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2025年06月24日
欧州大手保険Gの内部モデルの適用状況について-2024年のSFCRからのリスクカテゴリ毎の標準式との差異説明の報告等-
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3―まとめ
今回のレポートでは、欧州大手保険グループ4社のSFCR(含むQRTs(定量的報告テンプレート))及びAegonのFCRの内容から、内部モデルに関して、標準式と各社で実際に使用された内部モデルとのリスクカテゴリ毎の差異の説明等について報告してきた。
1|内部モデルの適用状況
各社の内部モデルに共通の特徴を挙げると、以下の通りとなっている。
(1) 全体的
・標準式と内部モデルの違いについて、基本的には「標準式ではファクターベースのショック・シナリオを使用しているのに対して、内部モデルでは想定された分布に基づく各リスクドライバー(及びそれに対応する経済的損益の影響)と他のリスクドライバーへの依存をシミュレートしてリスク資本を導出する。」と整理されている。
・標準式のストレスの多くは国によって異ならないが、内部モデルのリスクドライバーは、通常、国やその他のリスクの属性によって異なる。
・内部モデルは、標準式ではカバーされない重要な定量化可能なリスクを反映している。
(2) リスクモジュール毎の主要な差異
リスクモジュール毎の主要な差異は、以下の通りとなっている。
・株式や金利のボラティリティについては、標準式では明示的にカバーされないが、内部モデルでは明示的にモデル化されている(株式インプライドボラティリティリスク、金利インプライドボラティリティリスクをカバーしている)。
・インフレーションリスクについても、標準式では明示的にカバーされないが、内部モデルでは明示的にモデル化されている。
・ソブリン債のスプレッドリスクについて、標準式では考慮されないが、内部モデルではモデル化され、全てのソブリン債のスプレッドリスクが考慮される。
・生命保険引受リスクについて、内部モデルでは、会社の経験や各国固有の要素も反映して、よりきめ細かく較正され、さらには、標準式ではカバーされないリスクもカバーしている。
・オペレーショナルリスクについて、標準式では保険料収入と技術的準備金に基づくファクターベースのアプローチが採用されるが、内部モデルではシナリオベースのアプローチが採用される。
・分散化について、内部モデルではリスク特性等に応じて、より広範囲での分散化を考慮している。例えば、標準式では地理的分散は明示的に認識されていないが、内部モデルでは地理的分散を考慮している。
このように各社の内部モデルの方法論は、基本的には共通している部分が多いが、これまで述べてきたように細部の手法等に関しては、必ずしも統一されているものではなく、各社の状況に応じて、独自のものが採用されている。
各社の内部モデルに共通の特徴を挙げると、以下の通りとなっている。
(1) 全体的
・標準式と内部モデルの違いについて、基本的には「標準式ではファクターベースのショック・シナリオを使用しているのに対して、内部モデルでは想定された分布に基づく各リスクドライバー(及びそれに対応する経済的損益の影響)と他のリスクドライバーへの依存をシミュレートしてリスク資本を導出する。」と整理されている。
・標準式のストレスの多くは国によって異ならないが、内部モデルのリスクドライバーは、通常、国やその他のリスクの属性によって異なる。
・内部モデルは、標準式ではカバーされない重要な定量化可能なリスクを反映している。
(2) リスクモジュール毎の主要な差異
リスクモジュール毎の主要な差異は、以下の通りとなっている。
・株式や金利のボラティリティについては、標準式では明示的にカバーされないが、内部モデルでは明示的にモデル化されている(株式インプライドボラティリティリスク、金利インプライドボラティリティリスクをカバーしている)。
・インフレーションリスクについても、標準式では明示的にカバーされないが、内部モデルでは明示的にモデル化されている。
・ソブリン債のスプレッドリスクについて、標準式では考慮されないが、内部モデルではモデル化され、全てのソブリン債のスプレッドリスクが考慮される。
