2011年01月21日

長寿社会の中高年女性クライシス-多様なライフコースの選択実現に向けて

土堤内 昭雄

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■目次

はじめに――深刻になる高齢女性問題
1――中高年女性の健康リスク
2――中高年女性の雇用リスク
3――中高年女性の結婚リスク
4――多様なライフコースの選択実現に向けて
おわりに――新たな生活リスク社会への対応

■introduction

日本は世界の中で最も高齢化の進んだ国だ。高齢化とは長寿化であり、長生きできる社会でもある。日本人の平均寿命(2008年)は男性79.3年、女性86.1年で、女性は世界一の長寿を誇っている。しかし、平均寿命の伸びは必ずしも健康寿命の伸びを意味するわけではなく、そこには長寿に伴う健康・介護問題が浮上する。これら問題は性別に関わらず起こりうるがとりわけ女性にとって影響が大きい。
その理由は、65歳以上の高齢人口は男性1,205万人、女性1,617万人と女性は男性の1.3倍、75歳以上の後期高齢者では1.7倍、85歳以上では2.7倍と圧倒的に女性高齢者の数が多いからだ。また、75歳までの生存率(2008年)は男性71.2%に対し女性86.0%、85歳までは男性39.7%に対し女性64.9%に達している。このように長寿化がもたらす高齢社会は女性主体の社会ともいうことができ、そこには女性固有の課題も多い。例えば、女性の場合、男女の平均寿命の差により有配偶女性も高齢期には配偶者に先立たれ一人暮らしとなる可能性が高い。その結果、高齢期の住まいや公的年金などの安定した生活基盤の確保は女性にとってより長い間重要になる。しかし、日本の生活保護受給世帯率をみると全体では2.4%だが、高齢世帯は5.7%、女性高齢単身世帯は10%近くにも及んでいる。
内閣府「中高年者の高齢期への備えに関する調査」)によると、高齢期の生活に不安を感じている人は75.2%で、50代、60代ともに女性のほうが男性より不安を感じている割合が高い。中高年女性の不安の主な要因は「健康」(75.2%)、「介護」(58.6%)、「収入」(50.8%)となっており、これら高齢社会の課題が中高年女性に重くのしかかっていることがわかる。
1986年に男女雇用機会均等法が、1999年には男女共同参画基本法が施行され、一見、今日の女性のライフコースは就業、結婚、子どもの有無など多様な選択が可能になったように見える。しかし他方で、人生の中高年期における健康、雇用、結婚などの生活リスクは高まっているのではないだろうか。本稿ではこれら3つの生活リスクの視点から、将来の高齢社会に対する不安を抱えながら今後の高齢期に備える中高年女性が現在直面する中高年女性クライシスの現状とその背景を考える。

(2011年01月21日「ジェロントロジーレポート」)

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