- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- アジア経済 >
- タイのプミポン国王陛下のご崩御の報に接して思うこと
コラム
2016年10月14日
![](https://www.nli-research.co.jp/files/topics/54102_ext_03_0.jpg?v=1477024161)
タイ王国のプミポン・アドゥンヤデート国王(ラマ9世)のご崩御の報に接し、取りあえずの感慨として以下の点を述べたい。
筆者とタイとの関係は、1984年に、外務省で、同国に対する経済協力(ODA)担当官になった時に始まり、以来、民間企業、シンクタンク(政治経済分析)、同国(ソブリン)や有力企業への格付けなど立場を変えながら継続している。100回を優に超える同国への訪問(訪泰)の度に、どのオフィス・店舗・レストラン・家庭にも国王のお写真が掲げられている。それは、同国王が、全国を行幸される中で、苦しみ困っている国民の声を聞き対策やプロジェクト等の支援など数多くの重要な活動をされ、大きな尊敬と親しみを受けられた名君であることを示している。
しかし、同国王が、在位70年の中で、ご即位の当初から上記のようなポジションであられたわけではない。米国でお生まれになった同国王は、1946年、スイス留学中に、兄君(ラマ8世)の突然のご崩御によって18歳の若さで急遽即位された。その頃タイにおける王権は必ずしも安定していなかったとも聞いている。その中で、プミポン国王は、国民各層との対話やアクションを通じて、国民各層の信頼を深め尊敬される存在になったと思われる。ちょうど、その過程は、貧しかったタイが、日本をはじめ海外からの投資や企業進出を積極的に受け入れつつ活用し、その典型例である自動車産業において「アジアのデトロイト」と呼ばれるような産業の重要な集積地としての地位を確立し、アセアン(東南アジア諸国連合)の有力国として、大きな経済発展を遂げ、プレゼンスを高めた時期と重なっている。つまり、国王は、タイの発展と共に歩まれ、その精神的支柱ともいうべき存在であったといえる。過去のクーデターの際に自らその収拾に乗り出されたこともあった。また、1997年のアジア通貨・金融危機以降、折に触れ、過熱傾向にある経済や消費行動のあり方について、より持続的で柔軟性のある社会となるよう「足るを知る経済」(セタキット・ポーピアン:Sufficiency Economy)の重要性を諭された。
同時に、同国王の在位期間に、日本とタイは各分野の各層で長く深い関係を築いており(企業分野を例に挙げれば、タイの日系現地法人数は、アセアン最多の2,318社、日本人派遣者数5,306名、現地従業員数545,589名に上っている:東洋経済新報社「2016年版 海外進出企業総覧(国別編)」)、わが国にとっても同国王の存在は大きなものとなっているといえよう。
筆者とタイとの関係は、1984年に、外務省で、同国に対する経済協力(ODA)担当官になった時に始まり、以来、民間企業、シンクタンク(政治経済分析)、同国(ソブリン)や有力企業への格付けなど立場を変えながら継続している。100回を優に超える同国への訪問(訪泰)の度に、どのオフィス・店舗・レストラン・家庭にも国王のお写真が掲げられている。それは、同国王が、全国を行幸される中で、苦しみ困っている国民の声を聞き対策やプロジェクト等の支援など数多くの重要な活動をされ、大きな尊敬と親しみを受けられた名君であることを示している。
しかし、同国王が、在位70年の中で、ご即位の当初から上記のようなポジションであられたわけではない。米国でお生まれになった同国王は、1946年、スイス留学中に、兄君(ラマ8世)の突然のご崩御によって18歳の若さで急遽即位された。その頃タイにおける王権は必ずしも安定していなかったとも聞いている。その中で、プミポン国王は、国民各層との対話やアクションを通じて、国民各層の信頼を深め尊敬される存在になったと思われる。ちょうど、その過程は、貧しかったタイが、日本をはじめ海外からの投資や企業進出を積極的に受け入れつつ活用し、その典型例である自動車産業において「アジアのデトロイト」と呼ばれるような産業の重要な集積地としての地位を確立し、アセアン(東南アジア諸国連合)の有力国として、大きな経済発展を遂げ、プレゼンスを高めた時期と重なっている。つまり、国王は、タイの発展と共に歩まれ、その精神的支柱ともいうべき存在であったといえる。過去のクーデターの際に自らその収拾に乗り出されたこともあった。また、1997年のアジア通貨・金融危機以降、折に触れ、過熱傾向にある経済や消費行動のあり方について、より持続的で柔軟性のある社会となるよう「足るを知る経済」(セタキット・ポーピアン:Sufficiency Economy)の重要性を諭された。
同時に、同国王の在位期間に、日本とタイは各分野の各層で長く深い関係を築いており(企業分野を例に挙げれば、タイの日系現地法人数は、アセアン最多の2,318社、日本人派遣者数5,306名、現地従業員数545,589名に上っている:東洋経済新報社「2016年版 海外進出企業総覧(国別編)」)、わが国にとっても同国王の存在は大きなものとなっているといえよう。
(2016年10月14日「研究員の眼」)
平賀 富一
研究・専門分野
平賀 富一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2018/01/30 | 若者の「内向き志向」は本当か?-潜在する動機・意欲を引き出す早期教育の必要性- | 平賀 富一 | 研究員の眼 |
2017/12/28 | 日本経済・社会を活性化する起業の促進のために最も必要なこと | 平賀 富一 | 研究員の眼 |
2017/11/30 | 世界のビジネスモデルを変革する起業家の出現を期待! | 平賀 富一 | 研究員の眼 |
2017/11/21 | CLM諸国の保険市場動向-最近の各市場における変化を中心として- | 平賀 富一 | 保険・年金フォーカス |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年07月26日
職場における温度、匂い、音等は、どういう人がシンドイと思っているのか -
2024年07月26日
米GDP(24年4-6月期)-前期比年率+2.8%と前期から大幅上昇、市場予想の+2.0%も大幅に上回る -
2024年07月26日
お金の流れでみる日本経済 -
2024年07月25日
消えた580兆円~住宅投資をしても残高の増加は限定的~日本の住宅投資はなぜ「資産化」しないのか~ -
2024年07月24日
中国経済の現状と注目点-好調は持続せず、不動産不況と貿易摩擦で弱り目に祟り目の中国経済
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【タイのプミポン国王陛下のご崩御の報に接して思うこと】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
タイのプミポン国王陛下のご崩御の報に接して思うことのレポート Topへ