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2025年11月07日
次回の利上げは一体いつか?~日銀金融政策を巡る材料点検
03-3512-1870
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1.トピック:次回の利上げは一体いつか?
日銀は10月29~30日に開催した金融政策決定会合(以下、MPM)で利上げを見送った。今年1月に0.5%へ利上げしてから、6会合連続で政策金利を据え置いたことになる。そして、それに先立つ10月初旬には緩和的な金融環境を志向すると目される高市新政権が発足し、日銀の金融政策を巡る大きな変数が加わった形になった。日銀の現状を確認し、次回利上げのタイミングについて考察する。
(利上げ見送りの理由)10月MPMでは、もともとタカ派的主張が目立つ高田委員と田村委員の2人が0.75%への利上げを主張したが、反対多数で否決された(同MPMについての詳細は5~7ページに記載)。この構図は9月MPMと同様であり、この間、政策委員会において早期の利上げに賛同する動きが広がらなかったことを意味している。
そして、利上げを見送った理由について、MPM後の植田総裁会見では二点が挙げられた。
一つは、「米国を中心とする海外経済や関税を巡る不確実性が依然として継続していること」だ。確かに、夏場以降に米国と主要国との関税交渉が合意に至り、不確実性は緩和したとはいえ、残る高関税が米国をはじめとする世界経済に与える影響には不透明感が残る。いまのところ、米国経済は底堅さを保っているものの、緩やかに留まっている関税の価格転嫁が今後大きく進んで景気が急減速する事態に陥らないか、もうしばらく推移を見極めたいのだろう。さらに、10月以降、政府閉鎖の影響によって公的な経済指標の殆どが公表されなくなり、米国経済の動向が把握しづらくなったことも利上げ見送りの判断に影響したはずだ。
また、日銀として公式には表明しづらいが、高市政権が発足して間がなく、政府との間で方針のすり合わせが出来ていなかったことも利上げ見送りの判断に影響した可能性が高い。制度上は、利上げに際して政府の賛同は不要だが、意思疎通が十分に行われていない段階で利上げに踏み切れば、もともと利上げに慎重とみられる高市政権の反発を招きかねない。その結果、政策委員の人事や日銀法の改正などを通じて政府からの圧力が強まる恐れがある。幸いにして、高市政権の発足を受け、市場では10月MPMの開始時点で利上げ見送り観測が既に浸透していた。このため、実際に見送っても市場の反応は限定的と見込まれたことも日銀の見送り判断を後押ししたと考えられる。
(次回利上げの見通し)
それでは、日銀はいつ次回の利上げに踏み切るのだろうか。
まず、大前提として、高市政権は「日銀の利上げ継続方針自体は許容する」と考えられる。
高市首相からは、首相就任以降、金融政策の方向性に関する具体的な言及はみられないものの、政府の諮問委員会にリフレ色の強いエコノミストを相次いで起用していることなどから、緩和的な金融環境を志向する姿勢は変わっていないと推測される。
しかしながら、仮に日銀が利上げ方針を撤回すれば、円安が急速に進んで輸入物価が押し上げられ、政府がまさに取り組もうとしている物価高対策の効果を相殺してしまう可能性が高い。高市政権の高い支持率の背景には物価高対策への期待があるだけに、円安の進行は支持率の低下を通じた政権の不安定化や政策の実行力低下につながりかねない。
また、米トランプ政権との関係上も高市政権が利上げ方針を否定するのは困難とみられる。ベッセント米財務長官はたびたび日銀の利上げを促すような発言をしてきた経緯があり、10月下旬にも「政府が日銀に政策運営の裁量を認める意思が、インフレ期待を安定させ、為替相場の過度な変動を防ぐ上で鍵となる」1と日本政府による利上げ抑制をけん制するようなSNS投稿を行っている。このように、米国政府としては、日銀による利上げの遅れが円安ドル高の主因と捉えているフシがあるため、それを阻害すれば、最悪の場合、報復関税を課せられかねない。
従って、高市政権としては、早急な利上げに対しては難色を示すものの、緩やかな利上げ方針は許容する可能性が高いと見ている。ただし、日銀には従来よりも緊密な意思疎通と利上げにあたっての明確なエビデンスの提示が求められそうだ。
それでは、日銀はいつ次回の利上げに踏み切るのだろうか。
まず、大前提として、高市政権は「日銀の利上げ継続方針自体は許容する」と考えられる。
高市首相からは、首相就任以降、金融政策の方向性に関する具体的な言及はみられないものの、政府の諮問委員会にリフレ色の強いエコノミストを相次いで起用していることなどから、緩和的な金融環境を志向する姿勢は変わっていないと推測される。