・生命保険引受リスクについて、内部モデルでは、会社の経験や各国固有の要素も反映して、よりきめ細かく較正され、さらには、標準式ではカバーされないリスクもカバーしている。
・オペレーショナルリスクについて、標準式では保険料収入と技術的準備金に基づくファクターベースのアプローチが採用されるが、内部モデルではシナリオベースのアプローチが採用される。
・分散化について、内部モデルではリスク特性等に応じて、より広範囲での分散化を考慮している。例えば、標準式では地理的分散は明示的に認識されていないが、内部モデルでは地理的分散を考慮している。
このように各社の内部モデルの方法論は、基本的には共通している部分が多いが、これまで述べてきたように細部の手法等に関しては、必ずしも統一されているものではなく、各社の状況に応じて、独自のものが採用されている。
2|SFCRについての課題-内部モデルの説明という観点から-
これまでのSFCRに関するレポートにおいて、SFCRについては、監督当局と保険会社、さらには利用者である投資家や保険契約者等の間で、SFCRに求めているものが統一されておらず、このためSFCRの位置付けが必ずしも十分に明確化されていない面がある、と報告してきた。
SFCRが、ソルベンシーと財務状況に関して、基本的にはこれまでの財務関係の開示資料で提供されてきたものと比較して一定詳しい情報を提供しており、それらの情報が、欧州保険会社の財務状況等に関する投資家等の一般の利用者の理解をより深めることにつながってきていることは間違いない。その意味で、SFCRの存在意義は大きいものと思われる。
ただし、一方で、保険会社の立場から見て、SFCRの作成にかかる労力等を考慮した場合に、それに見合うものになっているのか、又は保険契約者や投資家等の立場から見て、現在の報告内容が本当に理解できる有益なものになっているのか、さらには投資家等が本当に必要としている情報が十分に開示されているのか、という意見があり、これらについて課題を抱えているのも事実である。
今回報告した「標準式と使用された内部モデルの差異」に関する事項の記述については、欧州大手保険グループ間でも記述内容のレベル等に差異が見られる。さらには、各社とも定性的事項の説明が中心で、各種の内部モデルの採用により、どの程度の影響が生まれたのかという定量的事項に関しては(十分な)説明がなされていない。こうした内容はもちろん監督当局には報告されているものと思われるが、外部に対しては公表されていない。加えて、内部モデルの定性的説明についても、一部でさらなる詳しい内容の説明を期待している向きにとっては若干期待外れに感じている部分も多いのではないかと思われる。もちろん、各社の内部モデルの詳細については、外部には公表できない部分もあることは十分に理解できるものの、各社の内部モデルの理解可能性を高め、他社との比較可能性を向上させていくためには、より一層の情報提供が求められる部分もあるものと思われる。ただし、これがSFCRの中で行われるべきものなのかとの意見があることも十分に理解できることであり、その意味でも改めて、SFCRの位置付けが問われてくることになるものと思われる。
これまでのSFCRに関するレポートにおいて、SFCRについては、監督当局と保険会社、さらには利用者である投資家や保険契約者等の間で、SFCRに求めているものが統一されておらず、このためSFCRの位置付けが必ずしも十分に明確化されていない面がある、と報告してきた。
SFCRが、ソルベンシーと財務状況に関して、基本的にはこれまでの財務関係の開示資料で提供されてきたものと比較して一定詳しい情報を提供しており、それらの情報が、欧州保険会社の財務状況等に関する投資家等の一般の利用者の理解をより深めることにつながってきていることは間違いない。その意味で、SFCRの存在意義は大きいものと思われる。
ただし、一方で、保険会社の立場から見て、SFCRの作成にかかる労力等を考慮した場合に、それに見合うものになっているのか、又は保険契約者や投資家等の立場から見て、現在の報告内容が本当に理解できる有益なものになっているのか、さらには投資家等が本当に必要としている情報が十分に開示されているのか、という意見があり、これらについて課題を抱えているのも事実である。
