1|中間とりまとめでは、地域を3つで区分
2つの検討会のうち、2040年検討会では、生産年齢人口が減少する2040年を想定しつつ、介護だけでなく、障害福祉や保育も含めた住民の暮らしを支援するための方策が模索されている。ここでの議論も必要に応じて、2027年度制度改正に反映されることが予想される。
この関係では、いわゆる「地域包括ケア」の目標年次だった2025年が到来したタイミングに加えて、医療制度改革との関連性を意識する必要がある。医療制度改革では、2025年をターゲットに見据え、病床再編などを目指す「地域医療構想」が展開されてきた
18が、その期限が到来したため、厚生労働省は目標年次を2040年に再設定する「ポスト地域医療構想」の検討を本格化させた。2024年12月には医師偏在是正を含めて、「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見」(以下、総合的な改革意見)が公表されており、2025年の通常国会で医療法等改正案が提出された(法案は衆院で継続審査扱い)。一方、地域医療構想で重視されている在宅医療に関しては、医療・介護連携などが問われる。
こうした背景の下、介護に関しても、2040年を想定した検討会が2025年1月に発足した。その後、2025年4月に公表された中間とりまとめでは図表4の通り、医療・介護連携の深化や介護予防の強化、テクノロジーの導入を含めた生産性の向上などの方向性が改めて示された。さらに、人材不足に関しては、都道府県単位で関係者が協議する「プラットフォーム」の構築も打ち出された。
ここで注目されるのは「サービス需要の変化に応じた提供体制の構築」という部分である。具体的には、人口動態やサービスの需要の変化に応じて、地域を「中山間・人口減少地域」「都市部」「一般市等」の3つに大別した上で、それぞれの論点と方向性を示した。
このうち、中山間・人口減少地域では、人員の配置基準の緩和に加えて、「包括的な評価の仕組み」「訪問・通所等サービス間の連携・柔軟化」「市町村基準によるサービス提供」「地域の介護を支える法人への支援」「社会福祉連携推進法人の活用促進」などの施策が列挙された。つまり、中山間・人口減少地域では、介護人材の不足が一層、深刻化するため、人員基準の緩和や事業者間の連携などを通じて、少ない人員でもサービスを提供できる体制の方向性が盛り込まれたわけだ。
もう少し細かく制度改正の方向性を論じると、ここで言う社会福祉連携推進法人とは、社会福祉法人が持ち株会社のような形態の下、「連携以上、統合未満」で関係性を強化する仕組み。2022年4月から順次、各地で法人が設立されており、2025年3月現在で30法人が自治体の認定を受けている。中間とりまとめでは、「事務の簡素化のみならず、制度的な要件の弾力化を図ることも検討すべき」という方向性が示された。
さらに、包括的な評価の部分では、訪問介護を特記しつつ、中山間・人口減少地域を対象に、「回数」を単位に算定している報酬体系の部分的な見直しが示唆された。具体的には、訪問介護では訪問先までの移動時間を少なくするほど、訪ねる回数を増やせるため、事業所は採算を確保しやすい。これに対し、中山間・人口減少地域など人口密度が薄い地域では、ヘルパーの移動時間が長くなるため、事業所の採算が悪化する。このため、2040年に人口が減少する地域では、訪問介護の存続が一層、危うくなる危険性がある。
そこで、中間とりまとめでは、「介護保険全体の報酬体系との整合性や自己負担の公平性等にも配慮しながら、介護報酬の中でこれに対応できる包括的な評価の仕組みを設けることの検討も」という考え方を盛り込んだ。つまり、回数ごとに評価する出来高払いではなく、例えば人口や対象者を配分基準とする包括払いの可能性である。
ただ、人員基準の弾力化について、介護保険部会の議論では「介護労働の配置数を減らすことにつながり、今でも足りないのに弾力化してどうなるのだろうかという懸念があります」
19、「ケアの質や職員の労働負担の観点からも慎重に検討する必要があるのではないか」
20などの慎重論が出ており、実行に移すためのハードルは高いと言えそうだ。