2018年02月13日

EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(5)-EIOPAの報告書2017の概要報告-

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6|SFCRに関するさらなる情報
1つのNSAのみが、ソルベンシーII指令第53条(1)に基づいて措置に関する情報を開示しない旨の許可が与えられた1つのケースを報告した。

大部分のNSAsは、SFCRにおいてソルベンシーII指令第54条(1)に基づく主要な(状況の)進展を示すいかなる会社も特定しなかった。

しかしながら、1つのケースが観察され、この会社は、TTPの2つの再計算と第2のMAポートフォリオに対する承認を公表した。この会社はまた、関連するリスクフリー金利の期間構造にVAを適用する承認を開示したが、その変更は重要ではないと考えて、詳細な分析は提供しなかった。これらの3つの開示は、独自のイニシアティブによって行われた。

7つの NSAsは、会社がSFCRにおいて、次の会計年度の最初の日に行われた調整部分の減少の見積りの影響を反映した個々のケースを観察した(技術的準備金の計算における移行措置の適用に関する情報の開示についての2016年12月21日のEIOPA意見-この見解は、会社のソルベンシー・ポジションに重要な影響を与える場合、次の会計年度の最初の日に行われた調整部分の減少による見積りの影響の開示を推奨している)。
 

3―市場やステークホルダーの反応

3―市場やステークホルダーの反応

1|市場やメディアの反応
(1)市場の反応
大部分のNSAsは、措置の影響を公衆に開示した後に、何らの市場反応も観察しなかった。残りの国々からは、以下の反応が観察されている。

・欧州全体のLTG措置の開示に関する一般的な考察を提供する記事をプレスする。

・いくつかの市場アナリストは、移行措置非適用でのソルベンシー比率のランキングを公表した。

大部分のNSAsは、LTG措置と株式リスク措置の影響について開示された情報が、保険契約者/投資家/市場アナリストによってどのように認識されたかに関する関連する証拠は報告しなかった。残りの国々のうち、2つのNSAsは、いくつかの市場アナリストは移行措置非適用のソルベンシー比率に焦点を当てていると言及している。別のNSAは、LTG措置の影響に関する情報は、市場アナリストによって極めて注目すべき関心レベルで認識されており、そのような措置の適用がソルベンシー・ポジションに大きな影響を及ぼす可能性のある状況を評価するために有用であると考えられている、と指摘した。

(2)報道内容
ソルベンシーIIデータの公衆開示に関する報道については、NSAsの大多数が、ソルベンシーIIデータの公衆開示について殆ど又は全く報道していなかった、と指摘した。報道が観察されたところでは、主なメッセージは次のとおりだった。

・一部のNSAsは、TTPが議論の主要な焦点であり、MAについても言及していると指摘した。

・1つのNSAは、観察された報道が、LTG措置及び株式リスク措置のない数字に焦点を当てていることを指摘した。他のNSAsは、報道が、LTG措置及び株式リスク措置を報告内に含めるか、又は措置の有無ベースの両方を報告したと述べた。

・記事やプレゼンテーションは、例えばプレゼンテーション、ページ数及び説明の点において、公表されたSFCRの不均質性について述べていた。

・一部の報道は、最初の報告期間に関して作成されたSFCRに対して批判的だった。

・その他の報道は、ドイツ、ルクセンブルグ、オランダ、英国などの管轄区域内の結果を分析した。

(3)メディアの反応
NSAsはまた、会社が資本要件を遵守するために措置に依存している場合に関して、メディアの関心のレベルについて尋ねられた。多くのNSAsは、いかなるローカル会社も資本要件を遵守するために措置には依存していないと指摘した。

