ホテル市況は一段と明るさを増す。東京オフィス市場は回復基調強まる-不動産クォータリー・レビュー2024年第4四半期

2025年02月12日

(佐久間 誠) 不動産市場・不動産市況

1.経済動向と住宅市場

2/17に公表予定の2024年10-12月期の実質GDPは前期比0.3%(前期比年率1.0%)と、3四半期連続のプラス成長になったと推計される1。民間消費は物価高と減税効果の一巡により3四半期ぶりに減少したが、設備投資や外需がプラスに寄与し成長率を押し上げたとみられる。

経済産業省によると、10-12月期の鉱工業生産指数は前期比+1.3%と2四半期ぶりのプラスとなった(図表-1)。業種別では、好調が続いていた電子部品・デバイスが前期比▲8.5%と5四半期ぶりの減産となったが、工場の稼働停止の影響で落ち込んでいた自動車が同+3.6%と2四半期ぶりに上昇したほか、半導体製造装置などの大幅増産から生産用機械が同+12.1%の高い伸びとなった。

ニッセイ基礎研究所は、12月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2024年度が0.4%、2025年度が1.1%、2026年度が1.2%を予想する(図表-2)2。潜在成長率を若干上回る1%程度の成長が続く見通しだが、トランプ米大統領の経済政策による世界経済への影響や、実質所得の低迷による消費の減退リスクなどに留意したい。
住宅市場では、住宅価格の上昇が続くなか、販売状況などは停滞傾向にある。2024年12月の新設住宅着工戸数は前年同月比▲2.5%の62,957戸と8カ月連続で減少し、10-12月累計では前年同期比▲2.4%の約19.8万戸となった(図表-3)。
2024年12月の首都圏のマンション新規発売戸数は5,819戸(前年同月比▲2.4%)、10-12月累計では9,883戸(前年同期比▲3.0%)となった(図表-4)。12月の1戸当たりの平均価格は7,335 万円(前年同月比+5.3%)、m2単価は109.8万円(同+2.4%)、販売在庫は6,814戸(前月比+1,609戸)となった。
東日本不動産流通機構によると、2024年12月の首都圏の中古マンション成約件数は3,158件(前年同月比+ 7.4%)、10-12月累計では9,457件(前年同期比+3.6%)となり2四半期ぶりに増加した(図表-5)。
また、日本不動産研究所によると、2024年11月の住宅価格指数(首都圏中古マンション)は前月比+ 1.5%、過去1年間の上昇率は+7.5%となった(図表-6)。

2.地価動向

地価は住宅地、商業地ともに上昇を維持している。国土交通省の「地価LOOKレポート(2024年第3四半期)」によると、全国80地区のうち上昇が「80」となり、3四半期連続で全ての地区が上昇となった(図表-7)。同レポートでは、「住宅地では、利便性や住環境の優れた地区におけるマンション需要に引き続き堅調さが認められたこと。商業地では、再開発事業の進展や国内外からの観光客の増加もあり、店舗・ホテル需要が堅調であったこと。また、オフィス需要も底堅く推移したことなどから、上昇傾向が継続した」としている。
また、野村不動産ソリューションズによると、首都圏住宅地価格の変動率(1/1時点)は前期比+1.0%(前回+0.5%)と、18四半期連続でプラスとなった(図表-8)。

金融研究部   主任研究員

佐久間 誠(さくま まこと)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

経歴

【職歴】  2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行)  2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX)  2015年9月 ニッセイ基礎研究所  2019年1月 ラサール不動産投資顧問  2020年5月 ニッセイ基礎研究所  2022年7月より現職 【加入団体等】  ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター  ・日本証券アナリスト協会検定会員

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