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今年の春頃から、カーター大統領のスピーチライターであったジャーナリストのジェームズ・ブァローズや滞日経験の長いオランダのジャーナリストのカレル・フォン・ウォルフレンが、相次いで日本及び日本人は特殊であるという立場から議論を展開し、日本封じ込め論、日本異質国家論として日米両国で大きな話題となっており、特に米国では対日政策の見直し(revisionist)論議の高まりを生み出している。このような日本特殊論はある意味で当然であって、これまで日本では日本人論ブームで、日本人は勤勉で秀れているとか、高度経済成長は日本のみがなし遂げたとか、言わば戦前の八絃一宇論に近いような日本人論が氾濫していた反動として、なるほど日本人は特殊だと逆手にとられたと言えよう。日本人は深刻にこのような事態を引き起こしたことを反省すべきと思われる。
現実に起こっていることは、人種差別は極端な議論ではあるが、諸外国は日本バッシングを行うとか、日本に際限のない要求を突きつけ、ひいては日本を囲い込んでしまって、諸外国との交渉において一定の障害を設けようということだと思われる。彼等の議論の中には、日本の精神風土には普遍的原理あるいは絶対神への信仰を持たず、非常に実利志向で状況対応的であるといった所講日本人及び日本文化に対するかなり偏った批判がみられたり、間違った過去の事実、例えば通産省は日本の産業に対しオールマイティである、に基づいた判断もみられる。このことは日本人がユニークであってそれが経済発展の鍵になったという自閉症的な日本人論が日本でみられるのと同様に、非常に排他的な自己文化中心主義が諸外国にもあるということであろう。
確かに、日本及び日本人をあたかも民主主義に価しないとか、異なった価値観を持っていると言うのは的を得ていないが、外国人の眼から見れば、わき目もふらず、莫とした目標しか持たないで、諸外国へ洪水のごとく大量進出したり、現地企業を追い詰める日本の対外経済活動をみた時に、日本の経済貿易のゲームのルールというのは、相互主義あるいはギブ・アンド・テイクという世界経済活動共通のルールとは違うのではないかという疑問を持つのも事実である。又、日本の政治、産業の指導者と言われる人達がその分野に関しての知識、経験しか持たず、世界を指導する政治家、産業人としての識見、人格に乏しく、更に真の人間としての教養、趣味に欠けているとして、日本人からですら尊敬を抱かれていないのも、残念ながら真実に近い事であろう。このような状況を続けておれは、、日本というのは理念のない競争的で一方的な経済、貿易のルールに従っている特殊な国と言われでも仕方がないことで、現今の日本特殊論は的はずれであり、大いに反論することは当然であるが、我々の持っている欠点を矯正しなければ、今後の世界の中で孤立の道を辿ることも確実であろうと思われる。昨今、このような日本の孤立化を図ろうとする動きに対して、日本でナショナリスティックな反応が起こりかけているようにみられるが、慎みある態度で対応してゆくことが肝要と思われる。
(1989年12月01日「調査月報」)
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