2023年06月02日

欧州大手保険Gの生命保険事業の収益構造について-2022年決算数値等に基づく結果報告-

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(2) 保証利率の状況
Allianzの主要国における保有契約の平均保証利率の状況は、以下の図表の通りとなっている。

絶対的な保証利率の水準では、ドイツ、スイス、ベルギーが高く、イタリアがこれに続いており、米国やフランスの保証利率が相対的に低いものとなっている。これは、同様の数値を公開しているAXAの状況と、AXAにおけるスイスの水準がかなり低くなっていることを除くと、各国間の相対的な大小関係のポジションはほぼ類似している。ただし、平均保証利率の絶対水準は両社でかなり異なっている。

2021年との比較では、平均保証利率が、ドイツとイタリアで0.1%ポイント低下したが、フランスでは0.2%ポイント上昇している。
生命保険事業の加重平均保証利率(国別)
(3)デュレーション・マッチングの状況
Allianz の生命保険事業の資産と負債のデュレーション・ギャップの状況は、2017年末においては、資産及び負債のデュレーションは共に9.5年で一致していた。ただし、2018年末においては、経営行動によって資産のデュレーションの長期化を図った一方で、市場の動きやモデルの変更の影響を受けて、負債のデュレーションが短くなったことから、逆に資産のデュレーションが0.4 年長くなった。2019年は資産のデュレーションのさらなる長期化が図られるとともに、負債のデュレーションも長期化したことから、両者のギャップは逆に負債が0.2年長くなった。2020年は、資産及び負債のデュレ―ションがともに11年を超える数字で長期化しており、両者のギャップは負債が0.1年長くなっており、2021年は負債のデュレ―ションの短期化により、再び資産のデュレ―ションが0.2年長くなっていた。これに対して、2022年は主として割引率の上昇により資産及び負債のデュレ―ションが短期化し、結果として、両者のギャップは資産が0.6年長くなった。
生命保険事業における資産と負債のデュレーション・ギャップの推移
3|Generali
(1) 営業利益の構造
Generaliは、生命保険事業の営業利益(operating result)の構造を地域別に開示しており、以下の図表の通りとなっている。

2021年から2022年にかけて、グループ全体では、「投資結果(Investment result)」が1,528百万ユーロから1,919百万ユーロに25.6%増加少、「技術マージン(Technical margin)」のうちの「付加保険料&手数料5」が5,253百万ユーロから5,637百万ユーロに7.3%増加、「技術的&その他結果(Technical & other result)」が1,566百万ユーロから1,905百万ユーロに21.6%増加した。一方で、「費用(Expenses)」は5,532百万ユーロから5,939百万ユーロに7.4%増加した。これらの結果として、営業利益は2,816百万ユーロから3,532百万ユーロに25.4%増加した。

「技術マージン」の増加は、ユニットリンク商品や保障商品へのシフトによる商品ミックスの改善を反映している。

各国・各地域別に見てみると、欧州において、イタリアやフランスが引き続き投資結果に一定程度依存する収益構造であるのに対して、ドイツは投資結果が殆どなく、付加保険料&手数料や技術的&その他結果に依存した構造となっている。一方で、アジアは、投資結果は高くなく、ドイツほどではないが、付加保険料&手数料や技術的&その他結果に依存した構造となっている。
生命保険事業の収益構造(地域別)/生命保険事業の収益構造(主要国別)/生命保険事業の収益構造(主要国別)
なお、付加保険料&手数料の内訳は、以下の図表の通りとなっている。
付加保険料&手数料の内訳
 
5 ここでは、「収益マージン(Margin on revenues)」及び「ユニット/インデックス・リンク手数料(Unit/indexed linked fees)」の合計を「付加保険料&手数料」としている。
(2) 投資利回りと保証利率の状況
2022年末の保険負債の平均保証利率は1.15%であり、ベースは必ずしも同一ではないが2010年の2.30%からの12年間で1.15%ポイント低下している。これに対して、投資利回りは2022年に2.82%で、2010年の4.30%からの11年間で1.48%ポイント低下している。その結果として、両者の差額としてのスプレッドは2010年の2.00%から、2021年の1.67%に0.33%ポイント低下している。
生命保険事業における投資利回りと保険負債保証利率の推移
一方で、2022年の新契約の保証利率が0.15%であるのに対して、再投資利回りは2.60%となっており、両者の差額としてのスプレッドは2.45%となった。Generaliは、新契約保証利率の水準を過去から着実に低下させてきていたが、保証利率の水準が2021年は0.18%ポイント、2022年は0.09%ポイント上昇している。再投資利回りが2.60%と大きく1.10%ポイント増加したことから、スプレッドも2.45%ポイントに大きく上昇した。
新契約保証利率と再投資利回りの推移
なお、生命保険・金融債務の保証利率別内訳は、以下の図表の通りになっている。

保証利率無しの負債の割合が着実に高まってきており、特に保証利率1%未満や保証利率無しの負債の割合がそれぞれ3割を超えてきている。
生命保険・金融債務の保証利率別内訳
(3) デュレーション・マッチングの状況
Generaliの2022年末の債券のデュレーションは8.5年となっている。固定利付資産と負債とのデュレーション・ギャップは、2020年には0.8年(負債のデュレーションが資産を0.8年上回る)だったが、2021年以降の数値は開示されていない。Generaliは、これまで資産のデュレーションの長期化を図ること等で、着実にデュレーション・ギャップの解消を図ってきていたが、2019年、2020年は負債のデュレーションが債券のデュレーションを上回った形になっていた。
資産と負債のデュレーション・ギャップ
(参考)Prudential
(1) 営業利益の構造
Prudentialの営業利益(operating profit)の構造は、次ページの図表の通りとなっている。

2021年から2022年にかけて、グループ全体の「スプレッド収入(Spread income)」は、金利が上昇した影響により、マージンが66bpsから72bpsに上昇したが、スプレッド収入は312百万ドルから1.6%減少(比較可能ベースでは2.7%増加、以下同様)して、307百万ドルとなった。

一方で、「手数料収入(Fee income)」は、345百万ドルから331百万ドルに4.1%減少(0.6%増加)し、「保険引受けマージン(Insurance margin)」が2,897百万ドルから3,219百万ドルに11.1%増加(15.2%増加)した。一方で、「費用(Expenses)」は3,175百万ドルから3,524百万ドルに11.0%増加(16.1%増加)した。これらの結果として、営業利益は3,709百万ユーロから3,846百万ユーロに3.7%増加(7.3%増加)した。
生命保険事業の営業利益の源泉の状況
(2) 保険負債のデュレーションの分布
Prudentialは、金利リスクへの対応のため、資産と負債のマッチング管理を行っているとしている。

保険負債のデュレーションの分布の状況は、以下の図表の通りとなっている。
生命保険事業の負債のデュレーション別分布
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中村 亮一

研究・専門分野

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