50910_ext_13_0.jpg

2014年10月21日開催

基調講演

「東京の都市力2020年の展望と課題」

講師 市川 宏雄 氏

文字サイズ

ご紹介にあずかりました市川でございます。本日は、「東京の都市力2020年の展望と課題」ということで、オリンピックまであと5年半ちょっとという状況ですが、東京にとってのキーワードになる2020年という年がどうなるかをお話しします。

まずは、確かに2020年が重要なのですが、2020年というのはある種の分岐点であって、その後の2025年、2030年はどうなるかも踏まえて考える必要があります。

東京はどう変わるか

ではまず、これから一体東京はどう変わるのかということですが、現在も既に少し変わりつつあります。

今から3年前の2011年、前政権の下で、東京を含めた主要都市の力を上げようということで、国際総合戦略特区が提案されたときの東京都の対応として、東京都は2011年の終わりにアジアヘッドクォーター特区という構想を出しました。

これは、当時の形で言えば、六本木から日本橋までの臨海を含んだ巨大な中心のエリア、それから新宿、渋谷、田町・品川、羽田空港の天空橋という都心の5カ所が対象になるということでした。この流れは、現在、国家戦略特区という形に名前を変えて、現在進行形になっています。

これを実行するためにはかなり大胆な規制緩和が必要だと言われていて、東京都が掲げる「世界で一番ビジネスのしやすい国際都市づくり特区」には三つの大きな柱があります。一つ目が「外国企業が日本企業とビジネスしやすい環境づくり」、二つ目が「24時間活動する国際都市としての環境整備」、三つ目が「外国人が暮らしやすい都市づくり」です。もちろん言葉としては分かるのですが、相当さまざまな規制緩和が必要になります。

「外国人が暮らしやすい都市づくり」では、「外国人向け医療環境の充実」という項目が書かれています。その中では「外国人患者対応指導等、外国人医師の『臨床修練制度』の対象の拡充(規制緩和)」とあります。

海外から人が来るけれども、英語しかしゃべれないので、医者は英語ができなければいけないということで、外国人の医者に東京の特区で診療させる、さらには看護師も同じで、外国人看護師が対応することを認めるという内容です。現在は全て禁止していますから、こういうことをやろうと思うと規制緩和が必要になります。

これだけではなく、いろいろなことが全てそれに関わります。新しい特区を具体的にやろうと思うと、今まで禁止されていたことが具体的に許可されなければならないのですが、政府なり自治体が「うん」と言えばいいという話かと思うと実は違っています。

これは医者を見れば明らかです。長い間の伝統的な自分たちのしきたり、テリトリーとしてある医師会に突然こういうものをはめ込むことが可能なのかどうか。もちろん、こういう流れの中でやらねばならないということを理解されているとは思うのですが、現実に、医師会が半年くらい前に日比谷公会堂に集まり、既にこれに対する反対を声明しています。

結果的には、現在、2国間協定があればできるなど、いろいろな足かせが加わりながら、少しずつ規制緩和していきますが、多くのことがその後どのくらい規制緩和できるか、それがないと特区がうまくいかないことは避けられない事実です。

国家戦略特区はまだ現在進行形で、これからどうするかというさまざまな思惑があります。昨年10月に国家戦略特区の話が出て、11月に内閣府が規制改革の検討方針を出しました。このときに、医療、雇用、教育、都市再生・まちづくり、農業、歴史的建築物の活用と6項目あったのですが、その中で東京に関わる部分をご紹介します。

医療については、「国際医療拠点における外国医師の診察、外国看護師の業務解禁」等々。それから東京で有名な病床規制です。東京の都心は、シンガポールのような医療ツーリズムをすればいいといって、いざやろうと思っても、病床規制がかかっていてベッドを増やせないのです。そういうことがたくさんあり、こういうことを全て容認していかなければならない等々がずっと付いています。

十数項目あるうちの七つについては、おのおのの改革検討をするに当たって形容詞が付いていて、「東京オリンピックの開催も追い風に、今後わが国に居住・滞在する外国人が急増することが見込まれる」から必要だと書いてあります。

あと5年半と少しですが、オリンピックの開催が多くの規制緩和のキーワードになっていることが分かります。この方針が出てから既に1年近く経っていて、いろいろなことが起きています。

この中で順調に動いているのが「4.都市再生・まちづくり」です。「(3)滞在施設の旅館業法の適用除外」ということで、1カ月以内の滞在については旅館業法が適用され、許可の無い施設には泊められなかったのですが、この規制を緩めるということが起きています。

ものによってかなり違うのですが、最も動かないのは雇用関係です。いろいろな省庁の関わりや今までの組み合わせがある中で、一体どこまでできるのかが国家戦略特区の現状で、これから半年から1年間で大体方向が見えてきます。どのくらいうまくいくかは今後の流れで決まっていくわけです。

