経済予測はどのくらいはずれるのか(1)~政府経済見通しの精度を検証する~

2019年12月19日

(斎藤 太郎) 日本経済

■要旨

政府は2020年度の経済見通しを閣議了解し、実質GDP成長率の見通しを1.4%とした。政府経済見通しは楽観的と言われることが多いが、2020年度の成長率見通しは民間調査機関の平均(0.5%)を1%近く上回り、最大値(1.0%)よりもさらに高い(民間調査機関の予測はESPフォーキャスト調査)。
 
政府経済見通しの予測精度はあまり高くない。実質GDP成長率の予測値と実績値の誤差は、1980~2018年度の39年間の平均で▲0.66%(実績値-予測値)、予測誤差の絶対値を平均した平均絶対誤差は1.43%であった。実績値が予測値から下振れたことが38回中24回(62%)で、過去のデータからも政府経済見通しが楽観的であることが確認された。
 
平均絶対誤差は2010年代に入り縮小傾向にあるが、平均誤差のマイナス幅は逆に拡大しており、実績値が予測値から下振れする傾向は変わっていない。政府見通しの予測精度が向上しているとは言い切れない。
 
民間調査機関の予測誤差は政府見通しよりも小さい。政府と民間で予測誤差の小さい方を勝ちとして各年度の勝敗をカウントすると、1980~2018年度の39年間で民間の26勝13敗となった。企業の経営計画、資産運用計画などを策定する際の前提として経済成長率の想定が必要な場合には、民間調査機関の予測値を用いたほうが無難である。

■目次

1――はじめに
2――楽観的な政府見通し
3――予測精度は向上しているのか
4――需要項目別の予測誤差
5――民間調査機関との比較
6――まとめ

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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