- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 米国経済 >
- 【12月米雇用統計】雇用の伸びは15年ぶりの高水準だが、相変わらず鈍い賃金の伸び
【要旨】
1.結果の概要:雇用者数の伸び、失業率ともに予想を上回る結果
1月9日、米国労働省(BLS)は12月の雇用統計を公表した。12月の非農業部門雇用者数は前月対比で+25.2万人の増加1(前月改定値:+35.3万人)となり、前月から伸びは鈍化したものの、市場予想の+24.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を上回った。
一方、失業率は5.6%(前月:5.8%、市場予想:5.7%)とこちらも前月から低下し、市場予想を上回る改善を示した。一方、労働参加率2は62.7%(前月:62.9%)と前月から0.2%低下した(詳細はPDFを参照)。
2.結果の評価:雇用者数は順調に増加しているものの、賃金の伸びは鈍化
12月の雇用増は、11ヵ月連続で20万人超のペースとなった。この結果、14年の月間平均増加数は+24.6万人となり、昨年の+19.4万人、一昨年の+18.6万人を大きく上回り、99年の+26.5万人に迫る15年ぶりの高水準となった。
雇用数の伸びは、前月が高水準だったこともあり、前月からは鈍化したものの、依然として好調を維持していると言える。
失業率は5.6%と前月から0.2%低下したほか、低下幅も予想を上回った。もっとも、注目される労働参加率は、労働力人口が前月比で▲27.3万人減少したことを反映し、62.7%と3ヵ月ぶりに前月から低下したことには注意が必要だ。12月の失業率低下は、労働市場からの退出に伴う影響が入っている可能性があり、その分は割り引いて考える必要があるだろう。
また、雇用者数が力強く増加しているのとは対照的に、12月の時間当たり賃金は前月比で減少に転じた。12月の時間当たり賃金は、24.57ドルと前月比▲0.2%の減少となり、市場予想(同+0.2%)のプラスに反してマイナスとなった。前月(11月)は、統計発表時点では前月比+0.4%と大幅な増加となっていたため、持続的な賃金上昇への期待が高まっていたが、前月の統計が+0.4%から+0.2%に下方修正されたほか、今月の伸びがマイナスに転じたことで、持続的な賃金上昇に対する期待はしぼんだ。更に、前年同月比でみると、12月は+1.7%と前月(+1.9%)から伸びが低下しているほか、ここに来て賃金の伸び鈍化が鮮明となっている。
このように、12月の雇用統計は、雇用増など決して悪いとは言えないものの、11月の雇用統計に比べると、雇用増ペースの鈍化だけでなく、労働参加率の上昇や賃金の下落など、見劣りのする内容だったと言える。今回の雇用統計をみて、FRBは今年半ばとされる政策金利の引き上げ時期を早めようとの判断にはならないだろう。
(2015年01月13日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1824
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/10/25 | 米労働市場の緩やかな減速が継続-景気が堅調を維持する中、失業率の大幅上昇は回避へ | 窪谷 浩 | Weekly エコノミスト・レター |
2024/10/21 | 米住宅着工・許可件数(24年9月)-着工件数は前月から小幅に減少も市場予想を上回る。戸建て住宅に回復の兆し | 窪谷 浩 | 経済・金融フラッシュ |
2024/10/07 | 米雇用統計(24年9月)-非農業部門雇用者数は前月比+25.4万人と市場予想の+15.0万人を大幅に上回る | 窪谷 浩 | 経済・金融フラッシュ |
2024/09/30 | 米個人所得・消費支出(24年8月)-年次改定に伴い貯蓄率は大幅上方修正 | 窪谷 浩 | 経済・金融フラッシュ |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年10月25日
金融システム、特に保険と年金基金のリスクと脆弱性に対する助言等の公表(欧州 2024秋)-EIOPA等の合同報告書の紹介 -
2024年10月25日
米労働市場の緩やかな減速が継続-景気が堅調を維持する中、失業率の大幅上昇は回避へ -
2024年10月25日
副業・兼業で広がるキャリア戦略~会社視点の働き方改革から生き方改革へ~ -
2024年10月24日
24年9月末時点の経過措置適用企業の進捗状況~経過措置の適用は2025年3月から順次終了~ -
2024年10月23日
円安再燃、1ドル160円に逆戻りするリスクは?~マーケット・カルテ11月号
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【【12月米雇用統計】雇用の伸びは15年ぶりの高水準だが、相変わらず鈍い賃金の伸び】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
【12月米雇用統計】雇用の伸びは15年ぶりの高水準だが、相変わらず鈍い賃金の伸びのレポート Topへ