(2) テレワークの普及がオフィス需要に及ぼす影響
新型コロナウィルス感染拡大への対応で、東京ではテレワークが急速に普及した。都内企業のテレワーク実施率をみると、2023年4月以降、40%台で推移しており、2025年1月は45%となった。テレワーク実施率は、コロナウィルス感染拡大時と比べて低下したものの、一定の水準を維持している(図表-11)。
公益財団法人日本生産性本部「働く人の意識に関する調査」(2025年1月)によれば、「今後もテレワークを行いたいか」との質問に対し、テレワークを行いたい意向(「そう思う」と「どちらか言えばそう思う」の合計)は78%に達し、今後もテレワークを取り入れた働き方を希望する就業者は多いと言える。
一方、企業側でも人材確保と離職防止等の観点から、テレワークの導入にメリットを感じているようだ
4。ザイマックス不動産総合研究所「大都市圏オフィスワーカー調査2024」によれば、首都圏のオフィスワーカーに勤務形態をたずねた所、「ハイブリットワーク(50%)」との回答が最も多く、「完全出社(47%)」を上回っており、テレワークを取り入れたフレキシブルな働き方(ハイブリットワーク)が定着している。
こうした状況のもと、企業によるオフィスの利用形態も、ハイブリットワークに適した形に変更されつつある。森ビル「東京23 区オフィスニーズに関する調査」(以下、「森ビル調査」)によると、「フリーアドレス
5の導入状況」に関して、「既に導入している」との回答は、2022年以降、4割程度で推移している(図表-12)。テレワークの導入とともに、固定席の割合を減らしてフリーアドレスを導入する企業が多いようだ。
ザイマックス不動産総合研究所「大都市圏オフィス需要調査2024秋」によれば、「今後増設・新設したいスペース」について、「リモート会議用ブース・個室」(22.9%)との回答が最も多く、次いで「リフレッシュルーム」(14.5%)、「フリーアドレス席」(11.8%)、「集中するためのスペース」(11.7%)の順に多かった。リモート会議用ブースの設置など、テレワークへの対応とともに、フリーアドレス席やリフレッシュルーム等を充実させてほしいとの要望は多い模様だ。
また、テレワークが普及し「働き方の多様化」が進んだ結果、働く場所を柔軟に選択できることが求められている。イトーキ中央研究所「働く人の意識調査 働き方とオフィス2024」によれば、「サテライトオフィス
6の新設・増設」の必要性を感じているとの回答が2割強を占めた。
こうした「サテライトオフィス」を開設する際には、「レンタルオフィス
7」や「シェアオフィス
8」、「コワーキングスペース
9」等の「サードプレイスオフィス」を利用するケースが多い。
ザイマックス不動産総合研究所「フレキシブルオフィス市場調査2024」によれば、都心5区では928拠点の「サードプレイスオフィス」が立地している。テレワークを取り入れた働き方が定着するなか、「サードプレイスオフィス」市場の拡大が見込まれ、引き続き都心5区のオフィス需要を下支えすると考えられる。