上記図表の1つ目、待機児童問題は長年メディア等でも取り上げられた問題であり、待機児童問題の解消にむけた取組みが出生率の向上につながるだろうことが示唆されている。
ただし、この結果は東京都以外の地方エリアでは、別の結果(出生率と待機児童問題はあまり関係がない)という分析結果となるエリアも見られているので、あくまでも「東京都ではそういう傾向である」ということを忘れてはならない。国による2016年4月1日時点での待機児童集計数値
6では、青森県、山形県、新潟県など実に9つの県が0であり、待機児童問題が見られていないことを付記しておきたい。つまり、本分析のようなエリアごと要因分析の大切さが、こういったところに現れる。
あるエリアでの少子化問題解決策が別のエリアでは全く意味がなく、一律の少子化政策がかえって混乱を招く原因ともなりかねないことに十分に留意したい。
上記図表の
医療サービスが充実するほど出生率が低くなる、というのは非常に違和感のある結果であろう。
しかしながら、医療サービスといってもその内容は多岐にわたり、時代は高齢化社会の逆ピラミッド構造(図表1)であることを考えると、需要と供給の関係で、むしろ出生率に寄与する医療サービス構造とはエリアの医療サービスが逆の高齢者向け医療サービス提供重視傾向になっているのではないか、という裏の要因があるという見方も出来なくもない。しかし、高齢者人口の比率は出生率に弱い影響しかもっていないことには留意したい(図表3)。次に、医療機関は利便性のよい立地に建設させることが多く、不動産価格の問題が発生するだろうとも考えられる。医療機関が多数あるエリアほど不動産価格が高く、上で示した出生率に正の関係のある(図表4、図表5-1)「1住宅あたりの延べ面積」が小さくなるのではないだろうか(裏の支配要因の存在)。
高校や幼稚園が多いエリア、も同じく義務教育とは異なる教育機関のために、利便性の高いエリアに立地する傾向から、医療サービス提供エリアと同じ「不動産価格問題」を持っているかもしれない、とも考えられるであろう。
6 厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(平成28 年4月1日)