今回報告した「標準式と使用された内部モデルの差異」に関する事項の記述については、欧州大手保険グループ間でも記述内容のレベル等に差異が見られる。さらには、各社とも定性的事項の説明が中心で、各種の内部モデルの採用により、どの程度の影響が生まれたのかという定量的事項に関しては(十分な)説明がなされていない。こうした内容はもちろん監督当局には報告されているものと思われるが、外部に対しては公表されていない。加えて、内部モデルの定性的説明についても、一部でさらなる詳しい内容の説明を期待している向きにとっては若干期待外れに感じている部分も多いのではないかと思われる。もちろん、各社の内部モデルの詳細については、外部には公表できない部分もあることは十分に理解できるものの、各社の内部モデルの理解可能性を高め、他社との比較可能性を向上させていくためには、より一層の情報提供が求められる部分もあるものと思われる。ただし、これがSFCRの中で行われるべきものなのかとの意見があることも十分に理解できることであり、その意味でも改めて、SFCRの位置付けが問われてくることになるものと思われる。
3|内部モデルの調和について-EIOPAによる内部モデルの比較研究-
EIOPAは、2024年1月に「内部モデルの分散化に関する比較研究」1を公表して、現在のモデリング手法の概要を示すとともに、各国監督当局の作業を支援・補完することを目的とした様々な分散化指標を提供し、内部モデルの分散効果に関する総合的な見解を示している。
この比較研究は2019年末のデータに基づいて得られた主要な知見を要約したものである。
これによれば、内部モデルにおける分散は、少なくとも、(a)集約されるリスクの描写、(b)リスクプロファイル、(c)集約アプローチ、(d)集約アプローチを設定するための依存関係の決定方法、という4つの主要部分によって決定される。特に、後者の2つの実施においては標準式におけるアプローチ以外に複数の方法が存在している。異なるレベルの分散には異なるアプローチが使用できる。
なお、定量的な結果に基づいて、リスク集約のモデルが異なると、同様の事業ファイルを有する会社であっても資本要件に大きなばらつきが生じることが強調されている。
前回のレポートで報告したように、分散効果の状況については、各社によって情報提供のレベルも異なっており、一定程度詳しい定量的情報を提供している会社もある一方で、定型的なQRTにおける情報提供に留まっている会社もある。分散効果の定量的な影響はかなり大きなものがあるだけに、内部モデルにおける分散効果のためのモデリングについてはできる限りの説明が望まれる。
今回のソルベンシーIIの見直しにより、新たなSFCRは、(1)保険契約者・保険金受取人等向けの部分と(2)市場の専門家向けの部分に分割されることになるが、(2)の部分においては、内部モデルやそれによる分散効果の状況等のより詳しい説明が求められるものと思われる。
また、EIOPAは同じく2024年1月に、2016年末から2020年末までの5年間の各国監督当局の主要な調査結果に基づいた「内部モデルにおける損害保険引受リスクの比較研究」2を公表し、SCRの水準に影響を与える要因を複数の粒度で特定している。
これによると、収益性が同等の内部モデル適用保険会社でも資本集約度(保険料又は準備金1ユーロ当たりの資本要件)に顕著な違いがあり、これは主として保険料リスクの差異から生じている。標準式では将来利益はゼロと想定されているが、一部の内部モデル会社は、予想利益を保険料リスクの緩和要因と見なして、初期のSCR計算を減らしていた。
以上、ここまで紹介してきた内部モデルの差異については、会社間のアプローチの差異によるものだけでなく、国ごとのアプローチに起因するものもあるとされている。その意味では、内部モデルの比較研究等を通じての、可能な限りの調和を求める取組みは、ソルベンシーII適用の一貫性を高めるという観点からも、欧州の保険監督当局にとって大きな課題となっていている。
EIOPAは、2024年1月に「内部モデルの分散化に関する比較研究」1を公表して、現在のモデリング手法の概要を示すとともに、各国監督当局の作業を支援・補完することを目的とした様々な分散化指標を提供し、内部モデルの分散効果に関する総合的な見解を示している。
この比較研究は2019年末のデータに基づいて得られた主要な知見を要約したものである。
これによれば、内部モデルにおける分散は、少なくとも、(a)集約されるリスクの描写、(b)リスクプロファイル、(c)集約アプローチ、(d)集約アプローチを設定するための依存関係の決定方法、という4つの主要部分によって決定される。特に、後者の2つの実施においては標準式におけるアプローチ以外に複数の方法が存在している。異なるレベルの分散には異なるアプローチが使用できる。
