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コラム
2011年11月09日
BS朝日放送で、「京都1200年の旅」と題した紀行番組の放映が始まりました。この番組の毎回の案内役として、来年6月に四代目市川猿之助を襲名予定の、当代市川亀治郎丈が出演されているので、大の歌舞伎好きの私は、早速熱心な視聴者となっています。
二回目の番組では、「古都を見つめる 清水寺の謎」というタイトルの下、平安京遷都以前の西暦778年に建立された、京の古刹清水寺にまつわる様々なエピソードの紹介がありました。
その中に、険しい山肌に立つ清水寺の本堂、国宝“清水の舞台”を支えるケヤキの巨大構造物についての紹介もあり、その壮大な内容に大きな感銘を受けました。
釘も使わず格子状に組み合わさっている長大なケヤキの柱は、その数139本ともいわれ、それぞれが樹齢400年を越える大木だそうです。そして、ケヤキの大木の耐用年数は、丁度、樹齢の倍位の年数なので、この巨大構造物の建築寿命は、およそ800年と推定されているそうです。
現在の本堂は、1633年に徳川家光の寄進により再建されたものなので、建立以来380年が経過していますから、今から400年後の未来には、建替えの必要に迫られるわけです。しかしながら、現代の日本には、こんなケヤキの巨木はもう残っていません。そこで、清水寺は、京都府内に3箇所の土地を購入し、そこを寺有林として、ケヤキの植林と育林を始めたそうです。400年後に備えて、樹齢400歳のケヤキが間に合うように.....。
これは、現代のお話ですが、日本では、更に壮大な取組も古くから行われ続けています。それは、伊勢神宮の式年遷宮(定期的に行われる遷宮)です。
伊勢神宮では、天武天皇により685年に制定された式年遷宮の制を守って、20年ごとに、内宮・外宮を初めとするあらゆる社殿、及び、鳥居・宇治橋などの多くの建造物や装束・神宝を、新たな土地に移して造り替えてきました。690年に持統天皇が最初の遷宮を行って以来、1300年以上の永きにわたり遷宮は重ねられ、来る2013年には、第六十二回目の遷宮が行われる予定です。
スタート時の飛鳥時代から、この平成の時代まで、大きく世の中は変化してきたのでしょうが、20年ごとのイベントに向けて、人・物・金の準備と手当てが、連綿と続けられてきたのです。そして、この遷宮を重ねてきたことにより、古代の建築技術の伝承が図られ、今日でも、1300年前と寸分違わぬ伊勢神宮社殿に詣でることができるのです。
この清水寺や伊勢神宮の事例は、サステナビリティ(持続可能性)の要諦が、
(1)未来(400年先!)に起きる厳しい現実を直視し、逃げずに対策を行う
(2)決めた対策は、困難があってもやり続ける(1300年も!)
にあることを教えてくれます。
たった100年たらずの安心プランに挫折し、今また、たかだか2010年代半ばを目指した一体改革に難儀している私達は、今一度、真摯に過去の成功例に学ぶべきではないでしょうか。
二回目の番組では、「古都を見つめる 清水寺の謎」というタイトルの下、平安京遷都以前の西暦778年に建立された、京の古刹清水寺にまつわる様々なエピソードの紹介がありました。
その中に、険しい山肌に立つ清水寺の本堂、国宝“清水の舞台”を支えるケヤキの巨大構造物についての紹介もあり、その壮大な内容に大きな感銘を受けました。
釘も使わず格子状に組み合わさっている長大なケヤキの柱は、その数139本ともいわれ、それぞれが樹齢400年を越える大木だそうです。そして、ケヤキの大木の耐用年数は、丁度、樹齢の倍位の年数なので、この巨大構造物の建築寿命は、およそ800年と推定されているそうです。
現在の本堂は、1633年に徳川家光の寄進により再建されたものなので、建立以来380年が経過していますから、今から400年後の未来には、建替えの必要に迫られるわけです。しかしながら、現代の日本には、こんなケヤキの巨木はもう残っていません。そこで、清水寺は、京都府内に3箇所の土地を購入し、そこを寺有林として、ケヤキの植林と育林を始めたそうです。400年後に備えて、樹齢400歳のケヤキが間に合うように.....。
これは、現代のお話ですが、日本では、更に壮大な取組も古くから行われ続けています。それは、伊勢神宮の式年遷宮(定期的に行われる遷宮)です。
伊勢神宮では、天武天皇により685年に制定された式年遷宮の制を守って、20年ごとに、内宮・外宮を初めとするあらゆる社殿、及び、鳥居・宇治橋などの多くの建造物や装束・神宝を、新たな土地に移して造り替えてきました。690年に持統天皇が最初の遷宮を行って以来、1300年以上の永きにわたり遷宮は重ねられ、来る2013年には、第六十二回目の遷宮が行われる予定です。
スタート時の飛鳥時代から、この平成の時代まで、大きく世の中は変化してきたのでしょうが、20年ごとのイベントに向けて、人・物・金の準備と手当てが、連綿と続けられてきたのです。そして、この遷宮を重ねてきたことにより、古代の建築技術の伝承が図られ、今日でも、1300年前と寸分違わぬ伊勢神宮社殿に詣でることができるのです。
この清水寺や伊勢神宮の事例は、サステナビリティ(持続可能性)の要諦が、
(1)未来(400年先!)に起きる厳しい現実を直視し、逃げずに対策を行う
(2)決めた対策は、困難があってもやり続ける(1300年も!)
にあることを教えてくれます。
たった100年たらずの安心プランに挫折し、今また、たかだか2010年代半ばを目指した一体改革に難儀している私達は、今一度、真摯に過去の成功例に学ぶべきではないでしょうか。
(2011年11月09日「研究員の眼」)
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