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2025年11月05日

インドネシアGDP(25年7-9月期)~5.04%と底堅い成長を維持

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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【概要・見方】

インドネシアの2025年7–9月期実質GDP成長率は前年同期比5.04%となり、市場予想の5.0%とほぼ一致した。前期(同5.12%)から小幅に鈍化したものの、5%台を維持し底堅さを示している。内需では民間消費が安定している一方で、投資の鈍化が見られた。外需では、輸出の大幅な増加が続き、輸入の鈍化により純輸出の寄与度が相対的に高まり、外需の成長寄与は拡大した。

特に、米国向けの輸出に関しては、関税発動リスクが残る中でも駆け込み輸出が堅調に推移した。輸出が大幅に増加した一方で、特定品目(例えばパーム油や衣料品など)については、関税の影響で減少する可能性もあり、今後の貿易戦略において警戒が必要である。

8月下旬には大規模な反政府抗議活動が発生し、主要都市で交通や物流が一時的に混乱した。企業活動や消費者マインドには慎重さがみられたものの、現時点でGDP統計への明確な下押し効果は確認されていない。インドネシア政府は景気下支えを目的として9月に16.2兆ルピア(約1,490億円)相当の経済対策パッケージを投入しており、その規模の拡大が年末にかけて進む予定である。これには、現金給付やインフラ雇用、観光支援、公共交通補助などが含まれており、これら政策効果は年末から2026年前半にかけて本格化するとみられる。

【支出別の詳細】

家計最終消費支出は前年同期比4.89%(前期:同4.97%)となり、交通・通信や外食・宿泊などを中心に底堅く推移し、全体の成長を下支えた(図表2)。

政府最終消費支出は前年同期比5.49%(前期:同▲0.33%)となり、公共支出の拡大によりプラス寄与を示した。

総固定資本形成は前年同期比5.04%(前期:同6.99%)と鈍化した。内訳をみると、その他の設備投資(同11.62%)と機械・設備投資(同7.52%)、住宅(同5.51%)が堅調を維持した一方、輸送機器(同▲10.32%)の伸びが鈍化した。

財・サービス輸出は前年同期比9.91%(前期:同10.95%)と大幅な伸びが続いた。輸出の内訳を見ると、財輸出が同10.16%の二桁成長となり、サービス輸出が同7.62%となり、それぞれ堅調な伸びが続いた。一方、財・サービス輸入は同1.18%(前期:同11.48%)となり減速した。輸入の内訳を見ると、財輸入が同0.92%、サービス輸入が同2.82%となり、それぞれ緩慢な伸びとなった。その結果、純輸出は成長率寄与度が+2.15%ポイントとなり、前期の+0.32%ポイントから拡大した。
(図表1)実質GDP成長率(支出別寄与度)/(図表2)支出別の実質GDP成長率

【産業別の詳細】

第一次産業と第三次産業が改善したものの、第二次産業が鈍化した(図表3)。

まず第二次産業は前年同期比3.69%(前期:同4.67%)と鈍化した。内訳を見ると、全体の2割を占める製造業(同5.54%)や建設業(同4.98%)が底堅く推移したものの(図表4)、鉱業・採石業(同▲1.98%)が減少し、電気・ガス・水供給業(同2.89%)が緩慢な成長にとどまった。

第三次産業は前年同期比6.80%(前期:同6.05%)と加速した。内訳を見ると、教育(同10.59%)やビジネスサービス(同9.94%)、情報・通信(同9.65%)、運輸・倉庫業(同8.62%増)、宿泊・飲食業(同8.41%)、そして構成割合の大きい卸売・小売(同5.49%)が堅調に推移した。一方で公共・防衛・社会保障(同4.33%)や不動産(同3.95%)、金融・保険(同0.77%)は緩やかな伸びとなった。

第一次産業は前年同期比4.93%増となり、前期の同1.65%増から伸びを高めた。
(図表3)インドネシア 実質GDP成長率(生産別)/(図表4)産業別の実質GDP成長率

【今後の注目点】

政府の景気刺激策は10-12月期以降、地方インフラ事業や所得支援を通じて個人消費と雇用の回復を下支えするとみられる。政策効果の定着が進めば、2025年末にかけて成長率は再び上向く可能性がある。一方、外需の不透明感や社会不安の再燃がリスク要因となり得る。全体として、2025年通年の実質GDP成長率は5.0~5.2%のレンジで推移する見通しである。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年11月05日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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