所有者不明土地への諸対策 (1)-土地の国庫への帰属の承認制度

2021年06月01日

(松澤 登) 保険会社経営

■要旨

所有者不明土地の問題が深刻化している。少子高齢化の進展や地方の過疎化に伴い、放棄される土地が増加し、あるいは相続による登記名義の変更が適切に行われないためである。
 
2021年の第204回通常国会では、民法等の改正とともに、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(以下、国庫帰属法)の制定が行われ、相続の発生した土地について、国庫に帰属する制度が認められた。制度は公布から2年以内の政令で定める日から施行される。
 
国庫帰属法によれば、相続又は遺贈により土地を取得した相続人は、法務大臣に土地を国庫帰属する承認をするよう申請をすることができる。ただし、申請にあたっては土地に建物が立っていない、あるいは協会が画定しているなどの要件を満たす必要がある。
 
申請を受けた法務大臣(実際には法務局)が、土地に容易に処分できない廃棄物などがあるようなケースを除いて承認を行うこととなる。承認を受けた相続人は所定の負担金を納付することで土地の所有権が相続人から国へ承継されることになる。
 
国庫帰属の要件は厳しい。どの程度か供養されるかは今後見ていく必要がある。

■目次

1――はじめに
2――問題の所在
  1|土地所有権とはどのようなものか
  2|土地所有権は放棄できるのか
  3|法制審議会での議論
3――土地の国庫への帰属の承認制度
  1|対象となるケース
  2|承認申請の要件
  3|承認拒否事由
  4|承認後の手続き
4――おわりに

保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登(まつざわ のぼる)

研究領域:保険

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴

【職歴】
 1985年 日本生命保険相互会社入社
 2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
 2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
 2018年4月 取締役保険研究部研究理事
 2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
 2024年4月より現職

【加入団体等】
 東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
 東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
 大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
 金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
 日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

【著書】
 『はじめて学ぶ少額短期保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2024年02月

 『Q&Aで読み解く保険業法』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2022年07月

 『はじめて学ぶ生命保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2021年05月

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