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2025年04月25日
    欧州大手保険グループの2024年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況-
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1―はじめに
                                            欧州大手保険グループの2024年決算数値が、2025年2月下旬から3月中旬にかけてプレスリリースされて、投資家向けのプレゼンテーション資料等の形で公表され、その後4月上旬までにはAnnual Reportも公表されている。
前回のレポート1では、生命保険事業を中心とした地域別の事業展開の状況について報告した。
ここ数年における新たな規制への対応や金利環境下で、各社とも貯蓄・年金商品等の伝統的な利率保証付商品から、ユニットリンク型商品や保障・医療商品へのシフトを志向してきた。こうした状況は、グループ全体として基本的には同じ方向に向かっているが、その実態は地域毎に若干異なっていた。これらは、各地域の保険市場や金融資本市場の状況やそれらを反映した保険商品の収益性等に関係している。
今回のレポートでは、2024年の生命保険事業の新契約業績について、商品タイプ別、地域別の販売動向及び新契約マージン等の数値を通じて、欧州大手保険グループの商品シフトの現状及び収益性の状況を報告する。なお、これまでの欧州大手保険グループの2024年決算に関するレポートで述べてきたように、2023年からは新たな保険契約会計基準であるIFRS第17号が適用されており、これに伴い、開示情報の見直し等が行われ、2022年まで公表されていた数値が公表されなくなったり、また公表された場合も2022年数値の再計算等も行われていたり、しているので、これまでのこのレポートで報告してきた数値の継続性は必ずしも維持されていないことには注意を要する。ただし、過去からの傾向を見る上では参考になることから、2021年以前の数値も過去のベースでそのまま掲載している(以下の図表では、例えば二重線を境に計算基準等が変更されている)場合もある。 
1 基礎研レポート「欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析-」(2025.4.14)
            前回のレポート1では、生命保険事業を中心とした地域別の事業展開の状況について報告した。
ここ数年における新たな規制への対応や金利環境下で、各社とも貯蓄・年金商品等の伝統的な利率保証付商品から、ユニットリンク型商品や保障・医療商品へのシフトを志向してきた。こうした状況は、グループ全体として基本的には同じ方向に向かっているが、その実態は地域毎に若干異なっていた。これらは、各地域の保険市場や金融資本市場の状況やそれらを反映した保険商品の収益性等に関係している。
今回のレポートでは、2024年の生命保険事業の新契約業績について、商品タイプ別、地域別の販売動向及び新契約マージン等の数値を通じて、欧州大手保険グループの商品シフトの現状及び収益性の状況を報告する。なお、これまでの欧州大手保険グループの2024年決算に関するレポートで述べてきたように、2023年からは新たな保険契約会計基準であるIFRS第17号が適用されており、これに伴い、開示情報の見直し等が行われ、2022年まで公表されていた数値が公表されなくなったり、また公表された場合も2022年数値の再計算等も行われていたり、しているので、これまでのこのレポートで報告してきた数値の継続性は必ずしも維持されていないことには注意を要する。ただし、過去からの傾向を見る上では参考になることから、2021年以前の数値も過去のベースでそのまま掲載している(以下の図表では、例えば二重線を境に計算基準等が変更されている)場合もある。
1 基礎研レポート「欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析-」(2025.4.14)
2―欧州大手保険グループ各社の新契約業績動向等
                                            この章では、欧州大手保険グループ各社の生命保険事業(医療保険を含む)について、新契約の年換算保険料(Annual Premium Equivalent :APE)、新契約保険料現在価値(Present Value of New Business Premiums:PVNBP又はPresent Value of Expected Premiums:PVEP)、新契約価値(New Business Value:NBV又はValue of New Business:VNB)や新契約利益(New Business Profit:NBP)及び新契約マージン(New Business Margin又はNew Business Value Margin)等の状況について、地域別、商品タイプ別に報告する。なお、これらの用語の定義や名称等は、その分母及び分子の考え方等を含めて各社各様である。このレポートにおいては、各社が公表している資料に基づいて、これらの数値やその説明等の内容について、筆者の解釈に従って報告している2。また、各社によって、開示情報の内容等がかなり異なっていることから、以下のレポートで各社に割かれているページ数にはかなりの差異があることを述べておく。
 
