2016年04月01日

日銀短観(3月調査)~大企業製造業の景況感は悪化、先行きも悲観的

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. 日銀短観3月調査では、大企業製造業の業況判断D.I.が6と前回12月調査比で6ポイント低下し、2四半期ぶりの景況感悪化が示された。D.I.の水準は13年6月調査以来の低水準となる。また、大企業非製造業の業況判断D.I.も6四半期ぶりに低下した。大企業製造業では、新興国経済の減速や急激な円高進行を受けて事業環境が悪化し、景況感の悪化が鮮明になった。非製造業も国内消費の低迷がマインドの下方圧力となったが、建設・不動産業などに対するマイナス金利(金利低下)の恩恵が下支えになったとみられ、製造業よりも小幅の低下幅に留まった。中小企業も大企業同様、製造業の景況感悪化が非製造業よりも顕著になっている。
     
  2. 先行きの景況感については、企業規模や製造業・非製造業を問わず、幅広く悪化した。中国経済の減速や米利上げの影響など、海外経済の先行き不透明感は強い。円高への警戒もあり、製造業の悲観に繋がったと考えられる。また、非製造業では、中国経済の減速や円高によって訪日客需要が今後鈍化するリスクや、勢いを欠く賃上げ情勢が先行きへの懸念を高め、景況感を下押ししたようだ。景況感の牽引役が見えない状況にある。
     
  3. 15年度設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比8.0%増と、前回調査から小幅に上方修正された。例年、3月調査では計画が固まってくることに伴って、中小企業で上方修正される傾向が強く、今回も大企業における下方修正の影響を穴埋めした。一方、今回から公表された16年度の設備投資計画(同)は、前年比▲4.8%となった。例年3月調査の段階では前年割れでスタートする傾向が極めて強いが、今回の結果は例年よりもややマイナス幅が大きめとなった。先行きの不透明感が強いことが一部企業の様子見スタンスに繋がったものとみられる。
 

はじめに

足元の業況判断DIは悪化、先行きはさらに悪化(大企業)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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