東京オフィス市場は賃料の底打ちが明確に。物流市場は空室率高止まり-不動産クォータリー・レビュー2024年第2四半期

2024年08月09日

(渡邊 布味子) 不動産市場・不動産市況

1.経済動向と住宅市場

8/15に公表予定の2024年4-6月期の実質GDPは前期比+0.8%(前期比年率+3.0%)と推計される1。2四半期ぶりのプラス成長になるものの、1-3月期(前期比▲0.9%)の大幅な落ち込みの反動の側面が強く、景気は一進一退の状態にある。

経済産業省によると、4-6月期の鉱工業生産指数は前期比+2.9%と2四半期ぶりの増産となった。(図表-1)。業種別では、不正問題の影響で落ち込んだ自動車が前期比+11.7%の大幅増産となったほか、電子部品・デバイスが同+4.3%と高い伸びとなった。

ニッセイ基礎研究所は、6月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2024年度+0.7%、2025年度+1.1%を予想する(図表-2)2。6月から実施される所得・住民税減税や実質賃金上昇率のプラス転化などが民間消費を一定程度押し上げることから、2024年度後半以降は年率1%前後の成長が続く見通しである。
住宅市場では、住宅価格の上昇が続いている。2024年6月の新設住宅着工戸数は2カ月連続減少の66,285戸(前年同月比▲6.7%)、4-6月累計では約20.9万戸(前年同期比+0.5%)となり5四半期ぶりに増加した(図表-3)。
2024年6月の首都圏のマンション新規発売戸数は1,662戸(前月同月比▲12.8%)、4-6月累計では4,184戸(前年同期比▲24.4%)となった(図表-4)。6月の1戸当たりの平均価格は8,199万円(前年同月比+25.2%)、m2単価は121.8万円(同+17.0%)、販売在庫は5,418戸(前月比▲41戸)となった。
東日本不動産流通機構によると、2024年6月の首都圏の中古マンション成約件数は13カ月連続増加の3,259件(前年同月比+4.8%)、4-6月累計は9,355件(前年同期比+6.3%)となり4四半期連続で増加した(図表-5)。中古マンション市場では成約価格が上昇し、成約件数も増加が続いている。
日本不動産研究所によると、2024年5月の住宅価格指数(首都圏中古マンション)は前月比+0.9%、過去1年間の上昇率は+5.8%となった(図表-6)。

2.地価動向

地価は住宅地、商業地ともに上昇している。国土交通省の「地価LOOKレポート(2024年第1四半期)」によると、全国80地区のうち上昇が「80」(前回79)となり、調査開始以降、初めて全ての地区が上昇となった(図表-7)。同レポートでは、「住宅地では利便性や住環境に優れた地区におけるマンション需要が堅調であること。商業地では店舗需要の回復傾向が継続しオフィス需要も底堅く推移し上昇傾向が継続した」としている。
また、野村不動産ソリューションズによると、首都圏住宅地価格の変動率(7/1時点)は前期比+0.9%(前回+0.6%)となり16四半期連続でプラスとなった。東京23区では上昇率が拡大し、都心5区の価格高騰が再び周辺区に広がりつつある(図表-8)。

金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子(わたなべ ふみこ)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴

【職歴】
 2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
 2006年 総合不動産会社に入社
 2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員

・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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