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コラム
2009年04月30日
世界経済危機が各国の経済を直撃し、特に輸出企業など対外依存度の高い業種を筆頭にアジア企業の経営にも大きな圧力を与える中、各社はその対応に奮闘努力している。他方、直近の報道を見ると韓国の三星電子・LG電子の09年第1四半期業績が予想以上に好転し、タイの3月の産業景況感が改善するなどのポジティブなニュースも出て来ている。また、アジア主要市場の株価も欧米・日本に比べ比較的堅調さを示すなど、97-98年のアジア通貨・金融危機の際に、著名な企業グループや銀行がいくつも破綻に追い込まれた状況(例えば韓国の財閥企業や各国の大手銀行の破綻などが相次いだ)と比較すると、経営へのダメージの程度は(少なくとも現時点では)相対的に軽度に止まっており底堅いように見える(企業の倒産や失業者の増加状況もアジア危機当時に比べて緩やかなものになっている)。
もちろん今後の世界経済の行方や景気の底打ち時期は依然不透明であり、各国別の事情も異なる中で、確たることを論じるのは時期尚早であり、別途詳細に分析したいと考えているが、あえて現時点で、その主な理由を仮説的に推論すれば以下のようなポイントが指摘できよう。
第一に、企業のいわば生存基盤である各国のマクロ経済の観点から見ると、アジア危機ではアジア地域の諸国に直接関連する要因(資本勘定に関する流動性問題や金融・企業システムの脆弱性など)が大きかったのに対して、今回の世界経済危機は、米欧をその端緒とするものであり、サブプライム・ローン問題や複雑な証券化商品に対するアジアの金融機関や企業のエクスポージャーは相対的に少なくアジアにとって影響が二次的であるということが挙げられる。したがって、アジア各国の政府・中銀としては、財政・金融・対外収支面等での余力があり、景気刺激、流動性・外貨供給、預金保護などといった対応がより柔軟に行ないやすい状況にある。その中で危機に対するG20や域内の国際協調体制の下で各国が具体的な政策対応をタイムリーに行うべき責任も負っている。さらにアジア危機時の教訓から国際間の通貨スワップ協定の整備・強化も進んでおり、それが今回、韓国のウォン安が急速に進んだ局面で典型的に見られたようにセーフティーネットとして安全弁の役割を果たしているといえる。
第二に、金融システム・企業改革への国や企業の取り組みにより、その構造や体質の強化が前進してきていることが挙げられる。すなわち、金融機関に係る、銀行・ノンバンクの整理・統合、不良債権の縮小、公的資金注入、外国資本の導入による経営近代化など、企業部門における、負債負担の減少、不採算事業の整理・統合やリストラ等経費節減、事業の選択・集中による競争力の強化、情報開示に関する透明性の向上、外国人株主の増加、社外取締役・独立取締役制度の導入等にみられるコーポレート・ガバナンス面での改善などである。これら諸改革に関しては、韓国の財閥グループにおける総帥や少数の関係者による企業支配力に関する問題などに見られるようにさらに改善を進めるべき課題が残されているのは事実である。しかしながら、少なくとも今回の危機に関し現状を見る中で、上記のような取り組みがアジア企業の耐久力の強化についてプラスの貢献となっていると考えることは妥当であろう。
今後の企業経営は、世界経済情勢の動向によって大きく左右され、特に、新型インフルエンザの影響も新たに憂慮される経済成長率の一層の下ぶれリスク、企業の価格競争力に影響を与える為替動向や、アジア域内経済に大きな影響を有する中国の景気動向等が経営環境要因として注視すべき重要ポイントになろう。それらを踏まえつつ、上述した各国政府の対応や企業サイドの取り組み内容の観点を併せてアジア企業の動向を分析していきたい。
もちろん今後の世界経済の行方や景気の底打ち時期は依然不透明であり、各国別の事情も異なる中で、確たることを論じるのは時期尚早であり、別途詳細に分析したいと考えているが、あえて現時点で、その主な理由を仮説的に推論すれば以下のようなポイントが指摘できよう。
第一に、企業のいわば生存基盤である各国のマクロ経済の観点から見ると、アジア危機ではアジア地域の諸国に直接関連する要因(資本勘定に関する流動性問題や金融・企業システムの脆弱性など)が大きかったのに対して、今回の世界経済危機は、米欧をその端緒とするものであり、サブプライム・ローン問題や複雑な証券化商品に対するアジアの金融機関や企業のエクスポージャーは相対的に少なくアジアにとって影響が二次的であるということが挙げられる。したがって、アジア各国の政府・中銀としては、財政・金融・対外収支面等での余力があり、景気刺激、流動性・外貨供給、預金保護などといった対応がより柔軟に行ないやすい状況にある。その中で危機に対するG20や域内の国際協調体制の下で各国が具体的な政策対応をタイムリーに行うべき責任も負っている。さらにアジア危機時の教訓から国際間の通貨スワップ協定の整備・強化も進んでおり、それが今回、韓国のウォン安が急速に進んだ局面で典型的に見られたようにセーフティーネットとして安全弁の役割を果たしているといえる。
第二に、金融システム・企業改革への国や企業の取り組みにより、その構造や体質の強化が前進してきていることが挙げられる。すなわち、金融機関に係る、銀行・ノンバンクの整理・統合、不良債権の縮小、公的資金注入、外国資本の導入による経営近代化など、企業部門における、負債負担の減少、不採算事業の整理・統合やリストラ等経費節減、事業の選択・集中による競争力の強化、情報開示に関する透明性の向上、外国人株主の増加、社外取締役・独立取締役制度の導入等にみられるコーポレート・ガバナンス面での改善などである。これら諸改革に関しては、韓国の財閥グループにおける総帥や少数の関係者による企業支配力に関する問題などに見られるようにさらに改善を進めるべき課題が残されているのは事実である。しかしながら、少なくとも今回の危機に関し現状を見る中で、上記のような取り組みがアジア企業の耐久力の強化についてプラスの貢献となっていると考えることは妥当であろう。
今後の企業経営は、世界経済情勢の動向によって大きく左右され、特に、新型インフルエンザの影響も新たに憂慮される経済成長率の一層の下ぶれリスク、企業の価格競争力に影響を与える為替動向や、アジア域内経済に大きな影響を有する中国の景気動向等が経営環境要因として注視すべき重要ポイントになろう。それらを踏まえつつ、上述した各国政府の対応や企業サイドの取り組み内容の観点を併せてアジア企業の動向を分析していきたい。
(2009年04月30日「研究員の眼」)
平賀 富一
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