高齢化の最先進国として世界の先頭を歩む日本は、これからの未来をどのように創っていくべきか、模索の渦中にある。過日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン
1」では、これまでの3年間のアベノミクス
2の果実を踏まえ、今後は"日本が抱える少子高齢化という構造的問題に真正面から立ち向かう"ことを打ち出している。様々な高齢化課題が顕在化しているなか、それらの課題に日本がどのような解を導き出せるか世界が注目しているだけに、アベノミクスの第2ステージの取り組みは大いに期待されるところである。
その取り組みを左右する、引いては日本の未来のあり様を左右する大きな論点として「高齢者」と「地域」のことがある。今後も増え続ける「高齢者」が、活き活きとした高齢期をすごすことができるのか、一人ひとりの人生に関わる問題であると同時に、社会全体の活力や社会的コストにも影響を及ぼすことである。他方、少子高齢化に伴う様々な社会的課題の解決が「地域」に求められてきている。生活を支えあう基本単位の「家族」の形が変容するなか、"おひとりさま(単身世帯)"が増加の一途にあり、夫婦世帯であっても子供の数は減少傾向にある。家族で支えあう「家族力」が低下してきているなか、安心できる生涯をおくるためには、自助の強化や社会保障に頼るだけでは限界がある。子育てや福祉の問題を含めて、地域の中で助け合う"互助"のあり方が今日的に問われている。しかしながら、地域の実態を見れば、いつしか住民同士のつながりは希薄となり、社会的孤立、孤立死といった問題が顕在化している。住民同士で支えあえる地域に再生するにはどうすればよいか、その方策が待たれている。
両者を通じる一つの解は、"今後も増え続ける高齢者が地域の課題解決の担い手"になっていくことである。このことは決して目新しい話ではなく、すでに多くの地域でそうした活動(ボランティア活動等)が展開されてはいるが、改めて未来視点に立った地域における高齢者の活躍を導き出す方策が求められていると言える。
このようななか、今年度からそのことを推し進める国主導の取り組みが示された。本稿では、高齢者の就業実態を概観した後、高齢者雇用政策の経緯と新たな展開の概要を確認し、今後の地域における高齢者の多様な就業機会の確保・拡充に向けて考察していきたい。
1 2016年6月2日に閣議決定された。理想の一億総活躍社会の実現に向けては、新たな三本の矢である「名目GDP600兆円」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」の政策目標の達成と、三本の矢を貫く横断的課題とされる「働き方改革」、「生産性向上」に取り組んでいくことが必要とされている。
2 アベノミクス第1ステージにおける3本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)
2――高齢者の就業実態