気候変動:死亡率シナリオの作成-気候変動の経路に応じて日本全体の将来死亡率を予測してみると…

2024年12月24日

(篠原 拓也) 保険計理

4|死因別 : 異常無(老衰等)の影響が大きい
次に、死因、年齢、季節、地域ごとに、経路ごとの違いがどのようにあらわれるかを確認していく。まず最初に、死因別に、死亡率のSSP1-2.6との差を見ていく。

(1) 新生物
新生物の死亡率は、男性はSSP1-1.9とSSP2-4.5は、SSP1-2.6の近辺で推移している。一方、SSP5-8.5は2060年代以降、SSP1-2.6を下回り、徐々にその差が拡大している。女性はいずれの経路もSSP1-2.6近辺で推移している。46


 
46 SSP1-2.6とSSP5-8.5の主な差異は、高温指数の項による。男性90-94歳は女性90-94歳よりも同項の回帰係数の絶対値が桁違いに大きい。このことが、男女間の違いにつながっているものとみられる。

(2) 循環器系疾患
循環器系疾患の死亡率は、男性はいずれの経路もSSP1-2.6近辺で推移している。女性は、SSP1-1.9とSSP2-4.5は、SSP1-2.6の近辺で推移している。一方、SSP5-8.5は2070年代以降、SSP1-2.6をやや上回り、徐々にその差が拡大している。



(3) 呼吸器系疾患
呼吸器系疾患の死亡率は、SSP1-1.9とSSP2-4.5は、SSP1-2.6の近辺で推移している。一方、SSP5-8.5は、男性は2060年代以降、女性は2070年代以降、SSP1-2.6をやや上回り、徐々にその差が拡大している。

(4) 異常無(老衰等)
異常無(老衰等)の死亡率は、SSP1-1.9とSSP2-4.5は、SSP1-2.6の近辺で推移している。一方、SSP5-8.5は2060年代以降、SSP1-2.6をやや上回り、その差が拡大している。特に女性は、その差が顕著に拡大している。この異常無(老衰等)の差が、死因合計におけるSSP1-2.6とSSP5-8.5の差の主な要因となっている。



(5) 外因(熱中症含)
外因(熱中症含)の死亡率は、経路による違いはほとんど見られない。男性では、SSP5-8.5は2060年代以降、SSP1-2.6を若干上回っている。



(6) その他の死因
その他の死因の死亡率は、経路による違いはあまり見られない。

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