「大阪オフィス市場」の現況と見通し(2025年)

2025年03月25日

(吉田 資) 不動産市場・不動産市況

■要旨
 
  • 大阪のオフィス市場は、大規模ビルの竣工が相次ぐなか、立地改善やオフィス環境のグレードアップを図るオフィス需要が新規供給を吸収し、空室率は概ね横ばいとなり、成約賃料は上昇基調である。本稿では、大阪のオフィス市況を概観した上で、2029年までの賃料予測を行った。
     
  • 大阪府の就業者は情報通信業等を中心に増加が続いている。また、雇用環境はオフィスワーカーの割合の高い「非製造業」で人手不足感がより強く、企業の採用意欲が高まっている。今後、大阪中心部のオフィスワーカー数は堅調に推移するものと考えられる。また、人材確保を目的として、従業員満足度の向上に寄与する設備のグレードアップやアメニティの充実が進むと考えられる。
     
  • 大阪でも、テレワークを取り入れたハイブリッドワークが広がりつつある。テレワークへの対応や、従業員間のコミュニケーション促進を目指したオフィス環境の整備が進むと考えられる。働き方の多様化を進むなか、「シェアオフィス」や「コワーキングスペース」等のサードプレイスオフィス市場の拡大も期待される。
     
  • また、万博の経済波及効果は約2.9兆円と試算され、オフィス需要に対してもプラスの効果が見込まれる。ただし、想定よりも、工期に遅れが生じる、あるいは来場者が大幅に下回る場合、上記の経済波及効果が未達となる懸念もあり、今後の動向に注視が必要である。
     
  • 以上の状況を踏まえると、都心部のオフィス需要は概ね底堅く推移すると見通しである。一方、新規供給について、2025年は淀屋橋駅周辺等で大規模ビルが竣工するが、2026年以降、新規供給は落ち着く見通しである。以上を鑑みると、今後、大阪の空室率はほぼ横ばいで推移すると予想する。
     
  • 大阪のオフィス成約賃料は、安定的な需給環境のもと上昇基調で推移する見通しである。2024年の賃料を100とした場合、2025年の賃料は「101」、2026年の賃料は「103」、2029年は「107」に上昇すると予想する。

■目次

1.はじめに
2.大阪オフィス市場の現況
  2-1.空室率および賃料の動向
  2-2.需給動向
  2-3.エリア別動向
3.大阪オフィス市場の見通し
  3-1.新規需要の見通し
  3-2.新規供給見通し
  3-3.賃料見通し

金融研究部   主任研究員

吉田 資(よしだ たすく)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴

【職歴】
 2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
 2018年 ニッセイ基礎研究所

【加入団体等】
 一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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