なお、定量的な結果に基づいて、リスク集約のモデルが異なると、同様の事業ファイルを有する会社であっても資本要件に大きなばらつきが生じることが強調されている。
前回のレポートで報告したように、分散効果の状況については、各社によって情報提供のレベルも異なっており、一定程度詳しい定量的情報を提供している会社もある一方で、定型的なQRTにおける情報提供に留まっている会社もある。分散効果の定量的な影響はかなり大きなものがあるだけに、内部モデルにおける分散効果のためのモデリングについてはできる限りの説明が望まれる。
今回のソルベンシーIIの見直しにより、新たなSFCRは、(1)保険契約者・保険金受取人等向けの部分と(2)市場の専門家向けの部分に分割されることになるが、(2)の部分においては、内部モデルやそれによる分散効果の状況等のより詳しい説明が求められるものと思われる。
また、EIOPAは同じく2024年1月に、2016年末から2020年末までの5年間の各国監督当局の主要な調査結果に基づいた「内部モデルにおける損害保険引受リスクの比較研究」2を公表し、SCRの水準に影響を与える要因を複数の粒度で特定している。
これによると、収益性が同等の内部モデル適用保険会社でも資本集約度(保険料又は準備金1ユーロ当たりの資本要件)に顕著な違いがあり、これは主として保険料リスクの差異から生じている。標準式では将来利益はゼロと想定されているが、一部の内部モデル会社は、予想利益を保険料リスクの緩和要因と見なして、初期のSCR計算を減らしていた。
以上、ここまで紹介してきた内部モデルの差異については、会社間のアプローチの差異によるものだけでなく、国ごとのアプローチに起因するものもあるとされている。その意味では、内部モデルの比較研究等を通じての、可能な限りの調和を求める取組みは、ソルベンシーII適用の一貫性を高めるという観点からも、欧州の保険監督当局にとって大きな課題となっていている。
(参考)EIOPAによる内部モデルの比較研究
モデルが根本的なリスクを適切に反映しているかどうかを分析するために、EIOPAは各国の監督者とともに、ヨーロッパ全体の比較研究を実施している。これらは、個々の内部モデル分析と全国研究を補完するものとして提供される。
その目的は、内部モデルのアウトプットを効率的に比較し、モデリングアプローチの最新の概要を把握するとともに、監督ツールをさらに開発し、共通の監督プラクティスを促進することにある。
参加企業は、欧州のサンプルにおける相対的な位置を理解するために、個別のフィードバックセッションを通じて研究結果に関する予備的および最終的なフィードバックを受け取る。比較研究の結果は、すでにモデルの変更によるモデルの改善につながっている。比較研究は、新しい内部モデル申請の評価にも使用される。
EIOPAは現在、以下の4つの比較研究を実施している。
(1) 市場リスクと信用リスクのモデリング
市場リスクと信用リスクの比較調査(MCRCS)は、毎年実施され、事前定義された資産ポートフォリオの選択に対するモデリングアプローチを比較している。全体として、様々な市場リスクモデルと信用リスクモデルの結果を分析することにより、内部モデルの透明性を高めることを目的としている。
(2) 損害保険引受リスクモデリング
損害保険引受リスクモデリング研究(NLCS)は、損害保険引受リスクとその発生を5年間にわたって公正に評価することを目的としている。
(3) 分散化
分散化に関する研究は、現在の市場アプローチの概要を把握し、ベストエフォートベースで分散のレベルを分析および比較することを目的としている。
(4) 生命リスクモデリング
生命リスクモデリングに関する比較研究(LURCS)は2024年に始まっている。
内部モデルについては、IAIS(保険監督者国際機構)によるICS(保険資本基準)においても認められているが、EU以外の国・地域において、グローバルベースでどの程度内部モデルの適用が行われていくことになるのか、それが標準式によるものと比較してどの程度の影響があるものになっていくのか等、極めて興味深いものがある。また、グローバルに事業展開しているIAIGsがこれらの内部モデルの適用状況について、子会社の各国監督当局への説明や情報提供等を行うことを通じて、先行的に適用されてきた欧州大手の保険グループのアプローチ等が幅広く共有されるところとなって、グローバルベースで各国・地域のリスク管理の高度化に資するところも期待されるものと思われる。