しかしながら、仮に日銀が利上げ方針を撤回すれば、円安が急速に進んで輸入物価が押し上げられ、政府がまさに取り組もうとしている物価高対策の効果を相殺してしまう可能性が高い。高市政権の高い支持率の背景には物価高対策への期待があるだけに、円安の進行は支持率の低下を通じた政権の不安定化や政策の実行力低下につながりかねない。
また、米トランプ政権との関係上も高市政権が利上げ方針を否定するのは困難とみられる。ベッセント米財務長官はたびたび日銀の利上げを促すような発言をしてきた経緯があり、10月下旬にも「政府が日銀に政策運営の裁量を認める意思が、インフレ期待を安定させ、為替相場の過度な変動を防ぐ上で鍵となる」1と日本政府による利上げ抑制をけん制するようなSNS投稿を行っている。このように、米国政府としては、日銀による利上げの遅れが円安ドル高の主因と捉えているフシがあるため、それを阻害すれば、最悪の場合、報復関税を課せられかねない。
従って、高市政権としては、早急な利上げに対しては難色を示すものの、緩やかな利上げ方針は許容する可能性が高いと見ている。ただし、日銀には従来よりも緊密な意思疎通と利上げにあたっての明確なエビデンスの提示が求められそうだ。
そのうえで、次回利上げを巡る注目ポイントとしては、「米国経済が関税等の影響で大きく減速しないか」、「来春闘の初動として、昨年ほどではないにせよ、高めの賃上げ率が保たれそうか」、「政府が利上げのタイミングについて難色を示さないか」という3点が挙げられる。
これを踏まえて考えると、メインシナリオとしては、次回利上げの時期を来年1月と予想する。この時期になれば、(1)米年末商戦を終えて米国などへの関税の影響が甚大なものにはならなさそうなことが見えてくるほか、(2)日銀支店長会議を経て国内企業においても関税の影響が限定的に留まっていることが把握可能になる。さらに、(3)春闘を間近に控えて、高めの賃上げ気運が継続していることも確認できると考えられるためだ。日銀としては、政府などに対して利上げに踏み切る根拠を最も示しやすいタイミングと言えるだろう。また、予算編成や税制改正といった年末の政治イベントを通過していることも利上げのハードルを下げる方向に寄与しそうだ。
これを踏まえて考えると、メインシナリオとしては、次回利上げの時期を来年1月と予想する。この時期になれば、(1)米年末商戦を終えて米国などへの関税の影響が甚大なものにはならなさそうなことが見えてくるほか、(2)日銀支店長会議を経て国内企業においても関税の影響が限定的に留まっていることが把握可能になる。さらに、(3)春闘を間近に控えて、高めの賃上げ気運が継続していることも確認できると考えられるためだ。日銀としては、政府などに対して利上げに踏み切る根拠を最も示しやすいタイミングと言えるだろう。また、予算編成や税制改正といった年末の政治イベントを通過していることも利上げのハードルを下げる方向に寄与しそうだ。
ちなみに、リスクシナリオとしては、前倒し・後ろ倒しのそれぞれのケースが考えられる。メインシナリオよりも前倒しになるケース(すなわち、12月に利上げを実施)としては、円安が進行する場合が挙げられる。仮に今後円安が加速して、昨年7月以来の円安水準にあたる1ドル160円到達が視野に入る状況になると、物価上昇の加速に対する世論や政府の警戒感が大きく高まり、日銀に対して円安抑制のための利上げを求める声が強まるはずだ。こうした声を受け、日銀は「円安によって物価の基調が押し上げられるリスクが高まった」として、利上げに踏み切る可能性が高い。また、供給制約などの影響によって、食料品の価格上昇が再び勢いを増してくる場合も同様だ。
逆に、メインシナリオよりも利上げが後ろ倒しになるケース(すなわち、3月以降に後ずれ)としては、関税の影響などから米国の景気が大きく減速する場合が挙げられる。その際にはFRBの大幅利下げ観測を受けてドル安(円高)がかなり進むことも利上げの障害となる。また、高市政権の利上げに対するハードルが思いのほか高く、より強いエビデンスが求められる場合も後ろ倒しの可能性が高まる。
現時点でのそれぞれの実現確率としては、メインシナリオ(1月利上げ)が50%、前倒しシナリオ(12月利上げ)が30%、後ろ倒しシナリオ(3月以降利上げ)が20%程度と見ている。
1 Bloomberg(2025年10月29日)「日本政府はインフレ抑制で日銀に裁量の余地を-ベッセント米財務長官」
(2025年11月07日「Weekly エコノミスト・レター」)
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