NSAsがメディアのコメントを観察したところでは、大部分は、関心が低いか又は非常に低いと指摘した。

4つのNSAsが中程度の関心を観測した。4つの中程度の回答のうちの3つは、措置のいくつかのみに関するものだった。彼らは、TTPを関心事項として挙げ、1つのNSAは、MAがメディアの中程度の関心であると述べた。
2|ステークホルダーの反応
(1)調査概要
会社のSFCRにおけるLTG措置のプレゼンテーションに関するステークホルダーの認識を理解するために、格付機関、アクチュアリー協会、ジャーナリスト、コンサルティング会社、消費者協会及び投資家、アナリストを含む選択されたステークホルダーにアンケートを配布した。また、2017年9月には、措置の公衆開示について議論する目的でワークショップが開催された。ワークショップには、監査人、格付機関、アナリスト、ジャーナリスト、アクチュアリー協会、消費者保護協会の代表者が参加した。

(2)アンケートの結果
アンケートへの回答では、参加者は、特にソルベンシー・ポジションへの影響に関して、措置に関する透明性の重要性を強調した。全体として、第1回目の公表物は満足であるとみなされたが、情報の完全性と比較可能性に関する不十分さが確認された。いくつかのケースで、文脈の中でさらなる定性的な情報無しに定量的な情報を有するだけでは不十分であるということも言及された。

(3) ワークショップでの議論
ワークショップでは、いくつかのトピックが詳細に議論された。

例えば、SFCRsに含める必要がある詳細のレベルが議論された。消費者保護協会は、特にSFCRの要約において、保険契約者に対する透明性確保のために、措置の適用及び影響についてのさらなる(実例を使用した)説明を行うことを強く支持した。しかし、他の者は、情報が提供されたとしても、その情報が保険契約者によって理解可能ではない、ことを指摘した。したがって、彼らによれば、SFCRに含まれる情報は、情報提供される第三者が必要とする情報を反映すべきである、とした。格付機関は、ソルベンシーIIの複雑さとIFRS(国際財務報告基準)又はローカルGAAP(一般に(公正妥当と)認められた会計原則)との調整を考慮すると、会社のモデル及び資本化の完全な理解はとにかく困難であると説明した。

ステークホルダーは、措置に関する追加情報に関心を示し、SFCRにおける開示を提案した。

・MAが決定された基礎となる資産のポートフォリオに関する情報、ならびにMAの導出及び技術的準備金の評価に適用されるMAの最終的な規模に関する説明

・措置有及び措置無によるソルベンシー比率-定量テンプレートは、措置有及び措置無の自己資本とSCRのみを提供している。

・1年から翌年にかけての評価及びソルベンシー・ポジションの変化を追跡するための一般的な変化分析-この提案は、LTG措置又は株式リスク措置の適用のみに関連するものではない。

・感応度計算の結果。一部の会社が既にそのような感応度を計算している場合、会社間の比較可能性は限られている。比較可能性を保証するためにシナリオを標準化することが提案された。

・会社のソルベンシー・ポジションに対する措置の適用の影響をよりよく理解できるように、デュレーションミスマッチ又は会社が保険契約者に保証している金融保証のレベルに関する情報

・商品又は部門別の措置の適用の影響、又は既契約と新契約の措置の影響を別々に考慮すること。これにより、ステークホルダーは将来の会社の措置の妥当性を理解することができる。

・会社の流動性方針についてのVA情報に関して、市場の代表ポートフォリオの資産ではなく、会社の資産に基づいて計算された場合には、そのVAの規模

・ソルベンシー・ポジションに対するUFRの変更の影響を計算するというような補外の影響に関する情報

・経時的な移行措置の影響と会社がソルベンシー・ポジションを強化するために適用予定の措置

ステークホルダーは、報告書の読者が会社の行う事業と会社の事業に関する考え方をより良く把握できるように、LTG措置と株式リスク措置に関する定量的数値の次に、さらなる質的考察の必要性を表明した。

ステークホルダーは、彼らがLTG措置の影響の開示に対して、いかなる大規模な市場の反応も観測しなかったと言及した。

(4)EIOPA会合での議論
アンケートは、2017年9月5日、EIOPAの保険及び再保険ステークホルダーグループの会合でも議論された。グループからの主要なインプットは、措置の開示は、開示された情報の受信者が、その情報を文脈の中で捉えるために、措置を十分に理解したかどうかを考慮すべきである、ということだった。
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中村 亮一

研究・専門分野

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レポート紹介

【EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(5)-EIOPAの報告書2017の概要報告-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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