「大阪オフィス市場」の現況と見通し(2025年)

2025年03月25日

(吉田 資) 不動産市場・不動産市況

1.はじめに

大阪のオフィス市場は、大規模ビルの竣工が相次ぐなか、立地改善やオフィス環境のグレードアップを図るオフィス需要が新規供給を吸収し、空室率は概ね横ばいとなり、成約賃料は上昇基調である。本稿では、大阪のオフィス市況を概観した上で、2029年までの賃料予測を行う。

2.大阪オフィス市場の現況

2.大阪オフィス市場の現況

2-1.空室率および賃料の動向
三幸エステートによると、大阪市のオフィス空室率(2025年3月時点)は、4.1%(前年比+0.1ppt)となった(図表-1)。「JPタワー大阪」や「イノゲート大阪」、「グラングリーン大阪」などの大規模ビルが竣工し新規供給量が増加する一方、人材確保や従業員満足度の向上などを目的に、立地改善やオフィス環境のグレードアップを図る移転需要が増えており、空室率は前年と同水準に留まった。

空室率をビルの規模1別にみると、「大規模3.5%(前年比+0.4ppt)」と「大型3.8%(同+0.2ppt)」が上昇した一方、「中型5.4%(同▲0.6ppt)」と「小型6.3%(同▲0.3ppt)」は低下した(図表-2)。
需給バランスが均衡するなか、成約賃料は上昇基調で推移している。2024年下期の大阪市の成約賃料は、前期比▲1.2%、前年比+8.5%となった(図表-3)。
2024年の空室率と成約賃料の動き(前年比)を主要都市で比較すると、空室率は、都心5区、名古屋市、福岡市が低下、仙台市が概ね横ばい、大阪市と札幌市はやや上昇となった。また、成約賃料は、札幌市が概ね横ばい、その他都市は上昇となった(図表-4)。

賃料と空室率の関係を表した大阪市の賃料サイクル2は、2012年下期を起点に「空室率低下・賃料上昇」局面が続いていたが、2020年下期から「空室率上昇・賃料上昇」局面へ移行している(図表-5)。
 
1 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
2 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→④空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。
2-2.需給動向
三鬼商事によると、大阪ビジネス地区では、総ストックを表す賃貸可能面積は、「グラングリーン大阪」等、大型ビルが竣工したことに伴い、230.1万坪(前年比+7.9万坪)となり、前年末から大きく増加した。これに対して、テナントによる賃貸面積は、220.8万坪(前年比+7.7万坪)となった。この結果、大阪ビジネス地区の空室面積は、9.3万坪(前年比+0.2万坪)となり、前年から+2%増加した(図表-6、図表-7)
2-3.エリア別動向
2024年末時点で賃貸可能面積が最も大きいエリアは「梅田地区(36.2%)」で、次いで「淀屋橋・本町地区(30.2%)」、「船場地区(13.7%)」、「新大阪地区(10.0%)」、「心斎橋・難波地区(5.1%)」、「南森町地区(4.7%)」の順となっている(図表-8)。

賃貸可能面積は、「梅田地区」(前年比+6.8万坪)や「淀屋橋・本町地区」(同+0.8万坪)等で増加し、全体で+7.9万坪増加した。これに対して、賃貸面積は、「梅田地区(同+6.2千坪)」や「新大阪地区(同+0.7万坪)」等で増加し、全体で+7.7万坪増加した。この結果、空室面積は全体で+0.2万坪の増加となった(図表-9)。
エリア別の空室率(2024年12月末)をみると、「梅田地区4.4%(前年比+0.4ppt)」と「淀屋橋・本町地区4.1%(同+0.4ppt)」が前年から上昇した一方、「新大阪地区2.9%(同▲2.0ppt)」、「心斎橋・難波地区2.0%(同▲1.0ppt)」、「南森町地区3.9%(同▲0.5ppt)」、「船場地区4.5%(同▲0.4ppt)」は低下した(図表-10 左図)。

また、エリア別の募集賃料(2024年12月時点)は、「南森町地区(前年比▲2.0%)」を除く、全てのエリアで上昇した。特に、「心斎橋・難波地区(同+2.2%)」と「淀屋橋・本町地区(同+2.1%)」の上昇率が大きくなった(図表-10 右図)。

金融研究部   主任研究員

吉田 資(よしだ たすく)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴

【職歴】
 2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
 2018年 ニッセイ基礎研究所

【加入団体等】
 一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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