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コラム
2002年11月06日
1.活発な分社化 最近の企業の動きをみると分社化が活発に行われている。今年に入っても、NECの半導体事業、富士通の液晶事業、東芝機械の工作機械や半導体装置事業など、大手企業の分社化が相次いで発表・実施されている。 企業はなぜ分社化するのだろうか?一般に言われている分社化のメリットには次のようなものがある。まず、分権化の推進である。事業部門が企業内部にある限り、その業績責任や業績評価は不十分なものにならざるを得ないが、分社化されると独立した法人として決算が行われ業績管理が徹底される。次にコスト削減が挙げられる。別会社となることで親会社と異なる人事・賃金体系を採用しやすくなり、人件費を削減することができる。第三点として、企業規模が小さくなることによって意思決定が迅速化し、経営が効率化される効果が指摘できる。第四点としては、本業とは異なる新規事業を展開するときに、事業リスクが遮断できるという効果がある。第五点として、中高年の雇用の受け皿として子会社が活用できると点が挙げられる。こうしたメリットを追求するために、各社は分社化を進めているとみられる。 |
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2.分社化が必ずしも成功するわけではない 先の分社化のメリットには頷けるものも多いが、一方では分社化にはデメリットもあり、分社化が業績改善につながらないことも少なくない。分社化のデメリットとして、統一された理念と経営戦略のもとに各事業を遂行することが難しくなる、セクショナリズムに陥りやすい、相互の人事ローテーションが難しくなる、管理・間接部門の経費が増える、資金管理を集中しないと資金の回転が悪くなるといったことが挙げられる。また、メリットとして挙げた点についても、運用によってはメリットとならないことも起る。別会社となり企業の規模を小さくしても、子会社の意思決定に親会社が嘴をはさんだり、子会社の経営者に十分な経営能力が備わっていない場合には、別会社化したメリットは発揮されないだろう。分社化したものの思ったような効果がなく、本体への吸収、子会社同士の統合、清算などに追い込まれる子会社も少なくない。今年に入ってからも、ソニーによるアイワの吸収合併(12月1日実施予定)やヤマハのヤマハリゾートの吸収合併のように、子会社の業績不振による吸収合併がしばしば行われている。 3.グループ戦略の明確化、権限委譲、結果責任が分社化成功のカギ 分社化が成功するかどうかは、分社化のメリットが発揮されるようなグループ運営となっているかによるところが大きいと思われる。分社化成功のヒントを得るために、徹底した分社化戦略で成功を収めているアパレルのサンラリー(岐阜市)をみてみよう。サンラリーでは、営業マン5人、企画担当者2人、デザイナー3人で構成し、売上が20~30億円程度になると分社を促す戦略を採用している。その戦略には次のような特徴がある。まず、グループ戦略を明確にした上で、その内容を社員に徹底している点である。具体的には、グループのトップが、分社制度による独立を推奨し、子会社間の競争も厭わないことを明確に意思表示していることである。次に、子会社への大胆な権限委譲である。経理・総務といった管理業務以外は、子会社のトップに委ねられている。統一したグループ戦略の枠内で、子会社の経営者が自由に経営手腕を発揮できる環境を作っている。最後に、責任の所在の明確化である。子会社の業績によって待遇に大きな差がつくことが明確に定められている。3年連続赤字なら社長退任、各社の社員の給与も賞与で年間4か月の差が生じているとのことである。 サンラリーの例をみる限り、グループとしての戦略の明確化した上で、子会社に大胆な権限委譲を行い、経営の結果には明確な責任を伴わせるという、グループ戦略をグループのトップが実行できるかどうかが分社化を成功させるカギを握っているように思われる。 |
(2002年11月06日「エコノミストの眼」)
小本 恵照
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