には達せず

■introduction

日銀は30日の金融政策決定会合で資産買入等基金の規模を11兆円増やし、91兆円とする追加の金融緩和を全員一致で決めた。日銀は9月にも10兆円の国債買い入れを決定したばかり。2ヶ月連続の緩和実施は、りそなへの資本増強を決めた2003年5月以来、実に9年半ぶりとなる。

足元では輸出と生産の弱さから7~9月期は5四半期ぶりにマイナス成長となるのがほぼ確実視されている。日中関係も影を落とし、景気や物価の下振れリスクが一段と強まっている。
今回会合でまとめた展望レポートで、初めて示す14年度の物価見通しで目標とする1%には届いていない(後述)。デフレ脱却の道筋を踏み外さないためにも追加緩和が必要だとの判断がなされたようだ。

具体的な「緩和策」については、筆者は「サプライズ」をどう起こすかという点に注目していた。
今回会合の場合、2週間前くらいから、政府の追加経済対策と歩調をあわせ「日銀も30日に追加緩和へ」との早めの報道がなされ、市場も追加緩和への期待をかなり織り込んでいた。日経平均株価は9000円、円ドルも80円近辺と大きな期待が醸成されてきた。
今回も過去のようにせいぜい5-10兆円の基金増額+国債買い入れとした場合、失望から株安・円高となる可能性が高く、「失望させない」ためにどうすべきかとの議論がなされたと思われる。来年3月には総裁・副総裁の人事も控えており、対政治という点でも「消極的ではない日銀」というイメージはかなり意識されたに違いない。
しかし今回でてきた追加緩和策は、(1)基金増額11兆円、(2)ETF、リートなどリスク資産の購入、(3)貸出増加を支援するための資金供給の枠組みの創設、(4)政府と連名で「デフレ脱却に向けた取り組み」をだし、政府・日銀一体との印象を強調、など。
(1)、(2)、(3)は織り込み済み、発表後市場では円高、株安にふれたことを踏まえれば、ほぼ予想の範囲・予想を下回るとの反応で失望となった。市場の増額10兆円予想に対して11兆円と1兆円上積みは、「市場との対話がへた」、「センスなし」との批判を浴びそうだ。
日銀総裁と財務相・経済財政相との連名による「デフレ脱却に向けた取組について」でデフレ脱却に向けて政府との協力関係をより強める方針を明らかにしたが、そもそも長引く長期低迷・デフレに政府・日銀がいままで、結果がでる策をうっていないとの「市場の中でなかばあきらめ」がある中で、「強く期待」という表現は、かなり疑問を感じる。

今後の金融政策だが、(1)国内外の景気状況、(2)米国では財政の崖を意識し、早ければ12月にも追加緩和が実施される可能性も高く、日銀も早ければ12月にも再び緩和に動く可能性が高い。

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総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

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レポート紹介

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