(3)スタートアップ企業の動向からみるオフィス需要
仙台市は東日本大震災以降、起業家支援に力を入れている。2014年度から2019年度までの成長戦略「仙台経済成長デザイン-質的拡大による新たな成長」において、「2017年までに新規開業率日本一」という数値目標を掲げた。2023年までの経済成長戦略「仙台市経済戦略2023~豊かさを実感できる仙台・東北を目指して~」においても、重点プロジェクトとして起業支援を挙げている。また、仙台市は、2020 年7月に内閣府が推進する「スタートアップ・エコシステム拠点都市」において、「推進拠点都市」に選定されている。
こうした起業支援策に後押しされ、スタートアップ企業は着実に増加している。フォースタートアップスの調査によれば、宮城県のスタートアップ企業は、5年間で5割増えて、2023年6月時点で126社となった
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大学発スタートアップ企業も増加している。経済産業省「令和5年度大学発ベンチャー実態等調査」によれば、大学別大学発ベンチャー数において、東北大学は第6位(199社・前年度+20社)であった。また、東北大学は、2024年6月に、政府が創設した10兆円規模の大学ファンドで支援する「国際卓越研究大」の認定基準を満たしたと発表された。選定では、成長分野である半導体
9や材料科学、バイオ分野などの研究力を伸ばし、大学発スタートアップ企業を1,500社に増やす計画等が評価された
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また、東北大学は、2024年4月に三井不動産と共同で、青葉山新キャンパスを中心に企業や研究者を集積し、イノベーション創出をめざす構想を発表した。同キャンパスに約4万㎡の「サイエンスパークゾーン」を整備し、2024年4月に2棟の研究施設の運用を開始し、2027年に3棟目の施設を整備する計画で、産学連携の拠点等にするとのことである
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仙台市は、2024年3月に「仙台経済COMPASS~2030 年の仙台を見据えた羅針盤」を策定し、重点取組の1つとして、「世界にインパクトを与えるスタートアップの育成」を挙げている。
こうした支援策に後押しされ、今後も仙台市でスタートアップ企業が増えると見込まれる。オフィス需要の新たな担い手となる可能性もあり、今後の動向を注視したい。
8 日本経済新聞「スタートアップ、仙台市がけん引 東北全体を支援対象に」(2023年10月13日)
9 台湾の半導体大手PSMCは、2023年3月にSBIホールディングスと合弁で宮城県大衡村に半導体工場を設立すると発表した。2024年後半の着工を目指し、投資額は宮城県では過去最大の8,000億円に上る。
朝日新聞「大衡の半導体工場「来年後半の着工めざす」 準備会社、県・村と協定」(2023年11月15日)
10 日本経済新聞「10兆円大学ファンド、東北大学はなぜ選ばれた?」(2024年6月14日)
11 日本経済新聞「東北大と三井不動産、企業・研究者集積で連携 半導体など」(2024年4月26日)