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- 貸付の理論価格とポートフォリオ論的な位置付けについて
1992年05月01日
<要旨>
- 日本の生命保検会社の資産ポートフォリオの中で、貸付資産は特別の地位を占めてきた。欧米の生保会社では有価証券投資が主流であり、貸付資産がこれほどのウェイ卜を持つ国はさほど多くない。日本においても80年代の金融緩和期を経て貸付資産のウェイ卜は60~70%から40%弱へと下がってきたが、今回の株価低迷を経て再び安定収益資産として見直されつつある。
- 従来、貸付については非市場性資産であるため、その市場的な資産価値の評価やMPTの粋組みの中での議論はさほど行われてこなかった。ところが、証券化の進展による貸付資産の流動化や円-円スワップ市場の発展により、市場的評価が困難であった貸付資産についても理論的アプローチが可能となる環境が整備されつつある。
- この小論では、そのような貸付のハイテク化の現状を紹介するとともに、貸付資産のリスク・リターン構造を簡単なモデル・前提に基づいて分析し、資産ポートフォリオの中での位置づけについて若干の考察を行う。結論的には、生保の貸付資産は、長期貸付中心とはいうものの、変動貸付の割合がかなりあること、固定貸付でも分割弁済方式が少なくないことにより全体としては、かなり短期債に近い価格変動性を持つ。また、この前提では同ーの価格変動リスクの債券にくらべ超過リターンが存在するように見えるが、流動性その他のリスクを考慮するとかなり減殺される可能性も高く、正確な評価については今後の課題としたい。
(1992年05月01日「調査月報」)
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田中 周二
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