5|7つの項目について、指数を作成する
以下の(1)~(7)では、ポイントを絞って、項目別に作成方法を概観していく。いずれも、参照期間を基準として、それと比較した"極端さ"の度合いを示すものとして乖離度を用いる、という方針が貫かれている。
(1) 高温 : 上側10%に入る日の割合から算出
高温は、参照期間中の気温分布に照らした場合に、月のうち、上側10%の中に入る日が、何日を占めるかという割合をとる。例えば、ある年の5月27日については、1971年から2000年までの5月27日とその前後5日間(5月22~26日および5月28~31日と6月1日)の、合計330日分のデータのうち、33番目に高いデータが閾値(しきいち)となる。この閾値以上の日が何日あったか、をみることとなる。
気温は、1日のうちにも変動するため、日最高気温と日最低気温のそれぞれについて、その割合をとる。この割合から、参照期間の平均を差し引き、その結果を参照期間の標準偏差で割り算して、それぞれの乖離度が計算される。そして、その和半をとって、高温の指数とする。
(2) 低温 : 下側10%に入る日の割合から算出
低温は、高温と同様に、参照期間中の気温分布に照らした場合に、月のうち、下側10%の中に入る日が、何日を占めるかという割合をとる。日最高気温と日最低気温のそれぞれについて、その割合をとる。この割合から、参照期間の平均を差し引き、その結果を参照期間の標準偏差で割り算して、それぞれの乖離度が計算される。そして、その和半をとって、低温の指数とする。
(3) 降水 : 5日間の降水量の上側10%に入る日の割合から算出
降水は、月のうち、連続する5日間の降水量をみる。高温と同様に、参照期間中の降水量の上側10%の中に入る日が、その月にどれだけあるかという割合でみていく。この割合から、参照期間の平均を差し引き、その結果を参照期間の標準偏差で割り算して、降水の指数とする。
(4) 乾燥 : 乾燥日が連続する日数から算出
乾燥の指数は、連続乾燥日から算出する。すなわち、乾燥日が何日続くかという、最大連続日数についてデータをとる。その際、乾燥日をどのように判定するかが検討ポイントとなる。降水量が0ミリメートルでも、わずかながら降水が見られる場合と、まったく降水が見られない場合があるためだ。
これについては、気象データにおいて観測単位(降水量0.5ミリメートル)未満で、降水の現象の有無の観測をした結果として表示されている「現象なし情報」を用いて判定する
12。
参照期間中の同月の乾燥日の最大連続日数をもとに、その月の参照期間からの乖離度が計算される。これを、乾燥の指数とする。
12 現象なし情報は、降水の現象があった日は0、なかった日は1の値で表示されている。
(5) 風 : 上側10%に入る日の割合から算出
風は、参照期間中の日平均風速の分布に照らした場合に、月のうち、上側10%の中に入る日が、何日を占めるかという割合をとる。この割合から、参照期間の平均を差し引き、その結果を参照期間の標準偏差で割り算して、それぞれの乖離度が計算される。これを、風の指数とする。
(6) 湿度 : 上側10%に入る日の割合から算出
湿度は、参照期間中の日平均相対湿度の分布に照らした場合に、月のうち、上側10%の中に入る日が、何日を占めるかという割合をとる。この割合から、参照期間の平均を差し引き、その結果を参照期間の標準偏差で割り算して、それぞれの乖離度が計算される。これを、湿度の指数とする。
(7) 海面水位 : 参照期間中の同じ月のデータと比較して算出
海面水位は、月平均潮位から算出する。ただし、月によって海面水位の高さは変わる。そこで、参照期間中の同月の30個のデータをもとに、参照期間の平均と標準偏差を計算する。それらをもとに、その月の平均潮位の参照期間からの乖離度が計算される。これを、海面水位の指数とする。
6|合成指数は、高温、降水、湿度、海面水位の4つの指数の平均とする
最後に、以上で算出された7項目の指数をもとに、合成指数を算出する。
7項目の指数のうち、高温と低温はともに気温についての項目であり、相互に関連があるものと考えられる。また、降水と乾燥は反対の事象を表す項目と言えるため、負の相関があるものとみられる。(次章の最後に、(参考)として、気候指数間の相関係数の計算結果を表示しているので、ご参照いただきたい。)
さらに、風については、観測方法がよく変更されており、データが空欄となっていた日数も多いなど、データの一貫性に難があるという課題が残っている。
13
このため、前回と同様に今回も、低温、乾燥、風は合成指数の計算には用いない。合成指数は、高温、降水、湿度、海面水位の4項目の平均として算出する。
14
13 図表18に示すとおり、気象データのうち日平均風速については、1971~2024年の間に、すべての観測地点で少なくとも1回、多い地点では4回、観測方法が変更されている。また、空欄となっている日数は、他の気象データに比べて多い。
14 なお、観測地点ごとに合成指数を算出する場合には、海に面していない観測地点(気象データのみを観測している地点)では、高温、降水、湿度の3項目の平均として、合成指数を計算する。