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コラム
        2007年07月09日
    
                                            「貯蓄は三角、保険は四角」というフレーズは、保険の効用を分かりやすく説明するためのものである。一家の主たる稼ぎ手に万が一のことがあった場合の残された家族の生活資金を準備する手段としては、貯蓄と保険が考えられる。このうち、貯蓄を用いれば、準備資金は時の経過とともに徐々に増えていくので、その様子が「貯蓄は三角」という言葉で表現される。一方、保険は加入時からすぐに必要額が保障され、その後の保障金額も一定なので、その様子が「保険は四角」という言葉で表現されるのである。
それでは、保険では、なぜ加入時からすぐに必要額が保障されるのであろうか。それは、保険が加入者による共同備蓄制度であるからである。すなわち、個々の加入者が支払った保険料がプールされ、その中から保険事故が発生したケースに対して保険金が支払われるので、加入時からすぐに必要額が保障されるのである。
また、支払った保険料と受け取る保険金額に大きな差があることが大きな特徴である。たとえば、ある群団の死亡率が0.1%である場合、各人が1万円の保険料を支払ったとすれば、死亡保険金は1000万円になる(説明を簡単にするため、付加保険料は無視している)。このため、一家の稼ぎ手が若く、貯蓄額が十分でないような場合、保険の効用はたいへん大きなものになる。
ところが、純粋な生存保険を考えてみると、上記の例では、各人が1万円の保険料を支払ったとすれば、生存保険金は1万10円(1000万円÷999名)になるに過ぎない。実際は予定利率が適用されるので、生存保険金はもう少し大きくなるのであるが、死亡保険の場合に比べ、保険の効用は小さなものに感じられよう。これであれば、生存保険の場合は貯蓄と同じで「保険も三角」ではないかと言いたくなるかもしれない。
しかし、生存保険であっても、やはり「保険は四角」なのである。終身年金を考えてみよう。
今年の3月に厚生労働省から公表された第20回生命表によれば、60歳男子の平均余命は約22年である。したがって、老後の生活費の準備を考えるときに、22年分の生活費を賄うことを考えればよいと思われるかもしれない。
しかし、死亡年齢の確率分布を計算してみると、そんなに単純ではないことに気付かされる。計算結果によれば、60歳男子が75歳までに死亡する確率は25%、88歳までに死亡する確率は75%である。すなわち、60歳男子の半分が75歳から88歳の間に死亡するのである。これらは全体の半数に当たる人たちなので、平均的な人間と思えるであろう。
その平均的な人間に限っても、必要な老後の生活費は15年分から28年分まで(上限と下限の比率は1.87倍になる)の広がりを持っているのである。これを貯蓄で準備することは容易なことではないと思われる。しかし、終身年金であれば、共同備蓄なので、すべての人に対して必要十分な保障を提供することが可能になるのである。
また、今後、平均余命がさらに伸びる可能性もある。民間生命保険会社が今年の4月から責任準備金計算に使用している年金開始後契約用の標準生命表では、今後の死亡率改善効果を見込んでいるため、60歳男子の平均余命は約27年になっており、上述の第20回生命表より5年も長い。このようなケースであっても、終身年金であれば、必要十分な保障を提供することができる。このように、死亡保険であっても、生存保険であっても、「保険は四角」なのであるう。
            それでは、保険では、なぜ加入時からすぐに必要額が保障されるのであろうか。それは、保険が加入者による共同備蓄制度であるからである。すなわち、個々の加入者が支払った保険料がプールされ、その中から保険事故が発生したケースに対して保険金が支払われるので、加入時からすぐに必要額が保障されるのである。
また、支払った保険料と受け取る保険金額に大きな差があることが大きな特徴である。たとえば、ある群団の死亡率が0.1%である場合、各人が1万円の保険料を支払ったとすれば、死亡保険金は1000万円になる(説明を簡単にするため、付加保険料は無視している)。このため、一家の稼ぎ手が若く、貯蓄額が十分でないような場合、保険の効用はたいへん大きなものになる。
ところが、純粋な生存保険を考えてみると、上記の例では、各人が1万円の保険料を支払ったとすれば、生存保険金は1万10円(1000万円÷999名)になるに過ぎない。実際は予定利率が適用されるので、生存保険金はもう少し大きくなるのであるが、死亡保険の場合に比べ、保険の効用は小さなものに感じられよう。これであれば、生存保険の場合は貯蓄と同じで「保険も三角」ではないかと言いたくなるかもしれない。
しかし、生存保険であっても、やはり「保険は四角」なのである。終身年金を考えてみよう。
今年の3月に厚生労働省から公表された第20回生命表によれば、60歳男子の平均余命は約22年である。したがって、老後の生活費の準備を考えるときに、22年分の生活費を賄うことを考えればよいと思われるかもしれない。
しかし、死亡年齢の確率分布を計算してみると、そんなに単純ではないことに気付かされる。計算結果によれば、60歳男子が75歳までに死亡する確率は25%、88歳までに死亡する確率は75%である。すなわち、60歳男子の半分が75歳から88歳の間に死亡するのである。これらは全体の半数に当たる人たちなので、平均的な人間と思えるであろう。
その平均的な人間に限っても、必要な老後の生活費は15年分から28年分まで(上限と下限の比率は1.87倍になる)の広がりを持っているのである。これを貯蓄で準備することは容易なことではないと思われる。しかし、終身年金であれば、共同備蓄なので、すべての人に対して必要十分な保障を提供することが可能になるのである。
また、今後、平均余命がさらに伸びる可能性もある。民間生命保険会社が今年の4月から責任準備金計算に使用している年金開始後契約用の標準生命表では、今後の死亡率改善効果を見込んでいるため、60歳男子の平均余命は約27年になっており、上述の第20回生命表より5年も長い。このようなケースであっても、終身年金であれば、必要十分な保障を提供することができる。このように、死亡保険であっても、生存保険であっても、「保険は四角」なのであるう。
(2007年07月09日「研究員の眼」)
猪ノ口 勝徳
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