2 新契約価値の地域別状況等については、前回のレポートも適宜参照していただきたい。
                                    
            2 新契約価値の地域別状況等については、前回のレポートも適宜参照していただきたい。
                                                                        1|AXA
(1) 全体の状況3
2024年の新契約価値(NBV)4は、2023年に比べて0.7 %減少(為替レートや範囲等を同一とした「比較ベース」では2.0%増加、以下同様)、金額で17百万ユーロ減少して、2,264百万ユーロとなった。生命保険がフランスを中心としたユニットリンク型貯蓄商品の販売が好調で比較ベースで2%増加、医療がフランスでの販売増加と前提条件変更の好影響により比較ベースで1%増加したが、フランスでのビジネスミックスの悪化により一部相殺された。
新契約マージン(NBV Margin)5(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVEP))は、主にビジネスミックスの悪化による影響で、2023年に比べて0.6%ポイント低下(0.5%ポイント低下)して、4.4%となった。
新契約保険料現在価値(PVEP)6は、2023年に比べて11.0%増加(13.6%増加)して、50,896百万ユーロとなった。これは、生命保険がフランス、日本、イタリアでの販売増加により比較ベースで12%増加、医療がフランスでのグループ事業の販売増加を反映して比較ベースで17%増加したことによる。
            (1) 全体の状況3
2024年の新契約価値(NBV)4は、2023年に比べて0.7 %減少(為替レートや範囲等を同一とした「比較ベース」では2.0%増加、以下同様)、金額で17百万ユーロ減少して、2,264百万ユーロとなった。生命保険がフランスを中心としたユニットリンク型貯蓄商品の販売が好調で比較ベースで2%増加、医療がフランスでの販売増加と前提条件変更の好影響により比較ベースで1%増加したが、フランスでのビジネスミックスの悪化により一部相殺された。
新契約マージン(NBV Margin)5(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVEP))は、主にビジネスミックスの悪化による影響で、2023年に比べて0.6%ポイント低下(0.5%ポイント低下)して、4.4%となった。
新契約保険料現在価値(PVEP)6は、2023年に比べて11.0%増加(13.6%増加)して、50,896百万ユーロとなった。これは、生命保険がフランス、日本、イタリアでの販売増加により比較ベースで12%増加、医療がフランスでのグループ事業の販売増加を反映して比較ベースで17%増加したことによる。
                                            なお、2024年の新契約CSM7は2,169百万ユーロで、NBVの2,264百万ユーロへの調整は、その他の契約(短期契約や投資契約等)のNBVで+824百万ユーロ、税で▲729百万ユーロ、となっている。
 
3 ここでの具体的な数値は、(2)以下の図表等も参照していただきたい(以下、同様)。
4 AXAは、NBVについて、以下のように説明している。
「NBVは、当年中に新たに発行された契約の価値を表しており、これは、(i)新契約のCSM、(ii)予想される更新を考慮した、生命保険会社が保有する期間中に新規に発行された短期契約の将来利益の現在価値、(iii) IFRS第9号に基づいて会計処理された純粋な投資契約の将来利益の現在価値、の合計から、(iv)再保険費用、(v)税金、(vi)少数株主利益を控除したもの、で構成される。」
5 これを翻訳すると「新契約価値マージン」となるが、ここでは他社に合わせて「新契約マージン」としている。
6 AXAは、PVNBPではなく、「予想保険料現在価値(Present Value of Expected premium:PVEP)」と称している。
7 CSM(Contractual Service Margin)は「契約上のサービスマージン」で、将来利益の現在価値に相当している。
                                    
            3 ここでの具体的な数値は、(2)以下の図表等も参照していただきたい(以下、同様)。
4 AXAは、NBVについて、以下のように説明している。
「NBVは、当年中に新たに発行された契約の価値を表しており、これは、(i)新契約のCSM、(ii)予想される更新を考慮した、生命保険会社が保有する期間中に新規に発行された短期契約の将来利益の現在価値、(iii) IFRS第9号に基づいて会計処理された純粋な投資契約の将来利益の現在価値、の合計から、(iv)再保険費用、(v)税金、(vi)少数株主利益を控除したもの、で構成される。」
5 これを翻訳すると「新契約価値マージン」となるが、ここでは他社に合わせて「新契約マージン」としている。
6 AXAは、PVNBPではなく、「予想保険料現在価値(Present Value of Expected premium:PVEP)」と称している。
7 CSM(Contractual Service Margin)は「契約上のサービスマージン」で、将来利益の現在価値に相当している。
                                                                        (2) 新契約マージン(対PVNBP)等の地域別状況
