連分数の実用的な応用例として、暦の策定における閏年の設定がある。
閏年は、太陽年(平均太陽年)の1年365.24218896日(天文年鑑2023による)と365日とのずれを解消するために設定されている。現在使用されている「グレゴリオ暦」では、「西暦が4で割り切れる年を閏年とするが、100で割り切れる年は対象外としつつ、400で割り切れる年は閏年とする」というルールになっており、これにより400年に97回の閏年が設定されることになっている(なお、グレゴリオ暦以前の「ユリウス暦」では「西暦が4で割り切れる年を閏年」としていた)。
ここで、連分数展開によれば、
0.24218896=〔0;4,7,1,3,41,1,1…..〕
となることから、これに基づく近似分数は、順に 1/4、7/29、8/33、31/128・・・ となる。
ここで、
8/33=0.24242424 (0.24218896 との差は0.00023528)
97/400=0.2425 (0.24218896 との差は0.00031104)
であることから、閏年を33年に8回とすれば、現行ルールの400年に97回よりもより太陽年に近いものになる
3。
さらに、
31/128=0.2421875 (0.24218896 との差は▲0.00000146)
であることから、「西暦が4で割り切れる年を閏年とするが、128で割り切れる年は対象外とする」というルールにすれば、より太陽年に近いものになる
4。
実は、太陽年は少しずつ短くなっている。グレゴリオ暦が議論され始めていた1560年頃の太陽年は約365.2422日であった。これにより、現行のグレゴリオ暦によると、太陽年との差は1年で現行でも約26.8秒程度(さらに太陽年は1年間で約0.05秒短くなっていくので差は拡がっていく)になる。その意味でも、「31/128」に基づくルールの方がより実態に対応したものといえることにもなる。
ただし、簡便性・わかりやすさという観点からは、(現行ルールでも十分に簡便とはいえないかもしれないが)現行ルールに及ばないということなのだろう。
3 ペルシャの天文学者で数学者でもあるウマル・ハイヤーム(1048-1131)が作成した「ジャラーリー暦」がこの方式を採用しており、現在のイラン暦の元となった。
4 現在の「イラン暦」(イランを中心にペルシャ語圏で使われている暦)では、この方式が採用されている。