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- 家計調査15年4月~消費支出は消費増税直後の水準をさらに下回る
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■見出し
・実質消費支出は予想外の減少
・15年度入り後の賃金の伸びに過度の期待は禁物か
■要旨
総務省が5月29日に公表した家計調査によると、15年4月の実質消費支出は前年比▲1.3%と13ヵ月連続の減少となり、事前の市場予想(QUICK集計:前年比3.0%、当社予想は同1.3%)を大きく下回る結果となった。14年4月が駆け込み需要の反動で前年比▲4.6%の大幅減少となっていたため、今月はその裏が出る形で前年比の伸びは高めになりやすかったにもかかわらず、予想外のマイナスとなった。前月比では▲5.5%(3月:同2.4%)の大幅減少であった。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比▲3.7%(3月:同3.3%)の低下となった。3月が高い伸びとなった反動もあるが、4月の指数を1-3月期の平均と比べても▲1.7%も低い水準となり、極めて弱い結果である。
家計調査は月々の振れが大きい統計であるため、今月の結果だけで個人消費が腰折れしてしまったと判断するのは早計だが、商業動態統計などの消費関連統計も低調で、消費増税の影響一巡後も個人消費の回復が遅れていることは確かである。
原油価格下落に伴う物価上昇率の低下によって、消費低迷の主因となってきた実質所得の押し下げ圧力は和らいでいるが、その一方で名目賃金が伸び悩んでいることが懸念材料だ。
毎月勤労統計の現金給与総額(一人当たり)は14年12月の前年比0.9%から15年1月が同0.6%、2月が同0.1%と伸び率の鈍化が続き、3月には同0.0%の横這いとなった。所定内給与の伸びは15年に入りようやくプラス圏に浮上したが、景気減速に伴う残業時間の減少から所定外給与の伸びがマイナスとなったことが賃金の下押し要因となっている。
15年春闘では昨年を上回る賃上げが実現したため、15年度の所定内給与は14年度の前年比▲0.2%から小幅な増加に転じることが予想されるが、改定後の賃金が支給されるのは5月以降の企業も多いため、実際の賃金上昇率が高まるまでにはしばらく時間がかかる可能性がある。また、14年度の賃金を大きく押し上げたボーナスは15年度には若干伸びが低下する公算が大きい。企業業績は堅調を維持しているものの消費税率引き上げの影響から増益率は鈍化しているためだ。賃金上昇に過度の期待は禁物だ。
現時点では、個人消費は実質所得の改善を主因として持ち直しの動きを続けると予想しているが、名目賃金の伸び悩みによって個人消費の回復が遅れるリスクがあるだろう。
(2015年05月29日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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