そして、当初5地区だった東京都は国家戦略特区に対して9区やると言いました。これについては、指定されなかった区から猛反発が起こり、現在これをもう9区増やして18区にすることにしました。

23区中18区で、プラス多摩もあるかもしれませんから、東京のほとんどの地区で国家戦略特区が始動することが現在想定されています。ただ、どうなるかは、これからの流れです。

主要都市における都市の力(GPCI)

さて、先ほど司会の方からご紹介ありました都市の力についてご説明していきます。2008年から始めた「Global Power City Index(世界の都市総合力)」のランキングです。

これは、当時、日本発の都市ランキングはなかったので、始めるにあたってこの分野の権威であるロンドン大学のピーター・ホール先生、コロンビア大学のサスキア・サッセン先生、それからカリフォルニア大学バークレー校のリチャード・ベンダー先生等に入っていただきました。ピアレビューアーにはUCLAのアラン・スコット、オランダ自由大学のピーター・ネイカンプに入っていただいています。

ランキングの信用性・信頼性というのは誰がやっているかが非常に重要で、世界トップの人たちが入っているおかげで、このランキングは2008年に作ってからいきなり世界の四大ランキングに入っています。対象は各大陸の主要な都市で、全部で40都市あります。

10月中旬に発表された最新のGPCI2014の都市ランキングの結果では、トップがロンドン、2位がニューヨーク、3位がパリ、東京は4位です。この下に、第2グループであるシンガポール、ソウル以下20ほどの都市がつながっています。

これで分かることは、トップ4に入るロンドン、ニューヨーク、パリ、東京の第1グループと、躍進著しいアジアの主要都市、ヨーロッパの都市が続いている第2グループがあることで、これがこのランキングの特徴です。

注目すべきはロンドンとニューヨークです。今、ロンドンがどんどん力を付けています。実は2011年まではトップはニューヨークでした。2012年にオリンピック開催でロンドンは一気にトップに躍り出ました。その後、2013年、2014年とどんどんスコアを上げていて、今ニューヨークを引き離しています。

これは今回の東京オリンピックでの非常に重要なテーマで、成熟した国家で行うオリンピックの形式としては、ロンドンは最も東京に近いのです。かなりスコアが競ってるトップ4の中で、ロンドンはオリンピックを契機に一気にスコアを上げ、今まだ上がっています。ですから、オリンピック開催がどのくらい都市に力や影響を与えるかを考えるのであれば、ロンドンは至近のケースということになります。

あとはシンガポールが追い上げてきていますが、以前から東京はシンガポールに抜かれるのではないかという不安があるのですが、4位の東京と5位のシンガポールには相当なスコア差があって簡単には抜かれません。ですから、東京はむしろ4番ではいけない、これをどうするかということで、舛添都知事はオリンピックで1番にしたいとおっしゃっています。

また、現在、安倍首相が行っている国の政策の中にもこのランキングが入っていて、とにかく4番から3番に上げると書いてあります。

問題はどこまで上がるかであり、2番か1番にならないとオリンピック開催の意味がないということになります。

世界でも幾つかランキングがあるのですが、このランキングでは「都市の総合力」を見ていて、これは世界にあまり例がありませんでした。それまでは金融センターランキングやビジネスセンターランキングだったのですが、経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスという六つの主要な機能で都市の力を見るという作業をしました。使っている指標グループは二十幾つあり、合計で約70の指標が使われています。

もう一つ特徴的なことは、都市の機能だけではなく、都市を使っている人がどう見ているかを示すアクター別ランキングがあり、経営者から始まって生活者まで5種類の人々の視点で評価しています。この中で最も重要なのが経営者で、経営者が東京をどう見ているかが、今後の東京の都市の力に最も影響力を与える部分です。

70の指標のうち、経済には指標グループが六つあり、環境は三つですから経済機能は環境機能の倍の影響力があることになります。このように部分ごとで若干力の効き方が違いますが、一覧に載っているのが東京の現在の力を知る全体の指標と思っていただければいいと思います。

結果だけ申し上げますと、東京は総合スコアが4位ですが、経済ではランキングを作りはじめてからずっとトップを保っています。研究・開発はかつては1位でしたが、現在はニューヨークに抜かれて2位になっています。

それから文化・交流です。今回、それまで東京の弱点は文化・交流と交通・アクセスだったのですが、今年初めて文化・交流が前回より2位上がって6位になりました。オリンピック開催を発表すると、世界のどの都市でも、その後すぐに観光客なりお客さんが増えるのです。

東京でもそういう現象が起きていて、現在、日本への訪問者、東京への訪問者が急激に増えています。昨年は618万人までいったので、2011年の大震災発生前のレベルに戻ってさらに増えています。これが影響して文化・交流が上がっています。

