また、同様に、
二人の子を出産・育休を2回利用し、第2子が3歳未満まで短時間勤務をした場合の生涯賃金は2億214万円で、退職金(1,856万円)を合わせた生涯所得は2億2,070万円である(ケースAより△3,748万円、△14.5%)。
第2子が小学校入学前まで短時間勤務をした場合の生涯賃金は1億9,378万円で、退職金(1,856万円)を合わせた生涯所得は2億1,234万円である(ケースAより△4,582万円、△17.7%)。つまり、育休を2年利用し、短時間勤務をした場合でも生涯所得は2億円を超える。ただし、本稿における推計では、育休からのすみやかな復職に加え、短時間勤務からのすみやかなフルタイム復帰も想定している。実際には、前述のような両立負担や評価、モチベーション等の課題がある。同時に、育休や短時間勤務等の両立支援制度の非利用者が感じる負担感や不公平感等への対応も課題だろう。
一方、
第1子出産後に退職し、第2子小学校入学時にフルタイムの非正規雇用者として再就職した場合の生涯賃金は9,332万円で、退職金(338万円)を合わせた生涯所得は9,670万円である(ケースAより△1億6,146万円、△62.5%)。また、同様に、日本で昔から多い、
パートで再就職した場合の生涯賃金は5,809万円で、退職金(338万円)を合わせた生涯所得は6,147万円である(ケースAより△1億9,669万円、△76.2%)。よって、過去の政府推計と同様、最新値で推計しても、
出産退職は2億円のマイナスとなる。
実は、これは労働者個人としてだけでなく、
企業側から見ても大きなマイナスである。就業を継続していれば生涯所得2億円を稼ぐ人材を確保できていたにも関わらず、両立環境の不整備等から、人材を手離すことになり、新たな採用・育成コストを要している。女性の出産離職は、職場環境だけが問題ではないが、両立環境の充実を図ることは、企業にとってもコストを抑える効果がある。
また、
大学卒業後、非正規雇用者として働き続けた場合の生涯所得は1億1,567万円であり、同一企業で働き続ける正規雇用者(ケースA)の半分以下である(△1億4,249万円)。また、賃金水準が高くないため、育休を2回利用しても、生涯所得はさほど変わらない(1億1,080万円、Bより△487万円)。非正規雇用者では、派遣・契約先企業の正規雇用者と同様の業務をする場合もあるが、賃金水準が低く(さらに各種手当にも恵まれにくい)、退職金もない場合が多いため、生涯所得には大きなひらきが出てしまう。これまでもレポートで指摘してきた通り
6、特に、若年層では不本意な理由で非正規雇用者として働く者が多い。今後、政府の「働き方改革」における同一労働同一賃金の議論が進み、非正規雇用者の待遇改善が実現されることに期待をしたい。
なお、参考のため、図表11にケース別に各歳別賃金の推移(生涯賃金)を示す。ケース別・各歳別に賃金の推移を見ると、どこでマイナスが生じ、どのあたりから追いつくのか、あるいは、差がひらいてしまうのかなどをイメージしやすい。