(1) 年代別
今回の計算の大きな変更点として、回帰式の学習データを2009-10, 12-19年の10年間として、大震災やコロナ禍の影響を除外した、最近の気候変動と死亡率の関係をもとに回帰計算を行っていることが挙げられる。これにより、最近の死亡率の再現性を高めて、将来の推測に役立てる目的がある。
実績と回帰の死亡率を比較すると、死因によっては、2000年代まで大きく乖離している場合もある。しかし、2010年代以降の近年では、両者は近接して推移している。近年については、回帰計算の再現性が確保できているものとみられる。以下では、2010年代以降の比較について見ていく。
(2) 男女別
男女別に見たときに、実績死亡率の再現に大きな差異は見い出せない。前回のレポートでは、男性や、関東甲信、東海、近畿の女性では、新生物の実績死亡率の低下が再現できていなかったが、今回はこの点の改善がみられる。また、男性や、北海道、関東甲信の女性では呼吸器系疾患の実績死亡率の低下が再現できていなかったが、今回はこの点も改良されている。
(3) 年齢群団別
若齢(0~4歳)、中齢(40~44歳)、高齢(80~84歳)のいずれも、概ね実績死亡率が再現できている。
なお、0~4歳、40~44歳の異常無(老衰等)の実績に示されているように、同死因は、1979~94年において中齢以下の実績データがゼロで、回帰計算結果との乖離している。今回、回帰式の入力データを全期間ではなく、2009-10, 12-19年の10年分に限定したことにより、その影響を受けずに回帰計算が行われる形となっている。
(4) 死因別
死因別には、どの死因も再現が比較的よくできている。
前回のレポートでは、新生物で、男性や関東甲信、東海の女性に見られる実績死亡率の低下が再現できていなかった。今回はこの低下が表現できている。循環器系疾患については、男女、各地域とも、よく再現できている。呼吸器系疾患で、前回は、男性や、北海道、関東甲信の女性に見られる呼吸器系疾患の実績死亡率の低下が再現できていなかった。今回は、この低下も表現できている。
一方、前回は異常無(老衰等)については、上昇傾向が表現できていなかったが、今回は、これも再現できている。なお、外因(熱中症含)の実績については、基本的には再現できているが、2011年の東日本大震災の跳ね上がりについては表現できていない。
8さらに、その他の死因については、基本的には再現できているが、2020年以降のコロナ禍による死亡率の変動については表現できていない。
8 大震災発生時の実績死亡率は、各地域区分で跳ね上がりが生じている。これは、月別の死亡数の計算の際に、人口動態統計下巻第3表から得られる日本全国の数値をもとに、当該月の割合を掛け算していることに起因している。大震災のあった年には、死亡数が多かった震災から数ヵ月間に死亡が偏るような形で、按分処理をしているためである。年間を通じてみれば、死亡数や死亡率は実績とほぼ一致している。