いずれにしても、今後EUにおいては、EIOPA、各国監督当局、保険会社自身のレビュー等を通じて、新たなSFCRの位置付けがより一層明確化され、必要に応じて、内部モデルの適用状況や分散効果の状況等についてのさらなる説明の充実・見直し等が行われていき、その有用性がさらに高められていくことが期待される。
SFCRの公表によって開示されている情報等については、日本の保険会社等にとっても大変有益なものがあり、今後の日本における保険監督規制等を検討していく上でも、その情報開示の在り方やその内容等、大いに参考になるものがあると思われる。
SFCR等を通じた、内部モデルや分散効果の状況等の情報提供を巡る今後の見直しの動向に関しては、引き続き注視していくこととしたい。
モデルが根本的なリスクを適切に反映しているかどうかを分析するために、EIOPAは各国の監督者とともに、ヨーロッパ全体の比較研究を実施している。これらは、個々の内部モデル分析と全国研究を補完するものとして提供される。
その目的は、内部モデルのアウトプットを効率的に比較し、モデリングアプローチの最新の概要を把握するとともに、監督ツールをさらに開発し、共通の監督プラクティスを促進することにある。
参加企業は、欧州のサンプルにおける相対的な位置を理解するために、個別のフィードバックセッションを通じて研究結果に関する予備的および最終的なフィードバックを受け取る。比較研究の結果は、すでにモデルの変更によるモデルの改善につながっている。比較研究は、新しい内部モデル申請の評価にも使用される。
EIOPAは現在、以下の4つの比較研究を実施している。
(1) 市場リスクと信用リスクのモデリング
市場リスクと信用リスクの比較調査(MCRCS)は、毎年実施され、事前定義された資産ポートフォリオの選択に対するモデリングアプローチを比較している。全体として、様々な市場リスクモデルと信用リスクモデルの結果を分析することにより、内部モデルの透明性を高めることを目的としている。
(2) 損害保険引受リスクモデリング
損害保険引受リスクモデリング研究(NLCS)は、損害保険引受リスクとその発生を5年間にわたって公正に評価することを目的としている。
(3) 分散化
分散化に関する研究は、現在の市場アプローチの概要を把握し、ベストエフォートベースで分散のレベルを分析および比較することを目的としている。
(4) 生命リスクモデリング
生命リスクモデリングに関する比較研究(LURCS)は2024年に始まっている。
内部モデルについては、IAIS(保険監督者国際機構)によるICS(保険資本基準)においても認められているが、EU以外の国・地域において、グローバルベースでどの程度内部モデルの適用が行われていくことになるのか、それが標準式によるものと比較してどの程度の影響があるものになっていくのか等、極めて興味深いものがある。また、グローバルに事業展開しているIAIGsがこれらの内部モデルの適用状況について、子会社の各国監督当局への説明や情報提供等を行うことを通じて、先行的に適用されてきた欧州大手の保険グループのアプローチ等が幅広く共有されるところとなって、グローバルベースで各国・地域のリスク管理の高度化に資するところも期待されるものと思われる。
いずれにしても、今後EUにおいては、EIOPA、各国監督当局、保険会社自身のレビュー等を通じて、新たなSFCRの位置付けがより一層明確化され、必要に応じて、内部モデルの適用状況や分散効果の状況等についてのさらなる説明の充実・見直し等が行われていき、その有用性がさらに高められていくことが期待される。
SFCRの公表によって開示されている情報等については、日本の保険会社等にとっても大変有益なものがあり、今後の日本における保険監督規制等を検討していく上でも、その情報開示の在り方やその内容等、大いに参考になるものがあると思われる。
SFCR等を通じた、内部モデルや分散効果の状況等の情報提供を巡る今後の見直しの動向に関しては、引き続き注視していくこととしたい。
(2025年06月24日「基礎研レポート」)
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