居住は、東京だけではなく、ロンドンもニューヨークも低いのです。それは居住コスト等のお金が掛かることが原因ですが、例外はパリで、パリはトップです。

それから環境は、東京は昨年まで1位だったのですが、今年は少し落ちました。理由はリサイクルで、今までは紙のリサイクルだったのですが、今回は廃棄物リサイクルに変えた等々のことを行ったことと、他の都市が上がってきたということで、東京が強みだった環境が今回から強みではなくなっています。

最後に、一番課題なのが交通・アクセスです。もちろん、われわれは非常に便利な交通網を持っていますが、海外との接点から言うと圧倒的に遅れている状況にあります。

次に「アクター別ランキング」を見ていきます。今申し上げたように経済は、日本は世界トップなのですが、最も重要なのが経営者で、東京は9位です。上には、ロンドン、シンガポール、香港、北京、上海、ニューヨーク、パリ、すなわちトップ4の中の他の3都市にはかなわなくて、アジアではソウル以外の都市にかなわないのが現状です。

さまざまな日本への参入障害を含めた問題点があることが指摘されています。それが実際にデータに出てしまうわけです。他に「アクター別ランキング」で東京の弱いところとしては、ビジネスの成長性や表示性です。これはアジアの中でも同じで、東京の弱さがアジアの中でも際立っています。

今のことをまとめると、東京の強みと弱みが分かってきます。トップ4の中でなぜ東京が4位かということは考えれば分かります。

指標は全部で70ありますが、そのうち70以上の偏差値を取っているものが幾つあるかの一覧を見ると、ロンドンが16、ニューヨークが16、パリが11、東京は10です。トップ4の中での4位である原因の一つはここにあり、特に東京では際立っていい指標が少ないのです。

これは日本社会の価値観にも根付いている部分で簡単に答えは出ないのですが、際立っていいものをつくらないと国際競争力が上がらない典型的な例で、それがここに現れています。

偏差値で見た東京の弱みとして、経済の市場の魅力、法規制・リスク、それから文化・交流の集客資源があり、居住の特にコストが問題です。交通・アクセスについては国際交通ネットワークがいけません。東京は交通利便性はいいのですが、なぜ弱いかというと、タクシー代が世界で最も高い国だからということが効いています。

これらの弱点を克服すれば東京の力が上がることは分かっています。過去にシミュレーションを行っていて、このあたりの偏差値が全てロンドン並みかシンガポール並みに上がると、東京はトップに上がります。

都市競争力というのはあくまでもデータに基づいた話ですが、こうしたことが分かるわけです。これが今年発表したものです。

今後の成長性として、今回は六つ挙げてみます。一つは法人税率が良くなったこと、二つ目が数学・科学に関する学力が上がったこと、三つ目が海外からの訪問者が増えたことで、今後の可能性として政府の政策の必要性があります。

四つ目は完全失業率が良くなったこと、五つ目は再生可能エネルギーの比率が上がってきたこと、六つ目は国際線直行貨物便の就航都市が増えたことで、以上は現在いい状況です。

一方、東京のスコアで目立つ主な指標の悪さです。企業のレベルが下がってきて、世界トップ300以内の企業の数で今回初めて北京に抜かれました。また、世界トップ200大学以内の数も、上がっているのですが、他はもっと上がっているので良くありません。コンテンツ輸出額も他が上がっている中、日本は上がっていません。

このあたりが弱点となっています。今回の背後にあることがここで分かります。お手元の資料には、昨年、偏差値と弱みがどうだったかが載っています。

こういうことを見た上で、一体東京はどうなるかという話をしていきますが、その前に、初めに申し上げた都市ランキングの他に都心ランキングもやっていて、ご参考までにGPICI(Global Power Inner City Index)をご紹介します。データは少し古くて2010年のものです。

GPCIは六つの都市機能ですが、Inner Cityでは、違う形で六つのプロパティを使っています。バイタルプロパティ、カルチュラルプロパティ、インタラクティブプロパティ、ラグジュアリープロパティ、アメニティプロパティ、モビリティプロパティの六つを使って都心の力を見ています。

本質的にはGPCIと同じ考えなのですが、一つだけ違うことがあります。特に世界四大都市の問題は、都心でのコストが高いということです。これは経済学的に言えば、需要があるから高いということですから、この都心ランキングでは、そのことはネガティブではないと見ています。需要があるから高くなっているということを都市の力と考えている等々の読み替えをしています。

結論だけ申し上げますと、都心から5km圏では、GPCIではトップはロンドン、2位がニューヨーク、3位がパリ、4位が東京ですが、都心ランキングではトップがパリ、2位が東京、3位が香港です。10km圏になるとパリと東京がまた抜きん出てきて、3位がニューヨークになります。

われわれが知っている都心10km、環状6号線の内側を見れば、東京の力が半端ではないことが分かります。ロンドンもニューヨークもかないません。しかし、トップかというと実は違っていて、パリが上にいます。このあたりが今後の政策の立案・実行に大きな視点を与えると思っています。
 

【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

ページTopへ戻る