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2025年11月07日

次回の利上げは一体いつか?~日銀金融政策を巡る材料点検

経済研究部 主席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 日銀は10月MPMで6会合連続となる利上げ見送りを決定した。植田総裁会見では、見送りの理由として、「米国を中心とする海外経済や関税を巡る不確実性が継続していること」と「来春闘についての初動のモメンタムを確認したいこと」が挙げられた。また、日銀として公式には表明しづらいが、高市政権が発足して間がなく、政府との間で方針のすり合わせが出来ていなかったことも利上げ見送りの判断に影響した可能性が高い。
     
  2. それでは、日銀はいつ次回の利上げに踏み切るのだろうか。まず、大前提として、高市政権は「日銀の利上げ継続方針自体は許容する」と考えられる。仮に日銀が利上げ方針を撤回すれば、円安が急速に進んで輸入物価が押し上げられ、物価高対策の効果を相殺してしまう可能性が高い。また、利上げを求めているフシがある米トランプ政権との関係上も利上げ方針を否定するのは困難とみられる。メインシナリオとしては、次回利上げの時期を来年1月と予想する。この時期になれば、国内外における関税の影響が甚大なものにならなさそうなことが把握可能になるうえ、春闘を間近に控えて、高めの賃上げ気運が継続していることも確認できると考えられるためだ。日銀としては、政府などに対して利上げに踏み切る根拠を最も示しやすいタイミングと言えるだろう。
     
  3. ちなみに、メインシナリオよりも前倒しになるケース(12月に利上げ)としては、円安や食料品高が進行する場合が挙げられる。逆に、利上げが後ろ倒しになるケース(3月以降に後ずれ)としては、関税の影響などから米国の景気が大きく減速する場合や高市政権の利上げに対するハードルが思いのほか高い場合が挙げられる。現時点でのそれぞれの実現確率としては、メインシナリオ(1月利上げ)が50%、前倒しシナリオ(12月利上げ)が30%、後ろ倒しシナリオ(3月以降利上げ)が20%程度と見ている。

 
日米の政策金利
■目次

1.トピック:次回の利上げは一体いつか?
  (利上げ見送りの理由)
  (次回利上げの見通し)
2.日銀金融政策(10月)
  (日銀)現状維持
  (今後の予想)
3.金融市場(10月)の振り返りと予測表
  (10年国債利回り)
  (ドル円レート)
  (ユーロドルレート)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年11月07日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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