具体的には、例えば「
角の三等分」については、以下の通りである。
角AOBを三等分することを考える。
(1) アルキメデスの螺旋と線分OBの交点をPとする。
(2) 線分OPを三等分する点をQ(即ち、OQはOPの3分の1)とする。
(3) 中心O、半径OQの円を描く。
(4) 中心Oの円と螺旋が交差する点をCとする。
(5) 角AOCは角AOBの3分の1となる。
(これは、アルキメデスの螺旋が極方程式r=aθで表されることから明らかである)
アルキメデスの螺旋は、現実の世界においても幅広く利用されている。
前回の研究員の眼で、レコードやCD、蚊取り線香等での例について紹介したが、さらに例えば以下のような応用がされている。
時計の「
バランススプリング(ひげぜんまい)」は、機械式時計のテンプ(調速樹)に取り付けられたバネで、時計が動いているときに、ひげぜんまいによってテンプが共振周波数で振動し、時計の歯車の回転速度、つまり針の動きの速度が制御される。調整レバーが取り付けられていることが多く、これを使用してバネの自由長を変更し、時計の速度を調整できる。このひげぜんまいのコイルはアルキメデスの螺旋となっている。
「
螺旋アンテナ」は、らせん状の形状をした無線周波数アンテナの一種で、広範囲の周波数で操作できる。周波数に依存しない対数螺旋アンテナもあるが、アルキメデスの螺旋アンテナが最も一般的である。螺旋アンテナは、巻き線によって小型化され、非常に小さな構造になっている。
空気や冷媒を圧縮する装置である「
スクロールコンプレッサー(スクロールポンプ、スクロール真空ポンプとも呼ばれる)」は、2つの交互に配置されたスクロールを使用して、液体や気体などの流体を汲み上げ、圧縮・加圧する。この羽根の形状がアルキメデスの螺旋やインボリュートやハイブリッド曲線になっている。多くの場合、スクロールの1つは固定され、もう1つは回転せずに偏心して軌道を描き、スクロール間の流体ポケットを捕捉して、汲み上げ、圧縮・加圧する。
「
スパイラルプラッター(spiral plater)」は、液体サンプルをスパイラルパターンでペトリ皿に分注するために使用される機器で、サンプル中の微生物の数を決定し、細菌濃度を定量化する等の目的で、食品、牛乳、乳製品、化粧品の微生物学的試験に広く使用されているが、ここでもアルキメデスの螺旋が使用されている。
また、神経疾患の診断において、患者にアルキメデスの螺旋を描くように頼む(曲線をなぞり、震えでどれだけずれるかを調べる)ことで、振戦(震え)を定量化することに役立っている。
1 ユークリッド幾何学の平行線公準(1つの直線が2つの直線に交わってできる同じ側の内角の和が2直角より小さいならば、この2つの直線を(限りなく)延長すると、2直角より小さい角のある側において交わる)が成り立たないとして成立する幾何学の総称
2 アルキメデスは、その論文「螺旋について」において、アルキメデスの螺旋を用いて、円を正方形にし、角を三等分する方法を示している。