PVNBP、NBV及び新契約マージン(対PVNBP)の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。
これによれば、構成比は、PVNBP(PVEP)では自国のフランスが50%を占めているが、NBVではフランスは30%で、アジア・国際が44%を占めている。この結果として、新契約マージンについては、グループ全体では4.4%だが、アジア・国際が7.2%と高く、フランス以外の欧州が5.0%であるのに対して、フランスは2.7%と低い水準になっている。なお、図表には示されていないが、新契約マージンを生命保険と医療保険に分けた場合、グループ全体で、生命保険4.9%、医療3.4%となっている。
            PVNBP、NBV及び新契約マージン(対PVNBP)の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。
これによれば、構成比は、PVNBP(PVEP)では自国のフランスが50%を占めているが、NBVではフランスは30%で、アジア・国際が44%を占めている。この結果として、新契約マージンについては、グループ全体では4.4%だが、アジア・国際が7.2%と高く、フランス以外の欧州が5.0%であるのに対して、フランスは2.7%と低い水準になっている。なお、図表には示されていないが、新契約マージンを生命保険と医療保険に分けた場合、グループ全体で、生命保険4.9%、医療3.4%となっている。
                                                                        (3) PVNBPの商品タイプ別状況
PVNBPの商品タイプ別の内訳については、次ページの図表が示しているように、2024年にグループ全体では、保障と医療が65%、ユニットリンクが14%、軽資本一般勘定が17%等となっている。
なお、2022年まで公表されてきた数値によれば、商品タイプ別の構成比は、地域別に大きく異なっている。欧州では保障と医療がそれぞれ3割程度、一般勘定貯蓄、ユニットリンクがそれぞれ2割程度となっていたが、アジアではユニットリンクの構成比は低く、保障が6割以上で、その他に医療及び一般勘定貯蓄が一定割合を占めていた。これをさらに各国別で見てみると、欧州やアジア諸国間でも状況は一律ではなく、それぞれの国の保険市場の特徴が反映された形になっていた。
因みに、保有ベースの保険料等(Gross Written Premiums and other Revenue)での内訳については、2024年の生命保険の保険料等34,497百万ユーロのうち、保障が46%、ユニットリンクが23%、軽資本一般勘定が25%、伝統的一般勘定が6%となっている。
            PVNBPの商品タイプ別の内訳については、次ページの図表が示しているように、2024年にグループ全体では、保障と医療が65%、ユニットリンクが14%、軽資本一般勘定が17%等となっている。
なお、2022年まで公表されてきた数値によれば、商品タイプ別の構成比は、地域別に大きく異なっている。欧州では保障と医療がそれぞれ3割程度、一般勘定貯蓄、ユニットリンクがそれぞれ2割程度となっていたが、アジアではユニットリンクの構成比は低く、保障が6割以上で、その他に医療及び一般勘定貯蓄が一定割合を占めていた。これをさらに各国別で見てみると、欧州やアジア諸国間でも状況は一律ではなく、それぞれの国の保険市場の特徴が反映された形になっていた。
因みに、保有ベースの保険料等(Gross Written Premiums and other Revenue)での内訳については、2024年の生命保険の保険料等34,497百万ユーロのうち、保障が46%、ユニットリンクが23%、軽資本一般勘定が25%、伝統的一般勘定が6%となっている。
(2025年04月25日「基礎研レポート」)
中村 亮一のレポート
| 日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 | 
|---|---|---|---|
| 2025/11/04 | 数字の「26」に関わる各種の話題-26という数字で思い浮かべる例は少ないと思われるが- | 中村 亮一 | 研究員の眼 | 
| 2025/10/23 | EIOPAがソルベンシーIIのレビューに関する技術基準とガイドラインのセットの新たな協議を開始等 | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス | 
| 2025/10/16 | EIOPAが2026年のワークプログラムと戦略的監督上の優先事項を公表-テーマ毎の活動計画等が明らかに- | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス | 
| 2025/10/09 | 曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その13)-3次曲線(アーネシの曲線・シッソイド等)- | 中村 亮一 | 研究員の眼 | 
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【欧州大手保険グループの2024年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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