「横浜オフィス市場」の現況と見通し(2025年)

2025年03月31日

(吉田 資) 不動産市場・不動産市況

1.はじめに

横浜のオフィス市場では、空室率は大規模ビルの竣工に伴い一時的に上昇したが、あしもとでは改善に向かっており成約賃料も上昇に転じている。現在、みなとみらい21地区や関内地区を中心に複数の大規模開発計画が進行中であり、今後の需給バランスへの影響が注目される。本稿では、横浜のオフィス市況を概観した上で、2029年までの賃料予測を行う。

2.横浜オフィス市場の現況

2.横浜オフィス市場の現況

2-1.空室率および賃料の動向
三鬼商事によると、横浜市のオフィス空室率は、2024年に入り、大規模ビルの竣工に伴い9%台まで上昇したが、その後は順調に空室床の消化が進んでいる。2025年2月時点の空室率は6.8%(前年比+0.3ppt)となり、前年とほぼ同水準となった(図表-1)。

また、需給環境の改善に伴い、成約賃料は上昇基調で推移している。三幸エステート・ニッセイ基礎研究所「オフィスレント・インデックス」によれば、横浜市の成約賃料は、2021年上期をピークに下落傾向が続いていたが、2024年に入り上昇に転じ、2024年下期は前年比+7.7%となった(図表-2)。
賃料と空室率の関係を表した横浜市の賃料サイクル1は、2012年下期を起点に「空室率低下・賃料上昇」の局面から「空室率上昇・賃料上昇」の局面を経て、2022年上期より「空室率上昇・賃料下落」の局面へ移行したが、2024年下期には空室率が低下し、賃料も上昇に転じた(図表-3)。
 
1 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→④空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。
2-2.需給動向
三鬼商事によると、横浜ビジネス地区における2024年末の賃貸可能面積(総供給面積)は、92.8万坪となり、前年末から+3.3万坪増加した。

これに対して、賃貸面積(総需要面積)は、86.0万坪(前年比+2.6万坪)となった。この結果、横浜ビジネス地区の空室面積は6.8万坪(前年比+0.7万坪)となり前年から+12%増加した。(図表-4、5)。
2-3.エリア別動向
2024年末時点で賃貸可能面積が最も大きいエリアは「みなとみらい21地区(35.6%)」で、次いで「関内地区(23.6%)」、「横浜駅地区(23.5%)」、「新横浜地区(17.3%)」の順となっている(図表-6)。

「賃貸可能面積」は、「みなとみらい21地区」(前年比+2.5万坪)等で増加し、合計+3.3万坪となった。これに対して、テナントによる「賃貸面積」は、「みなとみらい21地区」(前年比+1.5万坪)や「新横浜地区」(同+0.6万坪)等で増加し、合計+2.6万坪となった。この結果、空室面積は、横浜ビジネス地区全体で+0.7万坪の増加となった(図表-7)。
エリア別の空室率(2025年2月末)をみると、「みなとみらい21地区10.8%(前年比+1.5ppt)」、「新横浜地区6.1%(同▲2.1ppt)」、「関内地区4.5%(同+0.2ppt)」、「横浜駅地区3.7%(同±0.0ppt)」となり、エリア間の格差が広がっている(図表-8 左図)。

また、エリア別の募集賃料(2025年2月時点)は全ての地区で上昇し、特に「関内地区(前年比+2.3%)」と「新横浜地区(同+2.2%)」の上昇率が大きくなった(図表-8右図)。

金融研究部   主任研究員

吉田 資(よしだ たすく)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴

【職歴】
 2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
 2018年 ニッセイ基礎研究所

【加入団体等】
 一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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