2016年02月17日

【アジア・新興国】アジアの保険会社による不動産投資~日本国内で不動産投資を積極化する可能性も~

金融研究部 主任研究員   増宮 守

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■要旨

日本国内の不動産投資市場において、リーマンショック後に落ち込んでいた海外資金による取得が再び拡大してきた。その中でもアジア資金による取得が飛躍的に伸び、米国と並ぶ主な資金の出所になりつつある 。最近のアジア資金による取得の大規模な事例をみると、SWF(ソブリンウェルスファンド・政府系ファンド)による取得が目立つ。しかし、そもそも長期安定的にインカムゲインを見込める不動産投資と保険事業との親和性は高いといわれるが、アジアの保険会社による日本国内での不動産取得事例はほとんど確認されていない。今後、アジアの保険会社が日本国内で不動産投資を積極化する可能性を踏まえ、アジアの主要保険会社の不動産投資について確認する。

 
■目次

1|拡大するアジア資金による不動産投資
2|アジアの主要保険会社による不動産投資
3|今後の展望

 

1|拡大するアジア資金による不動産投資

1|拡大するアジア資金による不動産投資

日本国内の不動産投資市場において、リーマンショック後に落ち込んでいた海外資金による取得が再び拡大してきた。その中でも、2015年にはやや減少したものの、アジア資金による取得が飛躍的に伸び(図表-1)、米国と並ぶ主な資金の出所になりつつある1。最近のアジア資金による取得の大規模な事例をみると、2014年のシンガポールのGIC(シンガポール政府投資公社)による東京丸の内のパシフィックセンチュリープレイスの取得や、2015年初の中国のCIC(中国投資公司)による東京の目黒雅叙園の取得など、SWF(ソブリンウェルスファンド・政府系ファンド)による取得が目立つ。SWFの他では、REITなどの不動産投資ファンドや不動産会社が取得主体として名を連ねている。
しかし、そもそも長期安定的にインカムゲインを見込める不動産投資と保険事業との親和性は高いといわれるが、アジアの保険会社による日本国内での不動産取得事例はほとんど確認されていない。以下では、今後、アジアの保険会社が日本国内で不動産投資を積極化する可能性を踏まえ、アジアの主要保険会社の不動産投資について確認する。
 
図表-1 アジア資金による国内不動産取得額
 

2|アジアの主要保険会社による不動産投資

2|アジアの主要保険会社による不動産投資

アジア各国の保険市場は、全ての市場が日本市場に比べて小規模である(図表-2)。生保収入保険料の対GDP比の低さからも分かるように、未成熟な市場が多く、また、台湾や香港などの成熟度が高い市場も、経済規模が小さいことから保険市場規模は限定的となっている。
 
図表-2 アジア各国の生保収入保険料および対GDP比(2014年)
そのため、不動産投資市場で一定の影響力を持つ大規模な保険会社は、日本以外では、比較的市場規模の大きい中国、韓国、台湾の保険会社にほぼ限定される。
これらの保険市場規模上位4か国の主要な保険会社について、営業用を含む不動産全体および投資用不動産の総資産に占める比率を確認したところ、以下のように各国で異なる特徴がみられた(図表-3)。
図表-3 アジア主要保険会社の不動産保有額および総資産に占める比率
まず、台湾の保険会社の不動産比率の高さが際立っており、特に最大手の国泰人寿保険(キャセイライフ)の不動産保有額は、日本生命保険に匹敵する規模となっている。台湾市場の不動産ストックが日本市場よりはるかに小さいことを踏まえると、台湾の保険会社の不動産市場における存在感は圧倒的といえる。実際、台湾の他の不動産投資主体をみると、上場REITは小規模な5銘柄に止まっており、日本でみられる大規模な資産ポートフォリオを持つ大手不動産会社も存在しないなど、保険会社が最大の投資家として重要な役割を担っている。アジアの中で特に低金利環境が続く台湾では、運用利回りの確保が容易ではなく、保険会社は一定のインカムゲインが見込める不動産投資に、海外も含めて積極的である。また、過去に右肩上がりの価格推移を示してきた不動産に対し、投資対象として高い信頼を寄せているとの見方もできる。
その他、台湾ほど顕著ではないものの、韓国でも保険会社の資産配分における不動産比率が高い。特に投資用不動産の比率は、日本の保険会社の2倍近い水準となっている。韓国では、国民年金も不動産投資に積極的なように3、機関投資家が不動産を主たる運用対象と捉えており、台湾同様、海外不動産投資にも積極的である。また、財閥グループが膨大な不動産を保有するなか、サムソン生命保険のように、財閥グループの中核企業として、保険会社が韓国を代表する不動産投資家となっている。
一方、中国では、保険会社による不動産投資は2010年から開始したばかりで4、当然、資産配分における投資用不動産比率は低い。しかし、中国の大手保険会社は資産規模が巨大なため、既に営業用不動産も含めた保有不動産の規模は相当に大きい。また、不動産比率が2%を超えている中国太平洋保険のように、既に不動産投資に積極的な保険会社もみられる。
 
韓国国民年金公団は、2015年2Q時点で資産全体の3.7%、約1.8兆円を不動産に投資している。
4 2009年2月の「改正保険法」の承認、2010年7月の「保険資金運用管理暫定弁法」および8月の「保険資金の運用政策に関する問題を調整するための通知」の発表による。
 

3|今後の展望

3|今後の展望

中国やASEANなどのアジア新興国では、依然として保険市場は未成熟であるが、既に、中国では保険会社による不動産投資が始まっている。資産規模の大きい中国の大手保険会社は、不動産投資の拡大余地が大きく、また、既に一部の保険会社が積極的に不動産投資を実施している。
一方、保険市場の成熟度が比較的高い台湾や韓国では、保険会社による不動産投資は日本以上に積極的であり、海外不動産投資の事例も少なくない。
アジア各国の保険市場は、依然として規模が小さいものの(図表-2)、日本市場とは状況が異なり、高成長を継続している(図表-4)。これまで、アジアの保険会社による日本国内での不動産取得事例はほとんど確認されていないが、各社の不動産投資スタンスは、積極的あるいは今後拡大する方向といえる。各国の保険市場および各社の運用資金の拡大に伴い、今後、アジアの保険会社が日本国内で不動産投資を積極化する可能性は小さくないとみられる。
 
図表-4 2014年アジア各国の生保収入保険料伸び率(前年比)
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金融研究部   主任研究員

増宮 守 (ますみや まもる)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

(2016年02月17日「基礎研レター」)

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