2016年は仙台のオフィス市場にとって変化の年であった。日本IBMをはじめ、アマゾンジャパン、メルカリ、グルーポン・ジャパンなどのIT系企業が続々とカスタマーサポートセンターを中心とする拠点設立を表明したためだ。河北新報社によると、これら企業による採用人数は1,500人を超える見込みという
7。
仙台市の人口に関する最大の問題のひとつは、高校卒業後に大学や専門学校への入学で仙台市に流入してきた若者が定着せずに、就職やUターンなどで数年後には市外に転出してしまうことであった。現在ではわずかながら転入超過の状況にあるが、今後再び、震災前と同様に転出超過に転ずる可能性もある。今回のIT系企業の進出
8は、仙台における若者の就業と定着をもたらす可能性という点で、オフィス市場にとっても重要な意味を持つと思われる。
このように仙台のオフィス市場はIT系企業の進出で環境が大きく変化した。現在、こうしたIT系企業のさらなる進出への期待が高まっている。ただ、そのためには、新規の進出企業を受け入れるオフィスビルが不可欠である
9。1990年代半ば以降の仙台のオフィス市場では、新規供給が特定の期間に集中し、それに伴う供給過剰でその後は新規供給がストップするというサイクルが現在を含め2度発生しており(図表-18)、現時点では2018年以降の新規供給の予定がない(図表-11)。IT系企業の進出の流れを継続させ、仙台のオフィス市場が着実に成長するためにも、築古ビルの再開発を含め、安定した新規供給が続くことが望まれる。